邦題で「迷信」と名付けられたこの曲はスティービーワンダーにもらった曲なのですが、ジェフベックがリリースするより先にスティービーがリリースし、ベックが怒ったという逸話を持っています。
スティービーワンダーの「Talking Book」(スティービー版Superstitionも収録)で共演した(Lookin’for another pure love)縁からこの曲をプレゼントされたらしいのですが、まずいことにスティービー版の迷信は大ヒットしてしまいました。
ジェフベックとしてリリースされたのはBBAのアルバムですがライブではそれ以前から演奏していたようです。メッチャメッチャかっこいいクラビネットのリフで始まるスティービー版の迷信も聴いてみてください。
*追記(2019)
Jeff’s Bookによると、この曲は、1972年の春頃に最初第二期のメンバーとスティービーで録音されたそうです(クラビネットをスティービーが弾いていた)。契約の問題からか、夏頃にマックスに差し替えられ、さらにドラムがカーマインに差し替えられます。その直後、第二期メンバーが解雇され(7月下旬)、カーマインとティム、キムミルフォード、マックスのメンバーでツアー(8月)。10月頃には、BBAの形になり12月にはBBAのレコーディングに入ったため、結局第二期メンバーによるこの曲の録音はお蔵入りになったようです。聴いてみたいものです。
■第二期ジェフベックグループ「Superstition(bootleg)」より(4.5M/mp3)
この演奏はかなり貴重なもので第二期といってもベースとドラムはティムボガートとカーマインアピスなのです。楽器の演奏ではいまいち分かりにくいですが、コーラスのところで二人がはいってくるのでよく分かります。
第二期からBBAに移行するときに突然マックスミドルトン(kb)以外のメンバーを首にしてキムミルフォードというボーカルとティム、カーマインというメンバーでやり始めたのですが、ボーカルがあまりにひどいので、一週間でクビにしボブテンチを呼び戻したということがあったそうなのですが、まさにこれがその時期のものだということですね。後にすぐマックスミドルトンもクビにされてしまいます。ジェフベックは、本当にえげつない(関西弁でえぐいの意味)ことをするヤツです。
演奏のトーンとしてはスティービー版に近い軽いのりですが、これといった見せ場もなく単調な演奏が続きます。まだ未消化な感じですね。バンドのごたごたや急なメンバーチェンジによるリハーサル不足も影響しているのかも知れません。終わり方やリフの展開はBBA版に通じるものがあります。個人的にはボブテンチのボーカルが結構気に入っています。
■BBA「Beck Bogert &Appice」より(1.5M/mp3)
この曲がジェフベックとして世に出たのがこの演奏です。BBAのトレードマークにもなっていたと思います。第二期に比べるとかなりヘビーで粘っこい感じに仕上がっています。この演奏のポイントはなんといってもカーマインアピスの複雑なドラムパターンにあると思います。これがこの曲に独特のグルーブを与えています。イントロのベックのギターもパーカッシブなリフかっこいいですが、ギターソロの後半は何を弾いているのかよく分からんという感じです。
■「BBA Live」より(4.3M/mp3)
BBAのトレードマーク的な曲だったこともあって、BBAの中期まではライブでは一曲目に演奏されてたことが多いようです。トーキングモジュレーターをいつ頃から使い始めたのか分かりませんが、BBA初期のライブでは使っていない演奏もあります。日本公演は、中期にあたるので一番のっている頃だと思います。この頃の演奏では最初に必ずトーキングモジュレーターによるパフォーマンスがあり、その後そのままリフを弾き始め、すぐにノーマルなギターに変わりそのまま最後まで行くのですが、中にはギターソロもトーキングモジュレーターを使っている演奏もあります。
演奏のトーンとしては、スタジオテイクに比べ拍子抜けするほどに軽めです。この日本のライブはドラムの音が良くないせいもありますが、ギターもタイトで全体的に弾んでいる感じが強いです。これはBBAというバンドの特徴、ジェフベックの個性でもあります。
■World Rock Festival愛知県体育館公演より(3.6M/mp3)
BBAでの来日から二年後にワールドロックフェスティバルのゲストとして来ました。BBAでのヒット曲だったから引きを良くするためか、バンド形態が変わって曲が足りないためか、そのどちらもあると思いますが、インスト版で勝負してきました。しかし、トーキングモジュレーターで文字通り実際に歌っている(声を出さずにしゃべるとギターの音がその言葉の通りに鳴る。そういうエフェクターです)ので、ボーカル入りと言えなくもないですが、基本的にはメロディーをギターで弾くベンチャーズのようなインストルメンタル。
しかし、よく考えると、かなりくせがあるというかヘンな演奏ですね、私なんかもう麻痺していますが。
リズムはジェフベックとしては軽めです。この時のドラムは泣く子もよろこぶバーナードパーディ、ベースはウイルバーバスコム、軽いはずです。ちょっと興味深いのがリフのメロディのノリが微妙に違う(中の1音が半音低い)ことです。この公演は基本的に白いストラトで演奏されていましたが、この曲は黒い(オックスブラッド)レスポールで写真にも写っていました。