マニアックコピー考察、この曲はまたまたマニアックな曲かも知れません。第二期の2枚目通称オレンジアルバムの2曲目のボブディランの曲ですが、素敵なR&Bのバラードに仕上がってます。第一期で言えば、Ol’ Man River的なポジションの曲です。
この曲は3つの聞きどころというか、ジェフベックらしいアイデアが盛り込まれています。ひとつは、間奏のスライドギターでスチールギターのスラント奏法を行なっている事とそこでベック独特のフィンガーリングによる高速トリルが2つ目、そして3つ目はトレモロアームを使った面白いエンディングです。
また、ジェフ・ベックというと独創的なソロばかりが注目されますが、バッキングもとても独創的で良いです。特にこの第二期ジェフ・ベック・グループは歌バンドであり、モータウンに憧れたジェフ・ベックのバッキングも聞きどころです。同じアルバムのHighwaysとともにこの曲もジェフベックのバッキングやオブリガードが聞きどころでもあります。オーソドックスな手法を踏まえながらジェフベックならではの唐突で印象的なフィルや効果音など、他のギタリストでは聞けない演奏が盛り沢山です。
この曲は、ドイツのTV番組「Beat Club」の映像でも演奏していたので、演奏は違いますがおよその弾き方が分かります。派手な曲ではないですが、コージーのグルーブ感あふれるドラミングと共に素晴らしい演奏のひとつだと思います。
ギターなど
この曲は1972年の1月にレコーディングされているので、時期的な観点からは例のナチュラルカラーのフランケンストラトの可能性が高いと思います。そして主にミドルのピックアップを使っているのではないかなと思います。ストラト使用者でミドルのピックアップを使う人は少ないと思いますが、消去法で考えていくとミドルではないかなと思います。
アンプは第二期の途中からSUNを使っていると言う話なので後期に当たるこのアルバムはSUNなのかもしれませんが、この演奏がそうかどうかは分かりません。ただSUNのアンプは歪みにくいと言う話を聞いたことがあるので、なんとなく音色からSUNなのかもしれません。ちなみに前述のBeat Clubの時はマーシャルでした。この頃は特に変わったエフェクターを使っているわけではなく普通に歪系で調節している程度だと思います。
演奏:イントロからA A Bメロ
ギター始まりで短いイントロからドミナントのG7でブレイクして始まるといういかにもR&B的な始まり方です。
この曲でのG7はF7/Gの分数コードになっていますが、ベースがGを弾いているのでジェフベックは1〜4弦でFのフォームを弾いているように見えます。
Aメロの部分は、R&Bによくあるパターン。3拍目で高音弦側を「キャッ」と切る感じ。映像ではベックはダウンではなくアップで弾いていました。コード的にはC|Dm7の繰り返しですが、ベースはずっとCを弾いています。ベックも6弦のCをわずかに弾きながら1弦側の7フレットと9フレットを「キャッ」と弾く感じです。Dm7をときどきシンコペーションで弾くのも心地よいです。
F|Em7|Dm7と降りていくところは、ローポジションで、コード全体を弾くのではなく、6弦F〜E〜1〜3弦Dm7などのように特定の弦を弾いているような感じです。
2回目のAメロの後Bメロ(サビ)に行きますが、FmからCに戻ってきたところは開放弦を使って半音の澱んだような響きを入れています。この辺りはロカビリーやカントリーの奏法ですね。ギターは関係ありませんがこのサビのバックのコーラスがソウルフルで良い感じです。モータウンに憧れていたベックがこういうサウンドを入れたかったのでしょうね。
サビの最後のブレイクで、フレットより高い音で「ピー」という音が効果的に入りますが、これはこのタイミングでスライドバーをはめてバーでやっているのでしょう(映像でもそうしていました)。ジェフ・ベックの作法からすると、こういう場面では完全にバーを持ち替えて上から弦にアプローチしそうですが、この演奏では持ち替える間がないので指にはめているのでしょう。しかし、こういうブレイクにこの1音だけ、しかもフレット外でのスライドバーという特殊な演奏で持たせてしまうセンスは天才的です。
