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JAN HAMMER(ヤンハマー)

ギターもどき殺人者の凱旋
<JEFF BECK的ヤンハマーの基礎知識>
すでにご存じのことと思いますが、ヤンハマーは、JEFF BECKの中でも代表作の一つにあげられることの多い「WIRED」でJEFF BECKのギターと緊張感のあるバトルを展開しているボーディストです。BLUE WINDの作者&ドラマー&キーボーダーとしても有名です。その後は、JEFF BECKとの全米ツアーを収めた「JEFF BECK WITH JAN HAMMER GROUP LIVE」でも、独特の演奏をしています。また、後のアルバムにも時々曲と演奏で参加しています。「FLASH」のESCAPE, 「THERE AND BACK」のSTAR CYCLE、TOO MUCH TO LOSE、YOU NEVER KNOW,「WHO ELSE!」のEVEN ODDS
などはヤンハマー作です。

ヤンハマーという人はすごい人です。頭も凄いですが、名前も凄い。チェコの出身で、JANをヤンというのが正しいのかジャンが正しいのか。チャー氏は昔ラジオでジャン・ハーマンと言っていました。一般 的にはヤンですね。そしてHAMMERはハマーなのかハンマーなのか、いずれにしてもゲルマン系の香りのする名前ですわな(昔のチェコスロバキアの生まれだそうです)。ジャンは焼き肉のタレだし、ハンマーじゃ頭殴られたら痛いだろうななどと考えたり、名前だけでこれだけ考えたら覚えてしまいます。ひっかりのある名前です。
この人は、4才くらいからからピアノとドラムをならっていて、14才くらいからジャズ畑で活躍していたようです。その後ジョンマクラフリンのマハビシュヌオーケストラに参加し、ジャズロック、正しくはロックジャズ?のシーンで有名になりました。
ジャズロックという言葉はあるのにロックジャズという言葉はありませんね。ちなみに「おはようございます」という挨拶はあるのに「おばんでございます」という挨拶はありません・・・・・。

さて、ロックからジャズへアプローチするのと、ジャズからロックへアプローチするのでは、ちょっとニュアンスや演奏手法も違ってくると思いますが、ワイヤードの頃は、まだこの手の音楽はクロスオーバーと呼ばれていました。
その後、ボサノバやエスニックなど様々な音楽を融合するスタイルが定着して、しかもそれらは十分にポップだったため、フュージョンという言葉がでてきました。
マハビシュヌなんかもジャズ・フュージョンというジャンルに入れられていたりする訳ですが、フュージョンというとなんかトロピカルドリンクのような甘っちょろいBGMもどきの快適系ミュージックをイメージしてしまいますので、もうちょっと骨のある良い言葉が欲しいものです。 やっぱりロックジャズかなぁ。
ま、やっている本人たちは、そんなジャンル分けなど関係ないのだと思いますが、あーだのこーだの言うときには、あった方が伝わりやすくて便利ということもあります。
そういえば、Blow By Blowが成功したときジェフベックは、全米のベスト”ジャズ”ギタリストに輝いていました。

高度なインタープレイ・・・実はポップな音楽志向?
 ヤンハマーはジャズ畑ということになるのでしょうが、もっと多彩 でありポップな音楽性を持っています。ヤンハマーグループのアルバムには、マハビシュヌで高度なインタープレイをやっていたのが信じられないくらいメロディアスでハーモニー豊か、一瞬西海岸のコーラスバンドかと思わせるような内容のものがあります。TV番組「マイアムバイス」の音楽を担当したことなどからも、どちらかといえばそういったポップな音楽というものを志向しているのだと思います。
同じマハビシュヌ出身でジェフベックと関係のある凄腕ドラマー、ナーラダマイケルウォルデンが後にマライヤキャリーなどのヒットポップスを生み出すプロデューサーとして活躍しているのと似ています(※ヤンハマーとナーラダさんが在籍した時期は異なると思います)。
ヤンハマーもやがてそういった存在になるのかも知れませんね。ちなみにナーラダさんもジャフベックも参加した「Garden Of Love Light」のアルバムは、”クロスーバー”な音楽ですが、その後のソロアルバムでは、本人のボーカルがフィーチャーされ、とてもポップでブラコンな内容になっています。
私は、レッドブーツのようなドラムを期待してこれらのアルバムを買い、ガックシした覚えがあります。しかし、内容的にはとても良いです。ジェフベックとフィーリングの似ているギタリスト、レイゴメスも参加しています。

