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ジェフベックの使用ギター変遷

ジェフベックのギターと言えば、こげ茶色の指板の白いストラトですが、70年代の日本では「黒いレスポール」というイメージも大きかったのです。それは、BBAで初来日した公演がレスポールだったのと、BBAライブの中ジャケットの写真もレスポール、セールス的に大成功したBlow By Blowの裏ジャケットにも”黒い”レスポールを弾く姿(BBA時代)が描かれ、その直後のワールドロックフェスティバルでは、ストラトと共に”黒い”レスポールが使われたので、雑誌の写真などで”黒い”レスポール姿が多く露出したためです。
雑誌やレコードジャケットでしか見ることができませんから、どうしてもそのイメージが大きくなってしまいます。しかし、実は”黒い”レスポールをメインで使っていた時期はBBAの時だけなので極めて短い(1年くらい)のです。

「白いストラト」は、第二期ジェフベックグループやBBA来日のポスター、BBAのアルバムジャケットの裏にも大きく写っているので、元々イメージがあり、Blow By Blowツアーの海外の写真で白いストラト姿が掲載されるに連れて「白いストラト」イメージが定着して行ったように思います。

ジェフベックがなくなって3ヶ月、今さらですが、ジェフベックの使用ギターについて振り返ってみました。ギターの仕様などの詳細はネットにたくさん出ているので、少し違う視点から見てみたいと思います。また、ロカビリーアルバムのものは省いていますし、一時的に使ったギターは拾い切れていないかも知れません。あくまでメインの演奏用として何を使っていたかということです。

初期はテレキャスター系

ヤードバーズの頃は、有名なエスクワイヤがよく写真に写っています。
エスクワイヤはテレキャスターを1マイクにしたモデルです。テレの廉価版として作られたようですね。
自伝を読むと最初はお金がなくてストラトキャスターが買えなかったというようなことも書いてあります。後に手に入れたとありましたが、ヤードバーズの写真でストラトを持っている写真はないんですよね。テレキャスターは後に「ジミーペイジにくれてやった」と言っていました。それを派手にペイントして使っていたと。


ヤードバーズのアルバムを聴いているとテレキャスターやエスクワイヤが多いような気がします(分かりませんが)。あのギターは不思議な回路になっていてマイクが1個しかないのに音色が3つ選択できるようになっているんですよね。昔と今では配線も異なるようですが、昔の配線では1ヶ所はトーンを絞ったモコモコの音になるそうで、ヤードバーズの演奏ではそういうトーンを使っているのがあります。トレインケプトアローリンで汽笛のように「ぷあんぷあ〜ん」という音をトーンを極端に切り替えることで出しています。ただ、これが、エスクワイヤのスイッチを切り替えているのか、テレキャスターのトーンコントロールでやっているのかは不明ですが、ライブの音を聞くとボットの操作ではない(瞬間的に切り替わっている)ような気がします。

レスポールでトレインケプトアローリンを演奏している映像もあります。「ブルースブレイカーズでエリック(クラプトン)が使っているのを見て良いと思った」と言っていました。だからヤードバーズ在籍の後期ということだと思います。ヤードバーズで人気者になってギャラを稼げるようになったらいろいろ買えたのではないでしょうか。ここでの「ぷあんぷあ〜ん」は、ボリューム操作でやっています。


レスポールからストラトへ。

第一期ジェフベックグループのTruthのアルバムは全編レスポールの音ですね。当時の写真を見るとサンバーストとナチュラル(笑)の写真があります。ナチュラルのレスポールは、The Beck Bookで紹介されていましたが、自分で塗装を剥がしたそうです。なぜ剥がしたのかは分かりませんが、自動車の整備をやるくらいですから、その辺の工作は手慣れたものだったのでしょう。また、サンバーストのレスポールも写真によってピックガードがあったりなかったりしています。色もブラウンとチェリーと2種類あるのでレスポールを3本くらい使い回していたのかも知れません。
チープトリックのリックニールセンが、この時期にベックにレスポールを売ったと話していたので、そのうちの1本かも知れません。ギターのディーラーをしていたリックは「1968年にジェフベックにとって2本目になる1959年製レスポールをベックのSGと交換した」とインタビューで話しています。ベックがSGを持って写っている写真もあるのでそのSGではないでしょうか。ということはSGを持っている写真はそれ以前のものだと言うことですね。

リックニールセンと交換したSG?

