ジェフベックとスライドギターがすぐに結びつく人は少ないのではないでしょうか。
スライドギターの話題の時にも、ジェフベックの名前はほぼ挙がってきません。しかし、ヤードバーズ時代はスチールド・ベックというあだ名が付いていたほど、スチールギターでブルースを演奏するのが、トレードマークになっていたのです。
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キャリアを見渡した傾向
第一期ジェフベック以降も、実はスライド奏法はとても多いのです。ただ、デレクトラックスやデュアンオールマン、ジョニーウインターなどなどのスライドの名手とされているギタリストと違うのは、1曲まるごとスライドという演奏がないことです。テーマだけスライドで弾いたり、あるいは普通の曲のソロの一部でスライドを使ったりと、とりわけスライドを別扱いするのではなく、手替え品替え行う演奏の一環としてスライドもやるという感じです。
また、スライドでメロディを演奏するだけでなく、スライドバーで弦を叩いたりこすったりして変な音をだし、それも演奏の一環の中に入れてしまいます。そういうギタリストは、あまり聞いたことがありません。
また、時には、スライドなのかどうか良く分からない場合もあり、あ、これスライドで弾いてたんだ〜と気が付くこともしばしば。それだけ、スライドによくある定番フレーズを弾かないということだと思います。よく聞くとスライドでないと弾けないフレーズだけど、いわゆるスライドっぽくないので気がつかない。そういうものも多いです。
ソロになり新トルメンタル中心になるとスライドプレーが激減します。理由は定かではありませんが、インストルメンタルになると、ギターのなる部分が多くなるので、スライドプレーが際立ちかたが薄くなるからではないかという気がします。逆に言えば歌ものでこそ、スライドプレーが際立つということなのではないかということです。また、いわゆる指弾き(ピックを使わない弾き方)になってからは、トレモロアームを使ってスライド的な表現を行うようになり、さらにスライドの必要性がなくなります。
ですので面白いのは、BBAまでのスライドプレーではないでしょうか。
ジェフベックのスライド奏法について
スライド奏法、ボトルネック奏法と呼ばれる指にパイプをはめてスチールギターのような滑らかな音程を使った奏法のことです。ジェフベックの場合は、一貫して薬指にバーをはめていたようです。1曲の中でスライドで弾いたり普通に弾いたりしている曲も多いのですが、そういう場合、ライブではバーをはめたり外したりしていました。
ライクーダーのように小指にはめて、他の指で普通に弾くのと併用する人もいますがジェフベックのそういう写真や映像、ライブ演奏を見たことがありません。
バーは、昔からスチール製を使っていたようで、2000年以降一時ガラス製を使っていましたが、ジェフベックは多くの場合演奏中に用が済んだら床に落としてしまうため割ったすることがあるようで(実際に日本公演でも割れて、慌ててスタッフが掃除していた)その後スチールに戻していたようです。ガラスの方が温かい音になるので好きだったのかも知れません。でも昔やっていたような弦をこすってワイルドな音を出したりするにはガラスは向かないでしょうね。
また、用が済んだら床に落としてしまうという使い方をするので、ライブではアンプや小さなテーブルの上にバーを3本くらい立ててありました。
年代順ジェフベックのスライド演奏曲
第1期ジェフベックグループ
●Truth
・Shapes Of Things
ソロのバックでスライドバーで弦をこすって幽霊のような音を出しています(笑)ソロ終わりにも効果音。
・Morning Dew
テーマをスライドで演奏。
・Ol’ Man River
ここではいかにもスライドギターというフレーズを弾いています。
・Beck’s Bolero
中間のところで、エコーを効かせた有名なフレーズ。
●Beck Ola
・All Shook Up
後半バックで甘い音でスライドギターを弾いています。最後の方で、弦をこすってニワトリか何かの鳴き声のような擬音。
・Spanish Boots
あまりスライドに聞こえませんがスライドでないと弾けないフレーズが出てきます。
・Rice Pudding
後半、静かになった頃から特徴的なスライドギターが聴けます。
第2期ジェフベックグループ
●Rough And Ready
・Got The Feeling
ソロ前半のDmaj7-Am7のところをスライドで弾いています。
・Short Business
この曲は珍しく全編スライドです。しかし、ライブでは演奏されなかったようで、どの海賊盤を聞いても入っていません。
・Jody
最初と最後に出てくるテーマをスライドで弾いています。
●Jeff Beck Group(通称オレンジアルバム)
・Tonight I’ll Be Staying Here With You
間奏はほとんどがスライド。映像で見ると後半の6度和音はスラント奏法で弾いていました。
・I Can’t Give Back The Love I Feel For You
珍しくこれは全編スライドで弾いています。
・Going Down
バッキングの途中で1ヶ所ここだけスライドを使っているのかなという箇所がありますが不明。しかし、そういう一瞬だけスライドみたいなこともやるので要注意。
