?> Truth | ジェフベックの茶飲み話サイト。

Truth

Side 1
1)Shapes of Things
2)Let Me Love You
3)Morning Dew
4)You Shook Me
5)Ol’ Man River4:00

Side 2
6)Greensleeves
7)Rock My Plimsoul
8)Beck’s Bolero
9)Blues De Luxe
10)I Ain’t Superstitious

1968年8月リリース

*再発盤にはシングル盤やテイク違いのボーナストラックがたくさん入っています。
I’ve Been Drinking
You Shook Me
Rock My Plimsoul
Beck’s Bolero
Blues De Luxe
Tallyman
Love Is Blue
Hi Ho Silver Lining

<レコーディングメンバー>
ジェフ・ベック(Jeff Beck):ギター、ボーカル、ベース(Ol’ Man River)
ロッド・スチュワート(Rod Stewart):ボーカル (except on Greensleeves and Beck’s Boleroを除く)
ミック・ウォーラー(Mick Waller):ドラムス (Greensleeves and Beck’s Boleroを除く)
ロン・ウッド(Ron Wood):ベース (Ol’ Man River, Greensleeves and Beck’s Boleroを除く)
*以上が実質的なバンドメンバー

<その他のメンバー、スタッフ>
ニッキー・ホプキンス(Nicky Hopkins):ピアノ、オルガン:Morning Dew, You Shook Me, Ol’ Man River, Beck’s Bolero and Blues Deluxe
キース・ムーン(Keith Moon):ドラムス:Beck’s Bolero, ティンパニー:Ol’ Man River
ジミー・ペイジ(Jimmy page):ギター:Beck’s Bolero
ジョン・ポール・ジョーンズ(John Paul Jones):ベース:Beck’s Bolero
ミッキー・モスト(Mickie Most):プロデューサー
ケン・スコット(Ken Scott):エンジニア

実はロックの歴史で重要なアルバム。

ロッドスチュワート、ロンウッドがいたバンド。

ジェフベックとして本格的に活動し始めたアルバムで、この頃の主流であったブリティッシュブルースをベースにしたロックアルバム。アルバム名義としてはJEFF BECKのソロアルバムというスタンスらしく、すべてが第一期ジェフベックグループのメンバーによる演奏ではありません。
しかし、ボーカルのロッド・スチュアートは、このアルバムで世にでました。現ストーンズのロン・ウッドもベースを弾いてたんですね。雑誌によく書いてあったのは、この頃ベックの性格は最悪で、ギャラを独り占めし、気まぐれでわがままでメンバーは嫌気がさして最後の方は険悪なムードだったと。ただ、後年ロッドは、後にも先にも俺たちの仲が悪かった事実はないと否定しています。

解散後、ロッド・スチュアートとロン・ウッドは、フェイセズを結成しています。フェイセズは、ベース奏者が山内テツだったりして(当時、ロックの世界で日本人が海外に出ていくのは大変なことで、ましてや世界的なバンドに加入するなど信じられないことだった)日本人には嬉しいバンドでした。山内テツ氏が、フェイセズ解散後しばらくして帰国し、活動していたグッドタイムスロールバンドは、ボーカルがロッドスチュアート風でノリのいいロックンロールバンドでした。

話がそれましたが、第一期JBGは、マネージメントやお金の問題があったようです。ドラマーもころころ変わったのですが、このアルバムではミックウォーラーが叩いているようです。初期にはエインズレーダンパーなども叩いていました。BBC録音として出ている演奏のドラムはエインズレーダンパでかなりノリが違います。ミックウオーラはロッドが紹介したそうです。

ロックバンドの雛形となったスタイル。

このバンドが当時斬新だったのは、ボーカルとギターが同等に対峙して演奏するスタイルです。今ではロックバンドの当たり前のスタイルですが、当時はそういうバンドがなかった。それにボーカルと対峙できるだけのスタイルと技術を持ったギタリストが居なかったのではないかと思います。ジェフベックやエリッククラプトン、ジミーペイジなどは、当時の他のギタリストに比べて突出して上手かったのだと思います。
年代を気にしながら聴くと良く分かりますs。ジェフベックにしてもヤードバーズの頃のライブ演奏を聴くと、技術的には完成されています。めちゃくちゃ上手いです。