インタビューによると自分でペイントを剥がしたというレスポールのナチュラル(笑)

Beck-Olaになるとストラトが登場します。ジミヘンが使っているのを見て使い始めたと言っていました。トレモロアームが魅力的に見えたのかも知れません。アルバムでもアームをギンギンに使っています。また、演奏も前作よりも攻撃的になっています。
インタビューでは、当時のスタジオでは、マーシャルのアンプをフルアップにして録っていたと書いてありましたが本当ですかね???Jailhouse Rockなどを聴くとそんな感じの音がしていますが。しかし、この頃の写真ではレスポールばかりで、ストラトを持っているのがないんですね。だからこの時期どんなストラトを使っていたかが分かりませんが、ジミヘンに触発されたことなどを考えると白いストラトだったのではないかと思います。ストラトを持っている写真の中にこの頃のがあるのかも知れませんが。時期の確定ができません。第二期ジェフベックグループの後期〜BBA期に使っていたラージヘッドローズ指板の白いストラトがそうなのかも知れません。

フランケンストラトの登場。

第二期ジェフベックグループでは、全編にわたってストラトが使われています。その頃のストラトには2種類あって、まず有名な通称フランケンストラト、そして後期からBBA初期にかけては白いボディにローズネックのジェフベックのトレードマークとも言うべきストラトです(この時はラージヘッド)。もうひとつ、ブラウンサンバーストがあるという話もあるのですが、確定できる写真がありません。ただ、楽屋のような場所でサンバーストのストラトを持って座っている写真があるのですが、この写真は1975年頃の雑誌には載っていたので、ベルボトムのジーンズであることも含めて第二期ジェフベックグループ頃かも知れません。また、ヤンハマーとのツアー時に写っているサンバーストと同じギターであることも考えられます(ただしピックガードが違う)。

1971年9月のオランダ公演ではフランケンストラトを弾いています。
1972年3月Beat Club(以前はYoutube にありましたが今は削除されているようです)出演時はフランケンストラトで、このギターはこの映像と数枚のスチール写真にしか写っていません。

1971年9月Ahoy Pop Festival Holland
フランケンストラト
1972年3月Beat Club
1975年頃の雑誌に載っていたサンバースト

ちなみに「フランケンストラト」として紹介されている写真でローズネック&ラージヘッドのネックになっていますが、あれはBlow By Blowツアーからヤンハマーとのツアーの時期で、第二期ジェフベックグループではメイプル指板&スモールヘッドです。このストラトは、とにかく変なギターで、ボディは、ナチュラルですがいわゆるフェンダー純正のナチュラルではなく、塗装を剥がしたナチュラルです。第1期の頃にレスポールの塗装を自分で剥がして使っていたので、同じように自分で剥がしたのではないとかと思います。仕上げも雑ですしね(笑)ピックガードの角が落とされて穴が空いている、コントロールノブも不揃いなど、謎多数(笑)ギターにはあまりこだわっていないのか、ジョークなのか分かりませんが。

ドイツのTV番組「Beat Club」初期フランケンの詳細が分かる唯一の映像


*フランケンストラト、レプリカ製作記 >>

その後の白のストラトは、1972年5月にスティービーワンダーとセッションした際に撮られた写真に写っていますので、それ以降は白のストラトなのかも知れません。ただ、1972年の7月初旬に出演したBBCラジオでの演奏が有名なブートレグがあり、時期的に考えると白いストラトですが、この時の音を聞くと非常に硬い音がしていていて、Beat Clubの音と似ているので、フランケンストラトなのではないかと言う気がします。

ちなみに、スティービーとのセッションで録音された1曲がスティービーの「Talking Book」に収められたLooki’ For Another Pure Loveですが、そこでのジェフベックの演奏を聴くとレスポールのセンターポジションの音のようでもあります。しかし、この辺は録音の環境や仕上げによっても変わってきそうですしね。

