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1986年 TVでも放映されたフラッシュツアー

何を血迷ったのか、ヒットプロデューサーによるダンスミュージックとの融合などの失敗を犯してしまった「フラッシュ」発売後にその楽曲をひっさげて来日してしまいました。しかも、リハーサル不足のままで。

しかし、このツアー、侮れない要素がふんだんにあります。まずTVとFMで放送されたこと、日本だけで行われたこと、そして、メンバーが抜群に良かったことです。ドラムスはサイモンフィリップス、ベースはダグウィンビッシュ、そして、あのヤンハマーが一緒に来たんですから(ボーカルのジミーホールも忘れないでください)。

ヤンハマーですよ、ヤンハマー、泣く子も黙るヤンハマー。With JanHemmer Groupのヤンハマーです。うれしいじゃないですか。演奏曲は、フラッシュからの曲を中心にゼアアンドバック、ブローバイブロー、ヤンハマーの曲、未体験曲などで構成。リハーサル不足で、ベックは間違えてばかりいたのですが、サイモンフィリップスがうまくリードし演奏は白熱していました。うまいですね、サイモンフィリップス。やっぱり凄いミュージシャンばかりが寄ると楽曲なんて関係ないのかも。ボーカルのジミーホールがちょっとかわいそうなくらいでした、頑張っていたのに。

ヤンハマーはやっぱり凄い。頭の具合も凄かったですが、Star Cycleなんて最初にヤンハマーのキイボードがなりだすとゾクゾクしました。やっぱり、作者ヤンハマーと演るStar Cycleは感無量でした。その他、You Never Know、Led Bootsなど、スタジオ盤ではヤンハマーが入っている曲には、えも言えない満足感がありました。
ただやっぱりセッション的というか、本当に急に思い立ってソレ!ってやってきたという感じで、随所にリハーサル不足が出ていました。ジェフベックは、しょっちゅうサイモンフリップスの顔を見ながら、タイミングや進行を気にしていましたし、ヤンハマーもベックに注意深くついていくという感じ。ボーカルのジミーホールも歌いながら頻繁にバックを気にしていました。だから曲によって出来不出来があるばらついた公演でした。

TVでは、軽井沢でのジョイントライブが放映されました。これははっきり言って快挙でした。ジェフベックをTVでやっていったいどれくらいの視聴率がとれるんでしょうか?スポンサーであったサントリーやエンディングロールにクレジットされていた電通に好きな方がいらっしゃったんでしょうか?ま、とにかく私として嬉々として拝見させていただいたわけで、ベックは間違いまくっていましたが、クリアなライブ映像として貴重なものになりました。サンタナやスティーブルカサーも見れたし。サイモンフィリップスはこの時のことが縁でスティーブルカサーとのつきあいが始まったんでしょうか。しかし、ベックの演奏に飛び入り参加したスティーブルカサーは、何だかはっきりしない音でギューギュー言わせているだけで、太った体も相まって暑苦しいだけでした(ルカサーファンの方ごめんなさい)。その分、ベックのギターをより引き立ててくれましたが。ただ、こうやって一緒に弾くとベックの特異性が如実に分かります。特にルカサーは正統派の凄腕ギタリストですから両極端。Freeway Jamでルカサーが早引きやなんかで音の洪水をまき散らし、弾きまくったあとで出てきたベックのソロのすっとんきょうなこと。のっけからしゃべりかけるようなフレーズで、間をつくりながらだんだんと盛り上がっていくのは、聴いていて(見ていて)ゾクゾクします。このFreeway Jamのソロは、格付けで言えばAAAですね。
逆にひどかったのはCause We’ve Ended As Loversで、曲の進行を間違えコード進行と違う方向へ行ってあわててつじつまを合わせる場面が3回くらいありました。だから、ソロも何を弾いてるんだ良く分からない雰囲気だけ状態でした。面白いことにこれは、私が2回見た大阪公演でも同様で、何かにたたられていたんでしょうか。もう何度もやっている曲なのにね。さらに面白いことには、TVを見ていた堅気(ジェフベックファンでも何でもない音楽好き)の友人は、全く分からなかったそうです。そんなものなんですね。

今回のツアーでのトピックは、ベックが今回から全くフラットピックを使わなくなったことです。TVでも良く分かりましたが、コード弾きから何から完全に指だけで弾いていました。で、当然フレージングも変化し、あるより意味でよりボーカルに近い感じになりました。よりグニャグニャした柔軟なフレーズを弾くようになったというか、ハーモニックスやトレモロアームなどもギミックとしてだけでなく、フレージングの一部として完全に表現の手足となっていました。