ジェフベックが、ロッドスチュアワートという類い希なる声を実力を持ったボーカルを得てそういう今までできなかった試みをしたのがこのバンドでした。もうひとり同じ思惑の人がいました。ジミーペイジです。
すでにレッドツエッペリンの構想を具現化しつつあったペイジは、このバンドの初めてのアメリカツアーに同行したそうで、アメリカの市場で大受けするのを見て、レッドツエッペリンの成功を確信したに違いありません。ジェフベックも「ジミーがついてきて、俺たちのスタイルをパクった」と言っていました。

当時既にレコーディングも終えていたであろうジミー(Zepの1stは、契約前にジミーが私費で完成させた)は、パクったと言うよりは、確信を得てレコード会社と強気の契約ができることも確信したのでしょうか。実際、ジミーは既に完成した!stのテープを持ってアトランテイックレコードと「金は出すけど口は出さない」というZEPの契約を勝ち取っています。
このアルバムにもZEPのメンバーが参加したジミー作曲の楽曲「Beck’s Bolero」が収められていたりします。そういう交流がいろいろあったのでしょうね。

補足情報

*補足(2018年)
この項目を書いた後に出版されたロンウッドやロッドスチュアートの自伝を読むと、ここに書いたような「最悪の人間関係」というのは、それほどなかったようで、当時のマスコミが盛って歪めて書いていたようです。
後年の活動や交流を見るとロンウッドもロッドもジェフベックと仲良くしているし、ロッドによれば「昔からずっと仲が良い」ということです。

以下、ロッドスチュワート自伝「ロッド」より抜粋。
「俺がジェフベックのことを嫌っているっていう噂がある。だが、俺たちが一緒のバンドにいた2年半のどの段階でもそれ以降でも、そんな事実はない。」
「ジェフベックグループにはかなりの空間があった。つまり、歌手としての俺が、自分の能力を充分に発揮できる広いスペースがあったんだ。」
「ジェフが俺の声をかき消すようにギターを弾いたことは一度もない。彼はいつだって、俺が入るタイミングや声を伸ばすところを感じて、一歩下がって邪魔にならないようにしたかと思うと、その後から大音量で入ってくるタイミングもつかんでいるんだ。」
「最初の頃は、ジョンボーナムとジミーペイジは俺たちの演奏をしょっちゅう見に来ていた。連中がニューヤードバーズをまとめようとしていた頃だよ。」
「ジェフベックグループのセカンドアルバム『ベック・オラ』(ロック・オラというジュークボックス会社の名前を知っていると、この言葉遊びも理解できる)」

ジェフベックにしては、なぜか余りとんがっていない演奏。

サウンド的には、当時のベックグループの売りであったボーカルとギターのかけあいの典型が聴けるという面で、Let me love youやRock My Prim soulが一応目玉の曲だと思いますが、先のジェフベックの個人名義だと言うこともあり、結構いろんなタイプの曲が入っていて、そういう意味では濃い内容になっています。
ギターは、全編レスポール。この頃は、まだストラトは使っていないです(この後にジミヘンを見てストラトを使い始めたと言っていました)。
アンプの歪みなのか歪み系エフェクターなのか(雑誌にはよくトーンベンダーを使っていると書いてある)、重量感のある独特のディストーションサウンドで、Beck Ola以降とは違った感じです。BBAアルバムでもレスポールを使っていますが、もっとクリアなトーンです。まあ、音の録りかた自体も違いますが。

ベックというと一般的にはレスポールのイメージも強いようですが、レスポールをメイン使っていた時期というのはこの頃とBBA後期くらいで後は全部ストラトです。私は、ベックにはストラトが合っていると思います。
ベック自身は「クラプトンがレスポールでヘビーな音を出しているのを見て使おうと思った。ストラトはがっちり握ってひかなければいけないが、レスポールは力を入れなくても何でもできるような気がする」というようなことも語っていましたが、気まぐれでしょうか。
ストラトに傾倒しているのは、そのトーンとともにトレモロアームも大きな理由なのではないでしょうか。でも1975年ワールドロックフェスティバルに来日したとき、ストラトと共に黒いレスポール(レスポール初期のゴールドトップのブリッジを交換して黒く塗ったらしい。Blow By Blowの裏ジャケットの写真)を使っていましたが、ホントにいい音だし(ブートレグでしか聴いていませんが)持っている姿もかっこいいです。