そして、1972年8月の第二期ジェフベックグループからBBA移行期のライブの写真(ボブテンチとティムガートが写っている)、BBAのアルバムジャケットの裏面には白いストラトで写っています。
第二期ジェフベックグループ後期、オレンジアルバムの後からBBAにかけての時期は、この白いストラトがメインだったのではないかと思います。

Jeff’s Bookにひとつ珍しい写真があります。1971年の4〜5月New Jeff Beck Groupのリハーサルだと記された写真には、第1期に使っていたナチュラルのレスポールを持って写っています。

左:1972年8月2日ボーカルに1週間だけキムミルフォードを起用した公演。リズム隊はボガート&アピス、+マックスミドルトン。中:メディアなどでよく見かけたBBA初期の写真。右:New Jeff Beck Groupのリハーサルと書いてある。

”黒い”レスポールが登場。

アルバムレコーディング後の1973年

BBAの頃は、いわゆるオックスブラッドのレスポールが有名ですが、あれを手に入れたのは、アルバムのレコーディングの前、1972年の11月頃だと思われます。それまでは白いストラトだった(その時期のブートレグを聴くと)ワケですが、興味深いのは、11月7日のデトロイト公演でクリーム色に黒いピックガードのレスポールスペシャルを弾いている写真があることです。
直前の公演のブートではストラトなので、オックスブラッドを手に入れて12月のレコーディングで使用する狭間に瞬間的にレスポールスペシャルを使ったことがあるということなのかも知れません。

このギターがどういうものかは分かりませんが非常に珍しい写真です。雑誌でも見たことがありません。3人になってストラトでは音が薄くてレスポールを試してみたということなのかも知れませんが、それならレスポールとか簡単に手に入りそうですが・・・・謎です。BBAのアルバムが発売された1973年以降は、”黒い”レスポール(オックスブラッド)です。このレスポールは、メンフィスの楽器店で見つけたそうです。メンフィスに行った時期からすると11月の初旬ではないかと思われます。

左:BBAアルバムの裏ジャケット。ストラトは1972年11月頃まで使われていた様子。中と右:珍しいレスポールスペシャル姿。1972年11月頃ではないかと推測。

”黒い”レスポールは、すでに知られているようにオックスブラッドというエンジのような茶色のような色で、このギターは1952年のゴールドトップを塗り替え、シングルコイルのピックアップをハムバッカーに替え、テイルピースやノブも替えてある改造ギターです。

*ギブソンのオックスブラッドレプリカモデルの現物を見た。

BBAで初来日したりしたので、長年ジェフベック=黒いレスポール的なイメージも強いのですが、ジェフベックがこのレスポールを使っていた時期はそう長くはありません。また、レスポール自体をメインで使っていた時期は、第一期の前半とBBAの中〜後期だけです。全キャリアの中では、実は短いんですよね。

BBA解散後、1974年にUPPと共にBBCのTVに出演した際にはまだオックスブラッドを弾いていました。

左:Beck Bogart & Appice(1973年)右:UPPとともに出演したBBCのTV(1974年)

1975年ソロ以降、白いストラトが定着。

1975年Blow By Blowがリリースされ、開始されたツアーでは、メインが白いストラト、部分的にオックスブラッドでした。ジェフベック自身は、BBAからのギャップを緩和させるためにセットリストになじみのある「迷信」なども入れたというようなことを話していました。この「迷信」はボーカル代わりにトーキングモジュレーターで歌って演奏されていましたが、この時にレスポールが使われていたようです。「迷信」=黒いレスポールというファンのイメージに応えたのでしょう。ただ、この時の音を聞くとストラトでもレスポールのような太い音を出していますので、よく聞かないと混じっているかも知れません。

1975年後楽園

実際のエピソードとして、1975年ワールドロックフェスティバル名古屋公演(愛知県体育館)では、3〜4曲目くらいのFreeway Jamでストラトの弦が切れ、瞬時にレスポールに持ち替えたそうですが、その後は全部レスポールで弾いていたそうです(見た人の話)。ブートレグをよく聞くとFreeway Jamの終わりのテーマの途中で音が途切れて(弦が切れた)しばらくバックの演奏だけになります。すぐにまた弾き出しますが、レスポールに変わったとは気がつかないような音色です。
これから考えるに、演奏の個性を作っているのはギターの音色より、タッチやフレーズ、ニュアンスの方がずっと比重は高いということですね。

