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Freeway Jam

定番中の定番曲。

マニアックな曲ばかりだったのでジェフベックの中で、特にギタリストには最も有名と言っても過言ではないFreeway Jam。ジェフベックの奔放なギターが生き生きとするまさにジェフベックのギターを最もカッコ良く聴かせる曲でもあります。

アマチュアなどでもセッションでシャッフルでワンコードでジャムをすると言えばこの曲みたいになるくらい、ある面自由度が高くそれだけに持たせるのが難しい曲ですね。ワンコードでインプロビゼーションをするってプロでもなかなか持たせるのは難しいと思います。たくさんの引き出しとそれの組み合わせによるドラマづくりができて、観客を感動させることができるギタリストはそういないのではないでしょうか。

ワンコードって和音背景が変化しないのでソロイストにすべてかかかっています。世界のレジェンドの演奏でもワンコードですごいというのはなかなかないんじゃないでしょうか。

また、バックの演奏も和音こそ変化しませんが、ダイナミクスやあいのてやオブリガード的なソロに呼応するバッキングが盛り上げには重要です。ライブを聴いているとジェフベックのすっとんきょうなギターが映えるように、空間を空けたりダイナミクスの極端な変化をつけたりするのは分かっているメンバーだからこそできるものだと思います。

スタンリークラークと一緒に来日した時もジェフベックはもちろんですが、サイモンフィリップスやスタンリー、トニーハイマスの盛り上げるコンビネーションが抜群だと思いました。

Blow By Blow録音の状況

Blow By Blowの録音は、ほとんどがテイク1か2で終えたというようなことが何かに書いてあったと思いますが、そういう緊張感のある演奏だと思います。別々には取っていないでしょうね。ベックのギターにドラムやピアノが呼応しています。そのあたりの上手さもベックの変わったギターをカッコよく聞かせていると思います。

この録音のメンバーは、ドラムが当時若干18歳だったリチャードベイリー、ベースが後にロッドスチュアートバンドでも活躍するフィルチェン。Jeff’s Bookによるとフィルチェンとはベックはヤードバーズ時代から知りあいだったようです。エレピが第二期ジェフベックグループの盟友マックスミドルトン。この曲の作者はマックスミドルトンですが、第二期ジェフベックグループの曲「Definitely Maybe」のサビの部分をリズムを変えてリファインさせたそうです。言われてみればそうですね。でもまったく別の曲に聞こえるのが凄い。

この録音は、ドラムのスネアから入りますが、シャッフルのリズムをたたき出した途端めっちゃ良いノリがきます。上手いですね~若干18歳とは思えない練れたドラム。Blow By Blowでのリチャードベイリーのドラムでは、個人的にはフラムの使い方が上手いなあと言うのもあります。この曲でも出てきます。

イントロからオールインでグルーブがグイグイ来るところにギターがそこはかとなく乗っかってくるのがジェフベックらしい。この辺りも一発録音ぽい臨場感がありますね。ベックのギターの強弱に他の楽器も呼応しています。

この録音は基本的には一発録りだと思いますが、ピアノソロに入ってからのバッキングのギターはオーバーダブされているような感じです。

録ったときに後半あまりバッキングをしていなくて、「要らないんじゃない?」「いやあった方がよいよ」「じゃ、適当に弾くから録って」みたいにオーバーダブされたのではないでしょうか。あくまで想像ですが。また、1回目のテーマメロディももう1本同じように弾いているのが重ねられているようですね。弾き方が微妙にずれています。

またギターのマイクポジションは、テーマメロはミドル、それ以外はリアで弾いているのではないでしょうか。

 

細かい解説と考察

イントロ部

通常版では聞こえにくいですが、オールインしたときに1回ハーモニクスを弾いています。そして何弾こうかなって考えている感じ。そしてもう一回12フレット実音で食い気味に入ってきます。

15フレットでギャーとやった後に3フレットまでおりてGでオクターブ。この辺りは如何にもジェフベックという感じ。イントロのテーマみたいなメロディを3FのGのフォームで弾きますが、同じようなメロディでも絶対毎回違う弾き方をするのがジェフベックです。その次はまた急に15Fポジションに行って攻撃的なフレーズに行きます。この辺がジェフベックらしい流れ。いろんな場面でトレモロアームで少しビブラートをかけています。

また3Fに降りてきてオクターブを使って重量感のあるフレーズを弾きます。こういう所はおそらく下の弦をフラットピックで弾きながら上の弦を指で弾くように弾いていると思います。独特のパーカッシブな音になっています。この辺もジェフベックの特徴ですね。(デモ動画の45秒辺り)

そして、おそらく3弦19フレットのハーモニクスから16フレットのBbアームダウンして3弦4弦の解放を鳴らし、ダブルストップ的に3弦4弦15フレットを6回弾いて、4弦15フレットを押さえたまま3弦17フレットを下へチョーキング。これはカントリーではよく使われる奏法です。こういうのが出てくるあたりが、ブルースをルーツにしたギタリストと違うところです。しかし、この一連のフレーズは良く分からない流れです。何かをしようとして失敗して中途半端になってしまったのではないでしょうか。(1:22あたり)

テーマメロディ

その次にテーマメロディを3回弾きますが3回とも違う弾き方と音です。PUはミドルを使っているようです。(1:35~2:17あたり)よくセッションなどでこの曲をやる時にチョーキングで弾いているのを見かけますが、意外にもチョーキングはあまり使っていないようです。