話がそれましたが、ヤンハマーはマハビシュヌ在籍時からそういった志向を持っていて、マハビシュヌ音楽に行き詰まりを感じたというようなこともあったようです。ヤンハマーグループもワイヤードの頃、インタープレイを基本としながらもポップな感覚にあふれていました。「JEFF BECK WITH JAN HAMMER GROUP LIVE」の中のERTHなどでも歌入りでそういった感覚が感じられますし、インストものもテーマメロディに色気のあるものが多いですね。演奏の質も高く音楽性も非常に豊かですね。

音楽的キャリアとしては、ジャズから始めてはいるものの、若いときには他の若者と同じようにビートルズやエルビスなどの影響を受けながら音楽を志したということらしいので、そういったノリがベースにあるのかも知れませんね。マハビシュヌの第1期メンバーの他、その時のドラマー、ビリーコブハムの「SPECTRUM」にも参加したりしています。このアルバムには、トミーボーリンが参加しており、在りし日の若いトミーボーリンの素晴らしい演奏が聴けます。本当に惜しい人を亡くしました。

ギタマネシンセの功労
さてヤンハマーですが、この人の音楽界にとっての最大の功労は、シンセのピッチベンダーを使ってチョーキングをシミュレートし、ギターのようなフレーズを弾くということです。
今でこそ、当たり前になっているこの奏法も、当時は珍しく、愛用のミニムーグ(シンセサイザーの機種)の独特の音色も手伝って非常に際だっておりました。以前からやっていたんでしょうが、ワイヤードでのジェフベックとのバトル以降、この奏法が広まったというような気がします。シンセでエレキギターの奏法を真似ると言うことに、どれだけの意義があるのかと一瞬思いますが、ギタマネシンセにはギターとはまた違った味があることは確かです。

ピッチベンダーで音程を変える(つまりギターで言えばチョーキングする)タイミングやスピードがどこかギターより軽めというか、かわいい感じです。
実際、ギターの場合は、弦の張力がかかっているので、それなりに力を込めてエイヤッと上げるわけで最初ちょっとだけ努力が必要です。対して、シンセのピッチを変えるレバーなりホイールは非常に軽いので、いとも簡単にチョーキングができてしまいます。その分、音程が保ちにくいということがあります。
レバーやホイールを動かす力というのは、音程にかかわらず一定で、とても軽い。音程によって変わるのは動かす幅(距離)ですが、これはとても微妙。だから、チョーキングの音程が微妙にずれるんですね、悪く言えばジミーペイジみたいに(笑)。

ギターの場合は、張力の抵抗が幸いして、意外と音程が保ちやすいのです。チョーキングする音程幅によって違うため、例えば半音チョーキングと1音半では、力のいれ具合が違います。だから、力のいれ具合で音程を図る(そして耳で確認する)ということをします。これは、慣れてくると非常に正確になってくるんですね、人間の勘というものはすごいものです。ただこのあたりの微妙なタイミングなどにギタリストの個性がでるんです。
さらにチョーキングすることで弦の張力が変化し、それに伴って音色までもが微妙に変化するんですね。これは、低音弦と高音弦でも違ってきます。しかし、シンセの場合は、電圧を変えるだけなので、ギターのような物理的な音色の変わり方はしません。

というような違いがあるのですが、これらがギターのチョーキングとはまた違った味を生み出しているんです。

というようなことが理由かどうかは知りませんが、ヤンハマー以降、劇的に普及したのではないでしょうかこの奏法。キーボードの人も隅の方で座ってばかり居ないで、ステージの真ん中でギンギンやりましょうよ・・・というメッセージに聞こえたのでしょうか?いや~功労賞です。
それに加えてヤンハマーの場合は、ムーグの音、さらに使うスケールがこれまた個性的です。
4度と3度(要するにCのキイで言えばFとE)の音を効果 的に使って緊張感のあるフレーズを奏でます。
ワイヤード以降、ジェフベックはこのスケール感にも確実に影響を受けていると思います。この独特なスケールは、リフでも絶大な効果 を発揮しています。とそれをスピードアップさせたようなStar Cycle、You never know、Blue wind、Oh yeah!(ヤンハマー自身のアルバムに収録)、その他アルディメオラやトニーウイリアムスなどのアルバムに提供しているカッコイイ曲のリフには必ずこのパターンがあります。ワンパターンというには、バラエティ豊かであり、このかっこよさはワンパターンを超えたヤンハマー”モード”とも言えるものです。一度聴けばすぐにヤンハマーと分かる個性があります。いやはや、超一流は、すごい。この手のリフをつくらせたら、ヤンハマーの右に出るものはいませんね。

ロックンロール・ローデス!!
 もうひとつシンセの陰に隠れて忘れられがちなのが、ヤンハマーのローデス(エレピ)です(^^)。ジェフベックの話でローデスといえば、マックスミドルトンですが、ヤンハマーのロ-デスにはまた違った味があります。ヤンハマーグループのライブなどで力強いローデスが聴けます。
先に音楽性の豊かさを書きましたが、この人はジャズ側の人なのに、非常にロックンロールなノリを持った人で、ローデスの演奏には特にその部分が出ているように感じます。「Oh year!」は、個性的なシンセのテーマメロディとともにローデスのコード弾きがかっこいい曲です。この曲なんかは、ジェフベックがやってもおかしくないくらい、非常にジェフベック的な曲です。というより、ジェフベックがヤンハマーと出会って、ヤンハマー的なものをジェフベック的として取り込んだという方が正しいのかも知れません。
*Oh year!