1975年の6月とクレジットされている写真。光っていて見えにくいですが、よく見るとナチュラルボディ、カットされたピックガードが見えます。ネックはすでにローズに替えられている。

この時期の写真で1975年6月デンバー公演で、ローズ指板&ラージヘッドのフランケンストラトを弾いている写真があるのですが、ひょっとしたら写真のクレジットが間違っているのかも知れません。不明。
マックスミドルトンの話によると、この時期のツアーでは、ギターを盗まれてしまって、行く先々でギターを借りて苦労していたそうです。それを見かねたマクラフリンがストラトをプレゼントしたという事です。本当ですかね?この頃のジェフベックくらいのミュージシャンなら、盗まれてもすぐに買わないのでしょうか?あるいは提供してもらえるとか。謎です(笑)この話が本当ならフランケンストラトも急遽登場したと言うことなのかもしれませんが。

また、この時期で有名なのがBlow By Blowの「哀しみの恋人達」で使ったとされるテレギブ(写真は次項)です。当時フェンダーで働いていたセイモアダンカンからプレゼントされたもので、テレキャスターにギブソンのハムバッカーを2個つけたものです。ただ、セイモアダンカンによると「本当はレスポールの良いのをプレゼントしたかったが、なかったのでこれを作った」とのことです。このギターはジェフベック本人も気に入っていたようで、その後もしばしばライブで登場します。

このジャケット写真に当時のギター小僧はしびれた。

「WIRED」が発売され、そのジャケットの白いストラトで、ジェフベック=白いストラトイメージが定着したと思います。このジャケットがとにかくカッコ良い。レッドブーツの演奏のイメージとリンクしていて、当時のギター少年のジェフベックのイメージはこれではないでしょうか。

その後のヤンハマーグループとのライブでは、フランケンギターがネックをローズウッド指板(ラージヘッド)に替えて登場。アルバムの裏ジャケットの他、雑誌に載っていた写真にもこのギターがよく写っていたので、白よりこっちをメインにしていたかも知れません。
あと、雑誌にはほとんど載っていなかったのですが、この時期にサンバーストも使っていたようです。このギターはある時オークションに出ていたようですけど。

左:定番の白。Jan Hammer GroupとのLiveでヤンハマーのプロモーションTシャツ姿。中:ネックがローズ指板に変わった後期フランケン。右:しばしばみかけるこの写真もトーキングモジュレーターの使用から同時期と思われる。

ギターシンセ、シェクターなどバリエーションが広がる。

1978年にスタンリークラーク、トニーハイマス、サイモンフィリップスと来日したツアーでは、オープニングで当時発売されたばかりのローランドのギターシンセサイザーが使用されて話題になりました。しかし、ベック自身によるとライトが当たって温度が変わると音程が狂いだして使い物にならなかったということです。言葉の通りその後は登場しません(レコーディングでは、コージーパウエルの「TILT」収録のCat Movesで使ったかも)。
また、このツアーでは、ポールピースが太いシェクターのアッセンブリーをつけた白いストラトが使われてそれも話題になりました。これはピックアップの切替スイッチが、独立したトグルスイッチになっていて、組み合わせで音色は多彩になりますが切替は面倒。その後のライブでは見かけなくなりました。
ジェフベックファンだった歌手の野口五郎さんがTVの歌謡番組でこのギターのコピーモデルを持って歌ってました。

 

左:1978年、OpeningではギターシンセでEarthとStar Cycleを演奏。
右:シェクターアッセンブリーの白。野口五郎さんもコピーモデル(確かグレコ?)を弾いていた。

その後、1980年のThere And Backツアーでは、ジェフベックにしては珍しいという印象のサンバーストのストラトを弾いていました。しかもメイプルネック。雑誌に載っていた記事によると酔った勢いでスティーブマリオットがくれたギターだとか。アルバムをこれで弾いているかは分かりませんが、ちょっと音が硬いような気がしたので、このギターはツアーだけで使ったのではないかという気がします。この時期に行われたチャリティのアームズコンサートでもこのサンバーストを使っていました。
また、テレギブも持ってきていて、「哀しみの恋人達」で使っていました。ファンのテレギブ人気に配慮したサービス精神なのでしょうね。さらにアンコールのGoing Downで、メーカーからプレゼントされたテレキャスのミニギターを弾いていました。サービス抜群ですね(^^)ちなみにジェフベックは、ファンからプレゼントされた服などもよくライブで着ていたようです。

