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ジェフベックの魅力について。

活動歴の長いジェフベックの魅力を語るのは難しいです。時期によって少し良さが違ってくるからです。それと誰でもそうでしょうが、若い上り調子の頃と晩年の落ち着いた時期では演奏も異なってきます。ジェフベックもそうです。

予測できないスリル。

若い頃のジェフベックは、「予測できないプレイ」が一番の魅力でした。フレーズそのものやタッチ、奏法なども独特のモノがあって、それも大きな魅力ではあったのですが、やはり想像が付かないところから始まるソロやバッキングなど、とにかく同じ曲でも全く違う演奏で、次に何が出てくるのか分からないスリル。他のページでも書いていますが、ベックのギターが鳴っていない時のスリル。次にどこから何が始まるのか分からないワクワク感がハンパではなく、他のギタリストでは絶対に味わえない、なんとも言えない空間でした。

そのため、ギリギリのラインに行くので、ミストーンが多いのもジェフベックの特徴でした。時には素人のようなミスをする(笑)また、良いときと悪いときの差が激しいというか、それくらい毎回全力でギリギリを攻めていたのでしょう。いつも出たところ勝負で弾いていたのでしょうね。ソロなども収拾がつかなくなって強引に終わるみたいなのも多いです。しかし、そのちょっと変な独特の演奏もファンにはたまらないわけです。

時代で言えば第1期ジェフベックグループから、1989年のギターショップの頃までは、そういうプレイをしていました。
特に第二期ジェフベックグループからヤンハマーとのツアーの頃、1971〜1976年くらいが最も実験的でアグレッシブで面白いのではないでしょうか。ただ、1978年のスタンリークラークとのツアーでも、充分に攻めていました。1980年のゼアアンドバックツアーも攻めていましたが、割とバンドとしてのまとまりがあり、その分、はみ出し度は少なかったように思います。

とはいえ、TV中継がされ映像でも残っている1985年の軽井沢(Flashツアーの一環)のコンサートでもかなり攻めた演奏をしています。Freeway Jamなどはこれぞジェフベックという演奏ですし、Star Cycleでは、相変わらずのミスもしています(笑)しかし実に楽しそうに演奏しています。
そういう時代にジェフベックを知っているファンは、やはりジェフベックというとそういう、スリリングでやんちゃな演奏のイメージがあるのではないでしょうか。

イギリス人らしいウィット。

ジェフベックのプライで忘れてはならないのが、ウィットです。平たく言えばジョークやウイットを演奏に盛り込んだ面白い演奏をすることです。コミカルなフレージングや何かの曲の一節などをときどき盛り込んできます。その典型がジェフズブギーではないでしょうか。特にBBAのライブで聴かれる演奏では、メリーさんの羊やヤードバーズの曲、ブルースの名曲、TVドラマのテーマなどを校でなテクニックで盛り込んで来ます。特にカントリー調のじゃじゃ馬億万長者は、突然のコミカルな演奏で笑ってしまいます。ハードなロックをやりながらそういうコミカルな要素を盛り込んでくるのもジェフベックの魅力ではないでしょうか。

英国人気質なのでしょうね。インタビューや挨拶などでもジョークを盛り込みながらしゃれたコメントを言っています。
来日時にインタビューで出演した日本テレビの朝のワイドショー「スッキリ」に出演した際に、スタッフの「何か弾いてもらえませんか?」というお願いに対して「じゃじゃ馬億万長者」を弾いてくれました(笑)

それに、トーキングモジュレーターによる演奏自体、どこかコミカルなところがあり、それを意識して演奏しているようにも思います。スライドのバー自体で弦をこすって演奏してみたり、トレモロアームでメロディを演奏したり、弦がベロンベロンになるまでアームダウンした音を盛り込んだり、いろいろな変な音を演奏に盛り込んでくるのもウィットだと思います。そういうことを頻繁にするギタリストはベック以外にいませんね。

沈黙の10年間。

1989年のGuitar Shopから1999年のWho Else!まで10年間オフィシャルなアルバムが出ていません。しかし、その間も人のアルバムで弾いたり、ジーンビンセントのトリビュートアルバムを出したりはしており、ジミヘンのトリビュートアルバムでは、特筆すべき程のスリリングな演奏をしています。

また1995年サンタナと行った北米ツアーは、動画が海賊盤で出ていますが、もう神がかっていると言っても良いくらいのスリリングな演奏です。メンバーもトニーハイマス、テリーボジオに加えてピノ・パパラディーノがベースで参加しており素晴らしいです。
そういうスリリングな演奏が聴けるのは、ジェフベックが20代半ばから40代前半くらいの頃でしょうか。