 

元々、両者とも非常に似たものを持っている感じがします。ひょっとしたら、それはファンキーなロックンロールなのかも知れません。略してファンクンロール?とでも言えばいいようなロックンロールのマインドを持ちながらファンキー。普通 のファンキーよりもと横ノリのドライブ感がある感じ?

「Blue wind」もそうだし、FLASHのなかの「Escape」の爽快感やノリの良さは、まさにファンクンロールと呼びたい。「Escape」は、ジェフベックがソロらしいソロなんて弾いていなくて、ベンチャーズのようにメロディを弾いているだけなのですが非常にベックっぽくヤンハマーっぽい。加えて、マイナーの入ったメロディはどこかアジア的な哀愁も漂わせているし、ジェフベックの新境地を感じさせるものでした。この曲は、確かグラミー賞にノミネートされたんじゃなかったでしょうか。そう言った面 で、ジェフベックのキャリアの中で例外的に駄作の誉れ?が高いFLASHというアルバムも、この曲が入っているだけでも価値があると言いいたいくらいです。
こういった優れた曲を聴く度に、やはりヤンハマーという人は天才なのではないかと思ってしまいます。いや、もっと緻密な感じがするので、超秀才といった方がいいのかも。いや。もっと骨太な感じですね。骨太秀才?
こんなことを考える私は、Who else!の中でヤンハマー作の「EVEN ODDS」は、今ひとつです。ん~ヤンハマー的な緊張感やノリの良さが感じられない・・・ロックぽくはありますが・・・。

 話は少しそれますが、ジャズ界で同じようにロックなノリを放ち、ジェフベックと関係の深い人と言えば、真っ先にスタンリークラークがあがってきますが、同じロックンロールマインドでも何かヤンハマーとはノリが違うような気がします。
スタクラは、モダンでスマートなロックンロール、ヤンハマーはより古い50’Sっぽい、良い意味での無骨さ(骨太!)を備えている感じがします。そんなスピリットが「Blue wind」を始めとした横ノリのかっこよさをつくっているんじゃないでしょうか。ジェフベックが異常に「Blue Wind」を好きなのも、そういったスピリットにあふれているからなのかも知れません。そう言えば、交流深そうなのにスタクラとヤンハマーが共演したって、スタクラの1stだけのようです。


 ヤンハマーは、マハビシュヌ時代に一度来日しているようです。その後、1976年の「JEFF BECK with YAN HAMMER GROUP LIVE」としても出ている全米ツアーの後に同じメンバーで来日する予定だったらしいのですが、メンバー間のトラブルで中止となってしまいました。当時は、ヤンハマーが他のメンバーの女に手を出したとか何とかの下世話な理由がささやかれていましたが、真実は知りません。出された方が受けるから悪いんじゃないの???・・・
恋愛論はさておいて、その後、1982年のFLASHツアーでジェフベックと一緒に来日しました。このツアーは、寄せ集め的なメンバーとリハーサル不足のためベックは間違いまくるし、散々な面 もありましたが、ヤンハマーとジェフベックの共演を見れたというだけでも価値のあるツアーでした。確か日本だけしかやらなかったんじゃないかな。軽井沢でのライブはTVでも流れましたしね。この時の映像は、最高にカッコイイでおます。
この時、ヤンハマーはもはやムーグではなくYAMAHAのキーボードを肩からギターのように掛け、さらにネック状になったピッチベンダーで、まさにギターのようにしてギターのようなフレーズを弾いていました。そんじゃ、いっそギターにすればいいのに、などとナナメな思いをよそに、ムーグではないのにムーグのような野太くてでかいヤンハマーな音で驚きましたね。さっすが、ヤンハマー。
最近は何をやっているんでしょう?
また、ノリのいいスリリングなリフを聞かせて欲しいものです。
ヤンハマー、万歳!!!————
(2001.8.22)

*追記(2018)
近年は、病気をされているようですね。2016年ハリウッドボールでのジェフベック50周年ライブには参加して懐かしい曲を演奏していました。

*ヤンハマーin軽井沢(with JEFF BECK)
”キーボードの人も隅の方で座ってばかり居ないで、ステージの真ん中でギンギンやりましょうよ”を実践!