左:サンバースト、メイプル指板。中:テレギブ。右:アンコールでは、ミニギターでGoing Down。

ファンとしては違和感のあるサンバーストでしたが、結局、ご本人はギターのタイプにはさほどこだわりはなかったんじゃないでしょうか。その時に身近にある弾きやすいギターを適当に弾いていた、そんな感じだったのではないかと思います。どんなギターをどんなセッティングで弾いてもジェフベックの音がする。そこが凄いところですね〜。

迷走期は、ギターも迷走?

5年の間が空いて1985年に「Flash」がでます。人気プロデューサーを起用してダンスチックなサウンドにギターを載せたなんともジェフベックらしくないアルバムで、個人的には迷走期と呼んでいますが(笑)、ギターも迷走していてジャクソンとかアイバニーズのとか使っていました。メーカーエンドースでしょうけど。ティナターナーのサインがあるピンクのジャクソンはフロイトローズ仕様で、なんだかジェフベックぽくないなあと思っていましたが、すぐに使わなくなりました。プロモの写真とかビデオで使ったくらいじゃないでしょうか。

ジャクソン2色。当時個人的には「似合わねぇ〜」と思っていた。

Flashのツアーとして来日し、軽井沢でサンタナやスティーブルカサーとのコラボイベントもありましたが、ここで使っていたのは、ジャクソンではなく黄色いストラトでした。ビルワイマンと写っている写真でも黄色を持っていたので、ミックジャガーのアルバムなどでも使ったのかも知れません。それ以外にはあまり見かけなかったので、黄色もあまり使わなかったのかも知れません。ミックジャガーのプロモーションライブでは、メイプルネックのグリーンのストラトを弾いていましたが、提供か間に合わせのギターではないでしょうか。

左:軽井沢では黄色いストラトが印象的だった。右:ロッドと共演したPeopele Get readyのプロモ映像。やっぱ、テレだよねえという感じ。

この頃になるとフェンダーからも「ジェフベックモデル」が出ていたし、フェンダーとの契約でいろいろな仕様を作ってもらっていたようです。フェンダーからも「これ使ってみてください」的な提案もあったでしょうしね。フェンダーにしたら、ジェフベックがライブで使うと売れますから、色んな色のを使ってもらえば、色んな色のが売れます(笑)この頃の雑誌には黒いストラトも写っていました。ジェフベックと黒のストラトって結びつきませんが、2000年代になってパリの野外イベントのリハーサルでスラッシュやジョーペリーなどとトレインケプトアローリンをやっている映像があります。

※2023/05/27のネットニュースによると、ジェフベックの黄色いストラトは、プロトタイプ(一旦フェンダー社に返却し、チューンナップして再度提供されたもの)がオークションに出品されて日本円で約1330万円で落札されたそうです。
https://amass.jp/167018/

なおFlashツアーの「哀しみの恋人達」ではテレギブではないテレキャスターを使っていました。「哀しみの恋人達」=テレキャスターというファンのイメージに応えたのではないでしょうか。サービス精神旺盛です。また、FlashでロッドスチュアートとコラボしたPeaple Get Readyのプロモーションビデオでもテレキャスターを弾いていました。同じテレではないですかね。
またこの時期、ロッドスチュアートのアルバムでもプレイしていますが、そのうちの1曲「Infatuation」のプロモビデオにはジャクソンで登場します。あて振りなのでアルバム曲を本当にジャクソンでプレイしたかどうかは分かりませんけど。
余談ですが、この時メディアでは「ロッドと仲直りした」などと、さも仲が悪かったような書き方がされていましたが、後年発売されたロッドの自伝によると、第1期ジェフベックグループが現在に至るまで、ジェフベックとロッドが仲が悪かったことは一度もないと語っていました。