てなわけで、Truthは数少ないレスポールメインの時期なのです。

ただこの頃は、まだフレーズのスタイルが確立していないようで、何かもたもたしているようなところがあったり、表情の起伏がそれほど激しくありません。次のBeck Olaくらいからだんだんとんがって行くんですけどね。

また、これはベックのアルバムに共通して言えることですが、ライブでのベック独特の革新的な演奏が、スタジオ録音ではいまひとつ感じられないのです。というより、ライブではもっと革新的といった方が良いのかも知れませんが、このアルバムも、当時のブートレグで聴かれる壮絶なフレーズの嵐と比較すると、おとなしい感じです。
ただ、革新的な演奏は、どうしてもミストーンや不安定性と背中合わせで、平均点を高くとらなければならないスタジオ録音では難しいのでしょうね。だから、私はオフィシャルアルバムで表現されているのは、ジェフベックの魅力の半分にも満たないと思います。ライナーノーツなどには、意表をつくフレーズ、大胆なフレージング、あふれる緊張感などとよく書いてありますが、私に言わせれば(偉そうですみません)まだまだ序の口です。
ま、昔は当時のベックバンドのライブを聴けるチャンスなどほとんどなかったでしょうから、ムリもないですね。その意味で、この時期のベックの魅力を最も感じられるのは、BBC録音の速いバージョンのRock my prim soul(Becologyに収録)だと思っています(本当はブートレグで聴けるこれの別テイクの方が革新的)。とんがったベックらしい演奏は、この後のBeck Olaで存分に味わえます。

曲紹介

Shapes Of Things
ヤードバーズでもやっていた曲ですが、趣は別の曲と言ってもいいほど違います。本当なら、ゲイリームーアがやっているようにブァーッと豪快にやる方がかっこいい曲ですが、当時のスタイルや録音技術などでこんななんか八畳の和室でやっている感じになったのかなと思います。ドラムなんかも時代を感じさせます。いや、でもベックのスライドはかっこいいし、ロッドスチュアートも当時としてはインパクトあったのではないでしょうか。ギターソロの時に左側でスライドで幽霊みたいな変な(横山ホットブラザーズの”おまえはアホか”みたいな)音、出しています。

Let Me Love You
初めて聴くとイントロから期待させてくれる曲です。この録音もなんか左右が分かれてしまって左の方はなんか窮屈そうですよね。右は、コピーするにはとても便利ですが。この曲は、なんだかベックは椅子に座って弾いているような気がしてなりません。そんなことはないと思いますけどね。でも、ちょっとリズムがもたっているし、妙にピッキングがせこい感じがするのは私だけなんでしょうか。それに、ロッドとギターもあまり熱くかみ合っている気もしませんねぇ。だから、私はこの演奏、そんなに好きではありません。
掲示板で投稿されて気がついたのですが、2コーラス目の歌はロッドじゃないんですね。ロッドは合いの手に回っています。じゃ誰だというと、おそらくベック自身だという感じです。ベックの割には音程がいいじゃないかと思いますが、後半の裏声っぽいところなどの節回しが、ヤードバーズ時代のナッズアーブルーなどに共通するし、ギターのフレーズとユニゾンで歌うというのが当時のギタリストの常套手段としてあったと思います。
この曲は、ジョーボナマッサがライブでカバーしているのが有名ですね。ベックそっくりに弾いています。

Morning Dew
第二期やBBAで聴かれるのとは、随分雰囲気の違う演奏です。これはこれで好きですけどね。この曲は、結構ボーカルとギターがいい具合に絡み合って盛り上がっていきます。何気なく聴いていると聞き流してしまいますが、よく聴くとワウワウで結構いろんな音を出しています。

You Shook Me
この曲もいきなりワウワウを途中で止めたままの独特の音で始まります。この時期、ワウワウに凝っていますね。ロッドも歌っていて、うるさいと思っていたんじゃないですか。オルガンが時代を感じさせる音で、今、かえって格好良かったりします。で最後もワウワウの音でエンディング。