ただ、ベックはバーを中指にはめるのでここから間奏までのセクションのコードの部分は弾きにくかったでしょう。映像でも中指以外の指で押さえられる範囲で適当に弾いているような感じですが、なぜか音がしっかり出ていました。
間奏
この曲のハイライトのひとつです。サビと同じコード進行です。レギュラーチューニングなのにスライドでユニークなメロディを弾きます。部分転調したりしてコード進行が少し変わっているので、その効果もあると思います。
間奏は大きく3つのセクションから成り立っています。
最初は5フレットあたりでCコードのポジションを使って弾きます。その後、1オクターブ上の同じポジションで弾きます。次のDm7のセクションもスライドですが音が1音1音キレイに切れています。1音1音ミュートしながら弾かなければいけません。そして|G|F|Gにいくところ、6度和音ですが、最初のGの部分は1弦15フレットと3弦16フレットなので、フレットが違います。ここはバーを斜めにして該当のポジションに当てます。なかなか正しいポジションに当てるのが難しいですが、これは特殊の奏法ではなく、スチールギターではバーを斜めにしていく「スラント奏法」というのが基本的な奏法としてあります。ジェフベックはヤードバーズ時代スチールギターでブルースを弾いた(Sky Is Crying)りしていたので普通の感覚でやっていたのでしょう。スラント奏法も大変ですが、それに加えてベック特異のフィンガリングによる高速トリルです。具体的には、1弦と3弦を右手のピックと中指、または薬指で交互に高速に弾きます。この辺もカントリー奏法ですね。そしてさらにそのままバーをフレット外にまで引っぱっていき、フロントピックアップ辺りの1弦で音を出しています。たった2小節程度のフレーズの中に3つのアイデアが盛り込まれています。
そして先ほどの緊張から放たれたようにローポジションでリラックスしたフレーズが展開されて、最後のAメロに行くべくG7+ブレイクの緊張がやってきます。
間奏前のサビ〜間奏〜最後のAメロと、なんとドラマチックに展開するのかという感じです。この単純な曲がジェフベックにかかるとコロコロと表情を変え、緊張と緩和を繰り返します。なかなかこういう風には演奏できません。

最後のAメロ
最後のAメロでもベック節は全開です。Aメロ始まってすぐ「〜Window」の歌詞の後でオクターブを使った変な音を出しています。
これは4弦のCを2回弾いて1弦のCをつまむようにして1回弾くという3連フレーズです。これもカントリー奏法にあります。その次、不協和音を使って心地よい緊張から緩和を生み出しています。これもカントリーでよくあるパターンですがカントリー奏法には聞こえない。ジェフベック奏法になってしまっているのが凄いです。
エンディング手前のセクションでは、R&Bによくある歌を追いかけてオブリガードを弾くパターン。こういうオーソドックスな手法を混ぜながらジェフベックの特徴的(奇天烈)なギターを絡めていくのがとてもスリリングであり、かつ緩和もあるのがおいしいところです。
アウトロ〜エンディング
アウトロのギターはスライドではなく、普通に弾いていますが、独特の運指をしています。Fm|Cの繰り返しのところは、3弦をポジション移動して弾いています。映像でもそうやっていました。普通なら4弦も使って、ポジション移動することなく合理的に弾くところですが3弦のプレーン弦の音が欲しかったのかも知れません。
最後にまた6度和音高速トリルが出てきます。
最後の最後は、トレモロアームを使って3弦をDまで下げておき、アームを解放してGに戻すという荒技です。よくこんなエンディングを考えつくなあと感心します。ここでも一気に緊張が高まり解放されます。
1989年の「Guitar Shop」収録の「Where Were You」で「トレモロアームで音程を弾くなんて!」と話題になりましたが、第二期ジェフベックグループですでに少しやっていたのです。
この曲はあまり話題になりませんが、第二期ジェフベックグループの中でもトップクラスに素晴らしい演奏だと思います。ライブを聴くと緊張と緩和がさらに強調されてもっとドラマチックです。ライブでは、とくにコージーのドラムがよりグルービーに聞こえます。ぜひBoot Legを探してライブを聴いてみてください。
