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CBA

期待通りすごい BA、しかし、それはBBAのBAではなく、
チャーバンドとしてのBAって感じでよかったですね。
*前説:1999年12月チャー+ティムボガート、カーマインアピス、つまりBBAのBAとチャー、つまりつまり、BBAのジェフベックの代わりにチャーが入ったカタチのバンドでツアーがありました。その模様は、ケーブルテレビやCSでも放送されました。ライブCDが発売されています。

私は、CBAに対してなんとも表現しがたい複雑な期待と不安があったのです。ひとつは、当然BBAのリバイバル的な意味合いでのCBAへの期待と不安。チャーもベックファンだし、みんなが求めていることもわかっているからきっとBBAの曲をするだろうし、それなりにBBA的な演奏が聴けるだろう。しかし、BBAというのはやはりジェフベックあってのBBAであるから、その要のギターが違うわけですから、なんか中途半端なことになりはしないかと。チャーもきっと楽しい反面、複雑な心境もあったんじゃないか。見る側にとっては、ベックの代わり的な印象と期待は絶対にあるわけで、チャー自身もきっとその部分の遊びとしての楽しさうれしさもあったと思いますが、そこでプロのギタリスト・チャーとしてどういったスタンスで弾けばいいのかは、結構悩むところだと思います(ま、チャーの場合はこういうことは一瞬思ってもすぐに決めてしまうって感じでしょうが)。これ、中途半端なスタンスで弾くと、寒くて安い感じになってしまうと思います。

もうひとつの期待と不安は、ティムボガートなどは最近何をやっているのか知らなかったので、往年のエネルギッシュな演奏は聴けるのだろうか、なんか歳を感じてしまうのじゃないか、BAともになんか「昔の栄光ひきずってます」的に安くなってしまうんじゃないかということでした。

結果的には、チャーはチャーのスタンスを崩さず(当たり前か)、チャーバンドとしてのCBAが聴けてとても良かったと私は思いました。BAも昔に劣らずエネルギッシュな演奏で、大満足でした。サウンドは、チャーバンドですが、BAのコーラスが入ると、とたんにバニラファッジやBBAになってしまうところがすごいですね。楽器演奏だけでなく、コーラスでも一連のバンドの個性を担っていたんですね。BBAにしてもジェフベックのギターはもちろんですが、彼らのボーカルの魅力がBBAにただの凄腕バンドではない音楽性の豊かさをつくっています。BBAの曲は、やっぱりインタビューでも語っていたとおりチャーバンドとしてのアレンジになっていました。

私は、チャーは、日本で一番カッコイイロックギタリストとしてファンなのですが、それでもやっぱりどうしてもBBAの曲ではジェフベックの代理を求めてしまうんですね。そりゃしかたないですわ。多くの人がそうだろうし、本人たちもそれは承知の上だったでしょうね。どうしても、ジェフベックとチャーとを比較してしまうわけです。個性が違うので、比べるなと思うんですが下世話な比較をしてしまうわけです。

チャーの魅力というのは、まずサウンドが華麗で透明なこと、ギターの音色にしてもブリリアントな感じですわね。スマートです。泥臭さというのがあまりない。それとチャーのうまさというのは、もちろん難しいことを簡単に弾くということもありますが、きれいに弾くことです。ミストーン的なものがとても少ない。それが、あの華麗でスマートなサウンドの構成要素のひとつになっていると思います。それに歌える、英語がペラペラということも大きな要因ですね。一般的には(チャーの昔の歌の歌詞にもありましたが)ジミヘンタイプという認識があるようですが、私はそうも思いません。乱暴にいえば、ジミヘンとジェフベックを足して割ったような感じでしょうか。もちろんもっといろんな音楽性が混ざっていますが。