Ol’man River
私はこの演奏結構好きです。曲もいいんですが、右の方でキャッ、キャッと刻んでいるベックのバッキングや、サビが終わって静かになって、ボーカルが歌いだしたときに突然ギャーと入るスライドの音。この一発だけでこの曲はイケてる、そう思います。その後エンディングにかけてベックらしいフレージングで楽しませてくれます。ベックがよく使うスライドのフレーズが出てきます。でもこのオブリガード、ボーカルにとってはうるさいかも知れませんが。

Greensleaves
どうしたんでしょう、突然。なんか気まぐれに録音したって感じで、ベックに生ギターはなんかイメージちがうなぁと思いましたが、この演奏、意外といいんです。フラットピックとフィンガーリングで弾いていると思いますが、しっとりとしてさすがですね。Guitar Shopの次はアコースティックでアルバムをつくりたいという話があったようですが、レコード会社に却下されたそうです。

Rock My Prim soul
ブルースのスタンダードRock Me Babyに似ています(なぞったのでしょう)が、このアルバムの中ではとても好きです、この曲。当時のベックグループの雰囲気が一番出ているのではないでしょうか。しかし、先にも書いたようにBBC録音のテンポの速いやつのほうが緊張感はあるんです。このBBCのテイク(ドラムはエインズレーダンパー)のソロを聴くとベックがブルースの人ではないことが良く分かります。いわゆるブルースっぽいソロでは全然ありません。ベックのルーツはロカビリーというところからアプローチが違ってくるのではないかと思っていますが。とはいえ、この曲は、ベースの2拍3連のフレーズが独特のノリをだしているし、ベックのソロもこの人でなければ弾けないソロです。ボーカルとの絶妙のコンビネーションや熱いギターで最後までどんどん行ってブレイク。昔よくあった終わり方です。うへぇ~っ、ださくてカッコイーッ。

Beck’s Bolero
これも個性的な曲ですわ。基本パターンはジミーペイジがつくったそうですが、キーボードがジョンポールジョーンズだったり、ドラムがザフーのキースムーンだったり、当時の売れっ子がワイワイ言いながら録音したんでしょうか。ここのスライドギターはベックのお得意パターンのフレーズです。途中からロックンロールになったり、変化のある演奏で結構いいですよね。

Blues Deluxe
オーソドックスすぎるほどのスローブルース。こういう時代だったんですね。ライブ感を出すためか、観客のSEが入っており、わざとらしくロッドが笑ったりしています。この曲は、BBAの時代、ライブではギターソロでトーキングモジュレーターを使い、You Shook Meを歌って?!(口をその形にするとギターの音で歌える)いました。最近のシングルでWild Thingを同じようにギターで歌っています。ここでのベックのギターは、細かいフレーズをあれこれ弾いています。でも、これぞ!というものは聴かれませんが、最初ちょっと調子っぱずれに聞こえるんですよね。えっ、合ってんのか???というところがジェフベックなんで、これがやがて病みつきになるんです。
リックデリンジャーが自身の「Blues Deluxe」というアルバムの中でカバーしています。そっちもカッコ良いです。

I Ain’t Superstitious
この曲は凄い。まず、何といってもワウワウのギターがメチャメチャかっこいいですわ。1回だけリピートエコーをかけて左右に分けてあるのもみそです。このパターンは、レッドブーツでも使っています。しかし、ワウワウだけでこんなに多彩なフレーズを弾けるギタリストがいるでしょうか。それにこのじゃべっているようなフレージング、ちょっとひょうきんでお茶目でかわいいキャラが入っているでしょう。このテイストが、ベックの大きな魅力のひとつです。そうJeff’s Boogieでじゃじゃ馬億万長者をやる、センスです。この曲、ライブではもっとお茶目なことやっており、ピックアップのところをさわって出るブーというノイズを使ってフレーズ?を弾いたりしています。この曲は、この時期の特筆すべき演奏です。
後年ロッドと共演するときにもこの曲をよくやっていました。

*2023.09.15加筆あり