1回目は普通に、2回目は短3度の音を混ぜてきています。しかもちょっと詰まったようなのは、弾き損じたのをぎまかしたのでしょうか。フレーズ終わりのGの音が若干♭気味になっているのはアームを押さえすぎてのご愛敬でしょうか(笑)このテーマ部分はもう1本ギターが重ねられている感じですね。

3回目は最後の音が2度(3弦14FのA)まで行った流れで短3度(B)とGの繰り返しをアームで震わせるという今ではよくあるパターンですが当時はやはり珍しい使い方でした。

サビセクション

この次はサビのセクション。GからFに下がったところでマイクをリアに切り替えているようです(2:18)。ここでもジェフベックは素直には弾きません。非常にクセのあるというか変化に富んだフレーズ展開をします。

サビは|GF|FG|GF|FA|AA|AF|BbA|G|でソロに入ります。

その度のリックはコードのペンタトニックで弾くところがジェフベック。低音弦でのフレージングも独特の音の拾い方をします。こういうのにもルーツの違いが出ているのかも知れません。

ソロ部

ソロの最初はトリルです。その後ブルース的なフレーズ、その次に15FのGポジションをトリルしながら4弦5弦と弦を降りてきます。その辺なかなか難度の高いところ。その次が5弦13FのA#と6弦15FのGをベンドでつなぐという強引なフレーズ。6弦が0.42くらいでないとなかなか難しいのではないでしょうか。ワーヤードの頃にヘビーボトムの0.46を使っていると書いてありましたが、この頃はまだ0.42だったかも知れません。

しかもその後連続でたたみかけるところは、6弦15フレット辺りに移動しているのではないでしょうか。テンポに合わせて3連(2拍3連)でベンドするのはなかなか難しい。

この動きに合わせてドラムもシンバルカップの2拍3連で呼応して盛り上げます。最高潮のところで2弦F-Gのベンドでキメ。この辺の流れが実に上手いですね~。

その後はまた15FのGポジションで6弦に降りてきます。このフレーズも普通のブルース的な運指だと弾けない変な音を拾っています。

その後のフレーズがひとつのハイライト。3弦の解放と15FのA#(短3度)をアーミングしながら交互に弾きます。A#はハンマリングであの変な音を出しています。こういうギミックは落ち着いてやるとできますが、演奏の途中で急にやるのはなかなか難しい。ここぞと言うところでバシッと決めるにはタイミングや力加減を普段から体に染みこませていなければできません。ジェフベックは普段からこういう変な音を出して遊んでいたんでしょうね。第一期の頃のインタビューで「いかに変な音を出すかをみんなで競っていた」と言っていましたから、その頃からの積み重ねがあるのでしょう。

このハイライトの後は1弦の一番上の方まで行って、また3Fポジションに降りてソロが終わります。フレットも弦もあちこちに飛びながら、独特のソロ展開をしますね。短いソロの間にこれだけの異なるイメージを展開するギタリストはなかなかいません。しかも単にフレーズが展開するだけでなく弾き方が異なるので表情も変わります。

ジミーペイジが「あらゆるギタリストのお手本」と評すのがこれだけみても分かります。この短いソロの中にどれだけのアイデアが込められているのか。

テーマメロディ-2

ソロが終わるとドラムがスネアをフラムできっかけを作りテーマになります。ここでのテーマは2回だけです。

1回目は12Fのポジションで短3度を混ぜたフレーズ。最後のGに行く時にA(2度)に行った流れで15Fのポジションを1弦Gから降りてきますが、これもバレーした弦を跨いでピッキングしなくてはいけないフレーズです。そのまま一気に下に降りて2回目は3弦解放Gのローポジションから。そして音色を聴くと、次になぜか3弦でメロディの前半を弾き、後半は3フレットのポジションに戻っているようです。ここも気持ち短3度が入っています。ビブラートはアームではなくフィンガービブラーとをしています。非合理的な変な運指ですが、映像を見ているとこういった変な運指をよくやっているので実際こうやって弾いていたのかも知れません。こういった非合理的な変な運指が、独特のニュアンスの一因になっているのかも知れません。

サビ-2

サビのGFはピックと指で弾くオクターブ奏法、2回目は3弦12FであーG、次のリックはおそらく12Fの1弦2弦で弾いているのではないでしょうか。また下に降りてGFA#AGで、通常版では聞こえにくいですが、6弦3FのGから低音弦をベンドしたフレーズで締めています。その後はピアノソロですが、別テイクのオーバーダブでバッキングが聞こえます。おそらくピックと指で弾くように弾いているとおもいますが、2拍目にアクセントのある切れの良い低音弦のバッキングが聞こえます。


細かくコピーしていくとなんとも奇天烈な弾き方の連続です。音だけ追うならもっと合理的な弾き方ができますが、それではあのニュアンスは出ないのでしょうね。この変な運指はひょっとしたら本当に先のことを考えずその場その場の思いだけで弾き繋いでいるからかも知れません。

今となっては謎です。ともあれ、ワンコードの短いソロの中にこれだけ変化に富んだしかも個性的なフレーズばかりを展開できるギタリストは未だに居ないのでは亡いでしょうか。

シンプルなテーマメロディでさえ、毎回違った弾き方をする引き出しの多さが凄いです。