2000年以降の魅力。

さて、10年の沈黙を挟んで1999年にWho Else!が発表されましたが、この頃から、プレイの仕方が変わりました。いわゆるインタープレイという誰かと丁々発止にやりあうようなスタイルがなくなり、ジェフベックとバックのメンバーという感じの演奏になりました。つまり張り合い相手がいなくなったのです。プレイ的にもまとまりのある、良く言えば安定した演奏になり、ミストーンもない代わりにスリルもなくなりました。ある面、聴きやすい演奏になりました。

しかし、ジェフベック自身は、かつてのようなスリルよりも、ギターの可能性というか、これで何ができるだろうという事へ興味が移っていったようにも思います。インタープレイをする相手がいなくなった、そういうプレイに疲れた飽きたみたいなことも理由にはあるでしょうが、エレキギターのもっと深い部分を探求しようみたいなことではないかと思います。
そのために、いろいろなデジタルフォーマットを取り入れたり、新分野のプロデューサーを起用したりして見たのではないでしょうか。しかし、結果的にはあまり満足のいくものは得られなかったようで、Jeff以降は、元のスタイルに戻って過去の曲なども演奏し始めます。

垣間見せるスリル。

象徴的なのが、Jeff発売直後にB.B.Kingのレストランでのライブです。CDとしても出ていますが、トニーハイマス、テリーボジオのトリオで、ここでは久しぶりにハチャメチャな演奏をしています。ここではスリリングな演奏が聴けます(その代わり少し粗い演奏です)。デジタル路線のカチッとしたのとは対照的に、自由奔放にやっていて、攻め故のミストーンなどもありますが、これぞジェフベック!という勢いがあります。このドライブ感とスリルこそジェフベックじゃないかと、昔からのファンは思ったのではないでしょうか。

晩年の安定期。艶やかでクリアなトーン。

その後、2005年頃からは、ビニーカリウタなど凄腕のメンバーが揃いますが昔のような激しさはなく、過去の曲を演奏してもきれいに弾いてみせるという感じです。

この頃のギターのトーンは、昔に比べると艶やかで歪んでいるのにクリアに感じさせる不思議なトーンになっています。奏法やジェフベック自身のマインドとともに、ギター自体の完成度も高くなっていると思います。フェンダーのクラフトマンによりジェフベックの演奏に合わせてチューンナップされているのでより繊細で高度な演奏もしやすくなっていたはずです。かつては、フランケンストラトに代表されるようなテキトーなギターを使っていました。

トーンを追求しだしたのは逆に、完成度の高いギターを手にしたからというのもあるかも知れません。これならもっと何かできそうだとギターによってインスパイアされた部分もあるのではないでしょうか。

つまり、200年頃からのジェフベックは、独特のトーンと音楽性の広がりと言ったことが魅力になっていったのではないかなと思います。

しかし、完全指弾きになったことで、昔やっていたような独特のカッティングやバッキングは聴かれなくなりましたし、メンバーとの丁々発止もなくなりました。ただ、ボーカルが入ると、合いの手ギターは相変わらず上手かったです。昔を彷彿とさせました。特に幾度かロッドスチュアートがゲストで来たときには、第一期ジェフベックグループ時代の曲を演奏し、かつてのようなボーカルとのコンビネーションを聴くことができました。生きている間に、ロッドやロンウッドと第一期のリユニオンをやってほしかったなぁと思います。ハリウッドボウルで一度、ロッドと5曲ほど演奏しましたが、ロッドのバンドにジェフベックがゲストで入る形だったので、所詮セッションという感じではありました。

最後の方のジョニーデップとのコラボは、個人的には良く分かりません。正直、あまり興味が湧くプロジェクトではありませんでした。

スリリングなジェフベックが聴けるアルバム。

ということで、スリリングなジェフベックを聞きたい方は、オフィシャルアルバムなら、Beck Bogart AppiceのLiveとJeff Beck Live With Jan Hammer Group。

海賊盤なら第一期ジェフベックグループ(1969年)からヤンハマーグループとのツアーの音源(1976年)。特にBlow By Blowツアーや第二期ジェフベックグループの頃は、やりたい放題やっているので面白いです。ただし海賊盤は、音の悪いのもあるのでご注意。

おすすめは、第二期ジェフベックグループのParis Theater BBCラジオのライブ、1972年7月のラウンドハウスのラストライブも良いです。
Blow By Blowツアーは、World Rock Festival in Nagoya、ヤンハマー時代ならWIRD UPでしょうか。今は他にもデジタル処理されて演奏や音の良いのが発掘されて出ていると思います。