 

 

 

 

 


Drive/jan Hammer
1. Peaceful Sundown 2. Knight Rider 2000 3. Underground
4. Island Dreamer 5. Drive 6. Lucky Jane 7. Up Or Down 8. Curiosity Kills 9. Don’t You Know 10. Coming Back Home 11. Capitol News 12. Nightglow

SESSIONのページでも紹介してますが、えっこれがヤンハマー?イエロージャケッツぢゃないの?と思わせる南国ムード。これ何かのサウンドトラック??? さらにこれにジェフベックが参加しているのでまたまた驚きです。
*Underground

交流が深い割にこれでやっと初参加。参加曲は、2曲だけなのですが、他の曲もジェフベックか?と思わせる見事なギター風フレーズが聴けます。

アタックを効かせた音色がとてもギターっぽい。本当にうまい。しかも、とてもベック的(というよりベックがヤンハマー的なのかも知れないけど、くどいけど)。全編南国ムード満点でBGMとしてもバッチリなアルバムです。2曲ほど下で紹介しているMelodiesの中の曲のインスト版(アレンジは違う)が入っています。1994年のアルバムです。ジェフベック参加曲は、3と5。

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Melodies/Jan Hammer Group
1. Too Much to Lose 2. Peaceful Sundown 3. I Sing 4. Honey 5379 5. Window of Love 6. What It Is 7. Don’t You Know 8. Just for Fun 9. Hyperspace 10. Who Are They? 11. Your Love

1曲目は、JEFF BECKの「There And Back」に収録されているものの歌盤。このアルバムのほかに「Snap Shot」というアルバムにも入っています。全編メロディアスな曲がならび、ヤンハマーが本来志向している音楽性が分かるような気がします。

*Too Much to Lose


Senario/Al DiMeola
1. Mata Hari 2. African Night 3. Island Dreamer 4. Scenario 5. Sequencer 6. Cachaca 7. Hypnotic Conviction 8. Calliope 9. Scoundrel
「There And Back」のちょっと後ぐらいに出たアルバムで1曲目が、あららこりゃStarcycleのバリエーションじゃん、と思ったんですが、しかし、バリエーションを超えたかっこよさがある。さすがヤンハマー。また、そのシーケンサーっぽいバッグにのっかってくる、アルディメオラのソロがカッコイイ。超一流は何をやってもすごいですなあ。他の曲では、思わずブルーウインドのフレーズが・・・。
*Blue Wind?(笑)

*Star Cycle?(笑)

 

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THE JOY OF FLYING/TONY WILLIAMS
1)GOING FAR 2)HIP SKIP 3)HITTIN’ ON 6 4)OPEN FIRE5)TONY 6)ERIS 7)COMING BACK HOME 8)MORGAN’S MOTION

トニーウイリアムスを聴こうと思ったらどこかで聴いたようなシンセが聞こえる、と思ったらヤンハマーでした。相変わらずヤンハマーなノリでうれしくなってしまったという覚えのあるアルバム。もうかなり前のものですが。トニーウイリアムスは、サイモンフィリップスが師のように尊敬しているらしい凄腕ドラマー。マハビシュヌを結成する前のジョンマクラフリンが参加していたライフタイムのドラマーでもあり、ジャズフェスティバルなどで何度も来日しています。でも、お亡くなりになりました。


Spectrum
1. Quadrant 4 2. Searching for the Right Door/Spectrum 3. Anxiety/Taurian Matador 4. Stratus 5. To the Women in My Life/Le Lis 6. Snoopy’s Search/Red Baron

これはロックとジャズの融合(当時はクロスオーバーと言われていた)した音楽として有名なアルバム。ジェフベックがBBAのツアー中にずっと聞いていて、Blow By Blowのモチーフにもなったと言われているビリーコブハムのアルバムです。若き日の故トミーボーリンが参加して話題にもなりました。ジェフベックがBlow By Blowをつくるモチーフになったと言われているアルバムで、BBAの頃にこれをカセットテープに入れてよく聴いていたそうです。
Quadrant 4は、サイモンフィリップスはSpace Boogieのモチーフになったと言っています。
また、Stratusは、ジェフベックが2005年頃からよくレパートリーにしていました。(2023.2.17追記)


Inner Mounting Flame /Mahabishunu orchestra
1. Meeting Of The Spirits2. Dawn 3. Noonward Race 4. A Lotus On Irish Streams 5. Vital Transformation 6. The Dance Of Maya 7. You Know, You Know 8. Awakening

ヤンハマーが参加しているマハビシュヌオーケストラのアルバム。You Know, You Knowは、ジェフベックも一時期ライブでやっていました。

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