・Definitely Maybe
スライド演奏の曲として有名です。しかし、スライドはテーマだけです。
Beck,Bogert,Appice
●Beck, Bogert & Appice
・Black Cat Moan
ソロをスライドで弾いています。ちょっと聞くとスライドに聞こえませんが、スライドでないと弾けないフレーズがあります。
・Livin’ Alone
ソロでスライド効果を駆使したフレーズが満載です。
・I’m So Proud
イントロから間奏とエコーを聞かせた美しいソロやオブリガード、バッキングなど、スライドを使って実にエレガントに演奏しています。
●Beck, Bogert & Appice Live
・Livin’ Alone
ソロの頭でスライドで面白い効果を出しています。間奏にこういう入り方をする人はジェフベック以外に聞いたことがありません。
ソロ時代
●Blow By Blow
珍しくこのアルバムではスライドを使っていません。Constipated Duckのバックに聞こえるハーモニクス音がスライドを思わせますが開放弦なのでトレモロアームではないかと推測します。
●WIRED
・Love Is Green
最後の方のメロディがスライドかも知れません。不明。
●There And Back
・Star Cycle
中間でシーケンサーだけになるところでスライドで効果音的にやっています。ライブでも同じようにやっていました。
・El Becko
8ビートのロックンロール調になるところのテーマはスライドですね。
●Jeff Beck With The Jan Hammer Group Live
・Freeway Jam
当時話題になったのがソロの頭で、スライドバーで弦をこすってテーマメロディを弾いている所です。
●Flash
この頃からピックを使わない奏法になりました。トレモロアームで音程を替えたりスライドと聞き分けられないようなプレイが多くなります。なので多分スライドは使っていないと思われます。使う必要がないからです。
●Guitar Shop
Flashと同様です。指弾き奏法が進化して究極のトレモロアーム演奏Where Were Youなどもあります。スライドの必要がないと思います。
●Who Else!
・What Mama Said
後半のソロの頭で、特にライブではスライドでずーっと上がっていくようなプレイをしていました。
・Space For The Papa
この頃になるといわゆるエレキのスライド奏法(ブルースに根ざした)というのとはちょっと違う世界観のスライドになっています。トレモロアームに近い感覚でしょうか。
・Angel (Footsteps)
久しぶりにスライドバーで演奏しています。後半の高いところはフレットのないところで勘だけの演奏ですね。
●You Had It Coming
・Rollin’ And Tamblin’
イントロがオーソドックスなスライド奏法。この曲は元々マディウォーターズのスライドの曲なのでイントロはそれを踏襲しているのでしょう。その後は似て非なるものになっていますが。
・Nadia
当時有名になりました。前半はスライドプレーです。ただ、後半はスライドに聞こえますが、トレモロアームを駆使して弾いています。
・Rosebud
おそらくスライドでやっていると思われます。
・Blackbird
スライドバーできる音を駆使して弾いているという感じです。弾いていると言うより奏でている感じでしょうか。
・Suspension
これもスライドで弾いていると思います。
この頃になると、こういう微妙な音程のニュアンスをスライドやトレモロアームで表現していて、昔とは違ったテイストのスライドプレーになってきています。
●Jeff
このアルバムは音源の編集で作られている部分もかなりあり、ライブで演奏されたことも少ないため、スライドなのかトレモロアームによるプレイなのかが分かりにくくなってきています。部分的にスライドで弾いている所もあるかもしれません。
・Grease Monkey
イントロはスライドではないかと思います。それほどどうこういう演奏ではないですけれども。
・Hot Rod Honeymoon
ところどころスライドで弾いているであろうバッキングのギターが聞こえます。これも取り立ててどうという演奏でもありませんが。
・Take A Ride (On My Bottleneck Slide)
バックで静かに鳴っているギターはスライドでやっているかも知れません。
—>続く
●Live at BB King Blues Club
●OFFICIAL BOOTLEG USA’06
●Performing This Week… Live at Ronnie Scott’s
●Emotion & Commotion
●Live And Exclusive From The Grammy Museum
●Rock & Roll Party: Honoring Les Paul
●YOSOGAI(Mini Album)
●Live +
●Loud Hailer
●Live at the Hollywood Bowl
●Jeff Beck & Johnny Depp 「18」
■セッションワークでのスライドプレー