Infatuation 間奏でジェフベックがジャクソンを持って登場。

サーフグリーン、パープル、レースセンサーPU

1989年にGuitar Shopがリリースされ、日本にもやって来ました。アメリカのTVではレースセンサーのサーフグリーンを弾いていました。1999年にWho Else!が出るまでは、時と場合によっていろいろなギターを弾いています。1993年アポロシアターでのブルースミュージシャンとのイベントでは、レースセンサーPUをつけた紫のストラト。1995年サンタナとの北米ツアーでは、レースセンサーのサーフグリーンストラトを弾いていました。雑誌の記事によると、レースセンサーのストラトは、グリーンと白も用意されていたようです。この時期レースセンサーが気に入っていたのでしょうか。そのためかどうか分かりませんが、このライブのギターの音は、倍音がよりまとまっていたりしてスッキリした音がしていました。レースセンサーって、ちょっとブーミーな音になると思うのですが、ノイズが少ない分すっきりしていたって事でしょうか。この時の演奏はもう神がかっていて、Char曰く「弾いているというより、手を当てているだけで音が出ている」状態でした。きれいな映像が出てこないでしょうかね。

左:1989年来日時の機材紹介記事。中:アポロシアターのイベントで持っていた紫。右:鬼太郎ベストと言われた(笑)のは1995年のサンタナとの北米ツアー。

Who Else!以降

1999年に10年ぶりのアルバム「Who Else!」をリリースし翌年に来日しました。この時から晩年は、ブリッジやナットなど細部に仕様の違いはありますが基本的にローズ指板の白いストラトで、合間に何曲かでテレキャスターを使うといった感じです。また、20xx年頃からリバースヘッドのストラトが話題になりましたが、1999年の来日時にも機材にはあったようです。また、2009年頃のレスポールトリビュートのライブなどでは、レスポールを始めギブソンやグレッチなどロカビリー的なギターを使っていましたが、これはイベントのためのイレジュラー。あとアルバム「Laud Haler」のツアーでは、レコーディングにも使ったと言われるオイル缶のギターをライブでも弾いていました。

*ここでオイル缶ギターの実物を紹介しています。

左:リバースヘッドの効果について議論が沸き起こった。中:オイル缶ギター。右:ギタリストのレスポールトリビュートライブ。

デジタル路線のアルバム3枚、最後の「Jeff」以降は、新しい境地を探求しつつも、往年の曲やボーカル曲も演奏して、ジェフベックの世界が安定して聴けるライブになりました。その分、昔のスリルはなくなってしまったのですけどもね。Who Else!以降の音色というのは、だいたい一貫していて、歪んでいるのにクリアで伸びやかな独特のトーンです。これは1995年頃から確立してきたような気がします(あくまで個人的印象)。ストラトで、どうやったらあんな音になるのだろうというような、独特のエッジの利いた、しかし質量感と艶のあるトーンです。もちろんそれは、ギターや機材と言うよりあのタッチが生み出しているものだと思いますが。

アンプなど

アンプに関しては、第1期のころから一貫してMarshallが多く、Fender、ヤードバーズの頃はVOX、第一期のある時期はTransonic(Rickenbacker)、第二期ジェフベックグループからBBAあたりはSun、近年では2015年頃からMagnatoonなどが見かけられました。BBCに出演した時はAmpegを使っていましたが、ライブ写真では見かけたことがないですね。
Rickenbacker Transonicは、あまり知られていないと思いますが、リッケンバッカー社のヒストリー冊子を見るとジェフベックがステージで使っている(音符のロゴマークが見える)写真が載っていました。Sunは第二期ジェフベックグループやBBAの写真に写っています。Sunを使った理由として当時のインタビューで「マーシャルだと歪みすぎる」と話していました。実際BBAのライブをよく聞くと、ジェフベックのギターって、そんなに歪んでないんですよね。歪んでいるようなイメージがありますが。
1985年にFlashツアーで来日した際は軽井沢公演がTVで中継されたので良く分かりますがFenderのアンプを使っていました。

しかし、繰り返しになりますが、どんな機材を使おうがジェフベックの音の個性は変わらないんですよね〜。親しいプロのミュージシャンが「弦楽器は所詮タッチなのだ」と言っていましたが、ジェフベックなどはまさにそれですね。