?> Loud Hailer | ジェフベックの茶飲み話サイト。

Loud Hailer

1.The Revolution Will Be Televise¥
2.Live in the Dark
3.Pull It
4.Thugs Club
5.Scared for the Children
6.Right Now
7.Shame
8.Edna
9.Ballad of the Jersey Wives, The
10.O.I.L.
11.Shrine

2016年7月リリース

<メンバー>
Jeff Beck:electric guitar
Carmen Vandenberg:electric guitar
Rosie Bones:vocals
Davide Sollazzi:drums
Giovanni Pallotti:bass

良い子達を見つけたので一緒にロックしてみた。

Emotion & Commotionから6年ぶりとなるスタジオアルバム。Emotion & Commotionも集大成的なアルバムだったし、それからはライブアルバムやトリビュートのような内容のコンサートをやったり、要するにジェフベック自身は、もうあまりやりたいことがなくなったのではないかと思います。
しかし、ビジネス的に新しいアルバムを作らなければいけない。しかし、ジェフベック自身は自分がクリエイションの源泉となって何かを作り出せるタイプの人ではないので、誰かとのコラボレーションが必要(過去も常にそう)であり、そのネタがなかなか見つからないという状態ではなかったかと思ったりします。

そういうときに面白い若い女の子達を見つけたので、「何か作らない?」と誘ってつくったといいうような感じではないかと思います。なのでこのアルバムにジェフベックの明確な方向性が示されているとかそういうのはない。この時のジェフベックが感じたことをプレイしている、そんな感じのアルバムです。

とはいえ、1999年からのデジタル路線を離れ、オーガニックなサウンドに戻り、さらにスタイルというかジャンルを広げEmotion & Commotionで集大成を作り、トリビュートなどで暇つぶしをしているときに出会った子たちが、ルーツロック的な事をやっていて、「若いのに面白いねえ」と思ったかどうかは知りませんが、興味を持ったのとそういうサウンドの素朴なパワーみたいなものをもう一回なぞったらどうなるだろうって思ったんじゃないかな。

ロージー・ボーンズとギタリストのカーメン・ヴァンデンバーグは、ロンドンでBONESとして活動していたそうで、そういう彼女らとのコラボ的アルバムでもあります。
こういうルーツロック的なアルバムの割には、ジェフベックによると、スタジオでせーの!って感じではなく、プロツールズでやり取りして作ったと言っていました。
デジタルの便利さをうまく使ったとも言えるし、ジェフベックも歳だからスタジオでせーの!がしんどかったのかも知れません(笑)

しかしまあ、BONESの2人は、ライブで見てもなかなかいい感じで、ロージーは、入り所を間違えて照れ笑いしたりしていましたが、ジェフベック御大と堂々とプレイしていました。ギターのカーメン・ヴァンデンバーグも上手かったですね。こういう女の子は山ほどいるのかも知れません。いやいやそういう感想自体が昭和的先入観というか「ロックは男の音楽」という古い固定観念なのでしょう。
とにかく、キレも良いし、ブルースのソロも渋い感じで弾いていました。そういう彼女らとジェフベックの中のロックな部分がうまく噛み合っていると言える内容と言えるかも知れません。

ただ、前述したようにジェフベックの方向性とかそういうものではないので刹那的というか、この瞬間のジェフベックの一面という感じのアルバムです。これがジェフベックのサウンドだというのとは少し違います。ギターはジェフベックそのものですけどね。まあ、ジェフベックはいつだってそういう感じではあります。

内容

ストレートなロック、ファンク、エレクトロニカ的なものやバラード、オールディズ的なものなどいろいろなタイプの曲がありますが、全体を通して60年代のスインギングロンドン、あるいは80年代のパンクの時のようなロンドン的匂いがするのは、意図的にそういうサウンドに仕上げてあるのでしょう。Loud Hailerというタイトルからして「言いたいことがあるぞ〜」みたいなパワーを込めているのでしょうね。それがロックというものだと言いたいのかも知れません。

いろいろなタイプの曲があるだけに、ジェフベックの多彩なギターが聴けるというのもあります。相変わらず、どうやって弾いているのか分からないような変な音やフレーズがいっぱいあります。普通に聞こえるけどやってみるとそんな音出ないぞ〜みたいなのがあります。
その辺がジェフベックの魅力なので、ある面、彼女らのスタイルを借りて、ジェフベックがギターで遊んでいると言えなくもない。

個人的には、「O.I.L.」がカッコイイと思います。
ありそうでなかったビートで、こういうカッコ良いカッティングを考えるのがさすが。途中のリフも簡単そうで難しい。こんなパーカッシブにリズミカルにはなかなか弾けません。ライブでは、さらにゴーストノートというか空ピッキングノイズ(指でこすって擦り音だけをパーカッシブに出す)を組み合わせてめちゃくちゃカッコよく弾いていました。こういうユニークなプレイをするのはジェフベックしかいません。
また、この曲ではオイル缶ギターでスライドを弾いているのも話題でした。ここで実物を紹介していますが、こういうギターを作っている会社があるんですね。ホットロッド好きなジェフベックらしい。ホットロッド仲間のビリーギボンズ(ZZ Top)にもらったとかいう話ですけどね。
(フィンガリングノイズの象徴的なプレイはBBA Live In JapanのJeff’s Boogie後半、じゃじゃ馬億万長者に入る前に聴けます)※関連記事

なお刹那的なこのアルバムの曲は、多分、その後のコンサートでは1曲もやってないんじゃないかなと思います。そういう意味では、このアルバムでのツアーは貴重だったかも知れません。ブートレグがたくさん出ているし、Youtubeにも上がっていると思います。便利な時代ですね〜。