いっぽうジェフベックの魅力というのは、華麗さというよりは無骨さの美学という部分が大きい。あの唐突で違和感のあるフレージングや音色の豊かさ、変わった決め技など、一般的なギターサウンドからすると「変な音」が多いのですが、それがなんとも生理的で、実は人間の心の奥にある無意識の衝動に近かったりするので、そのあたりが「変な音」がやがて「たまらない音」「病みつきになる音」になっていたりするわけです。ギターの音も時には野太く、時には突き抜けるようにソリッドで透明にと7変化します。演奏自体も時にはどうしようもないミストーンがドカンとでたりします。ただそれも(あばたもえくぼで)なんか衝動の極限に挑んだ末のミストーンという感じがして、ミストーン自体に「自分のかんだ鼻をティッシュを広げてみてしまう」ような、あるいは「自分のオナラの臭いを鑑賞してしまう」ような愛着を感じてしまいます。

そんなわけで、ジェフベックの代理を求める目からするとやはりベックのような野太さや唐突さ(唐突さはスリルにつながる)、異物さは、チャーにはあまりなく、フレーズもベックのように炸裂するエネルギーはないんですね(その分、流麗)。その部分にどうしてもBBAの曲における物足りなさ(スリルが足りないのかも)のようなものを感じてしまいました。ま、何度も自分に言い聞かせていますが、チャーの魅力というのは、そこじゃないだから。それに一時的なセッションバンドですからね。そんなに真剣に求めないでよと言われそうです。

チャーに関しては、最近のはあまりマメに聞いていないのですが、私はチャーの2枚目「Have A Wine」や3枚目の「Thrill」というアルバムが非常に好きです。あの中には、当時日本にはなかったカッコよさがあるし、今でも、全く新鮮です。今のチャーが演奏しても(しているのかな)全く違和感なしにカッコイイサウンドです。最近のチャーしか知らない方は是非聴いてみてください。アルバムではゴダイゴがサポートしていたのですが、当時のライブもゴダイゴがサポートしていてメチャクチャカッコイイ演奏をしていました(TOMORROW IS COMINGとか)。
1枚目の頃のライブも第二期ジェフベックグループ的な演奏もありカッコよかったですが、2枚目の頃はさらに高度でスマートでした。そういえば、2枚目のトーンはどこか第二期ジェフベックグループのアルバムの奥行き(リバーブの感じなど)に似ている気がします。

CBAを見たきたように書いていますが、実は都合でいくことができず、人から神戸の(何かの生中継放送)と東京の(CSの分)のビデオやテープを送っていただいて見て聴いたのです。神戸の時は、ツアーの最初のためか若干、チャーのノリが本調子でない印象を受けますが、東京のは、さすがという感じですね。

BBAの曲は、LADY、SONG FOR A LAUGHIN’LADY、SATISFY 、SUPERSTITION、LIVIN’ ALONE、GOING DOWNなどが演奏されました。SONG FOR A LAUGHIN’LADY、SATISFY は、BBA当時は正式なアルバムに入ってない曲。後期のライブブートや幻のセカンドアルバムブート(ティムボガートの友人からテープが漏れたとの噂)などで聴くことができます。SONG FOR A LAUGHIN’LADYは、かなりアレンジが違いますね。LIVIN’ ALONEが一番良かったです。基本的にはBBAアレンジですが、非常にうまく演奏され、ジェフベックとは違う魅力がありました。

ツアーの前後でPLAYER誌にインタビューが載っていましたが、カーマインが「チャーは英語ができるのがいい。これはコミュニケーションの面で重要なことだ」と言っていました。また、BAともども「ベックの時とチャーの時ではやはり演奏の仕方が違う。今回はチャーに合う演奏をした」ともいってました。BBA当時のエピソードに関しては、カーマインはベックのわがままに好意的で、ティムは言葉を濁していましたね。

ちなみにカーマインは今でもジェフベックと交友が深いようで、今回のことも未発表曲の演奏などジェフベックに了解を求めたら、「それは面白いんじゃないか」的なことを言っていたそうです。また、六本木にあるBAR「BBA」(オーナーがベックフリークで、カーマインも常連客らしい)の話だと、今度ジェフが来日するときは必ず(BARへ)連れてくると言っていたそうです。

というわけで、いろいろ複雑な思いをいだきなから(そんなに重く見なくてもいいだろうに)のCBAでしたが、結局、私は、たいそう満足したのでした。ちゃんちゃん。

2000.2.27