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Jeff Beck Group

01 Ice Cream Cakes
02 Glad All Over
03 Tonight I’ll Be Staying Here With You
04 Sugar Cane
05 I Can’t Give Back The Love I Feel For You
06 Going Down
07 I Got To Have A Song
08 Highways
09 Definitely Maybe

1972年4月リリース

<メンバー>
Jeff Beck:Guitar
Bobby Tench:Vocal
Max Middleton:Piano
Clive Chaman:Bass
Cozy Powell:Drums
Steve Cropper:Producer

スティーブクロッパーにプロデュースを依頼し、前作よりクオリティが高くなった第二期の2枚目。カバー曲もあり、モータウン色の強いこの時期の代表作。

ベックは本当は、この路線が一番好きなのではないかと思います。1975年のソロ以降は、一緒にやるミュージシャンによってサウンドが組み立てられているところがあるので、あまりこういった黒っぽさは出ていませんが、ベックのギターの生理的で表情豊かなところは、こんな感じのサウンドが一番生きるのではないかと思います。私がプロデューサーなら、いいボーカリスト(ここ重要ですが。例えばジェス・ローデンみたいなやつ)を見つけてもう一度ファンクグルーブのあるアルバムをつくらせたい、そう思います。

ライナーノーツによると前作は自分でプロデュースもやったので大変だったし、結果的に不完全なものになってしまった(それで自戒の意味も込めてRough And Readyか?)ので本作は、あのメンフィスサウンドの御大スティーブクロッパーをプロデューサーに迎えたということです。

マックスミドルトンによると、スティーブクロッパーは計画的に物事を進めるタイプで前作のベックとは正反対になったそうです。ただ、そこにベックを従わせるというか押し込むのには苦労したそうです。しかし、結果的にはやはり上手く行ったとインタビューで言っていました。この時期スティーブクロッパーは独立してスタジオを持ったそうで張り切っていたのではないでしょうか。

通称オレンジと言われるこのアルバム。どうしてオレンジがのっているのでしょうか。デザイナーの気まぐれか、サウンドの印象がオレンジなのか。そうだとしたら、分からないでもないけど。印象的なデザインではあります。実はとても気に入っていたりします。

Blow By Blowの兆候。

このアルバムのサウンドは、確実にブローバイブローにつながっています。間にBBAが入ったので、ちょっとハードロックへ寄り道した感がありますが(BBAにしてもライブではとてもファンキーでジャジー。ハードロック的エナジーを取り除けば、ファンクバンドです)、ここでのインストの展開やモータウン的な曲調、ブライトで透明感のあるトーン。そして、やはりおそらくマックスミドルトンによるジャズ的なサウンドメイキングはブローバイブローへ続くサウンドのベースとなっていると思います。そう考えるとBBAは、本当に、果たせなかった思いを遂げたが(あるいは契約の事情か)、時すでに遅しといった感じがしますね、好きだけど。このアルバム、前作とのサウンド的な違いは全くと言っていいほどないですが、楽曲が良く、パフォーマンスが多少いいかもしれません。でも、あくまで前作の延長線、あるいはバリエーションという感じです 。
この時期のサウンドは、ストラトキャスターなくしてはあり得ないものです。トレモロアームの効果的な使い方など、ベック自身にストラトキャスターがなじんだ時期なのではないでしょうか。

*関連記事:このアルバム発売直後のインタビュー
*関連記事:第二期ジェフベックグループ啓蒙投稿


各曲紹介

Ice Cream cakes
この曲は、第二期を代表する曲のひとつです。怪しい感じの曲調、かっこいいリフ、本当にクールな曲です。ギターも非常に感覚的でジェフベックならではの演奏です。特にサビの部分のブレイクでのトリッキーなギターがすごいですね。故コージーパウエルのドラムも冴えています。

Glad All Over
R&B色の強い曲で、この曲での聴きどころは、マメに刻んでいるサイドギターです。もちろんソロもウィットの効いたベックならではのソロです。リフもベックの得意のパターン(「Rice pudding」、「You Know what’s I mean」、「El beckko」、「Saboy」などにも似たリフが登場する)。Charが初期のライブで、「空模様の加減が悪くなる前に」をこのリフのパターンでやっていました。

Tonight I’ll Been Staying Hear With You
この曲もR&Bっぽいバラード。サイドギターが、ウン、ウン、チャッ、と刻むスティブクロパー的な演奏ですが、第一期の「Olman River」の流れにある曲です。スライドによるオブリガードやソロがとても表情豊かで、特にエンディングのフィンガーリングトリルからアーミングダウンしてドミナントのルート音に持っていって終わる流れはなかなか他のギタリストにはできない芸当(発想)です。ライブでは、BBAの中期まで演奏されていたみたいです。私的にもこの曲は非常に好きな曲です。

Suger Cane
ちょっと異質な印象を受ける曲ですが、演奏はなかなか個性的で、特にワウワウの技が逸品です。
この曲はライブではやらなかったようです。

I Can’t Give Back The Love I Fell For You
こんなポップな曲をしかもインストルメンタルでやろうという発想は、どういうところからくるのでしょうか。ボブテンチというボーカルがいるのにね。確かにベンチャーズや寺内タケシ的なかっこよさのある演奏です。

*追記:第二期ジェフベックグループは、最初にコージーだけが決まっていて、その段階でモータウンにセッションに行っています。インストルメンタルばかり10曲ほど録音したらしいのですが、文化や考え方の相違などがあり、散々な結果だったそうで、とても満足のいく内容にはならなかったようですが、そのうちの1曲がこの曲だったそうです。もちろん、アルバムのは第二期メンバーで録音されたものですが。モータウンセッションのテープは、当時のマネージャーだったミッキーモストが持っているらしく、後にボックスセットのBeckologyが企画されたときに中に入れる話もあったと、ミッキーモスト自身がコメントしていました(2020.7月)

Going Down
第二期を代表する曲その2です。オリジナルはドンニックス。イギリスのチキンシャックやジョンメイオール、フレディキングもやっていました。トリッキーギターが冴え渡る演奏で、ベックフレーズのオンパレード。当時としてはトリッキーギターのニューベーシック的な演奏となったのではないかと思います。イントロのピアノが非常にかっこよく、ライブではたいがいマックスミドルトンのピアノソロからメドレーで演奏されていました。
この曲は晩年までアンコールなどでよく演奏されていました。ベック自身気に入っていたんでしょうね。

I Gotta Have A Song
モータウン色の強いこの曲は、やはりスティービーワンダーのオリジナル。この頃、スティービーの「トーキングブック」に参加したりで親交が深まり、その流れで「Superstion」をもらったり(その後トラブルネタになりましたが)、トーキングモジュレーターをもらったり、ということがあったようです。演奏の方は、サイドギターがとても美しく味があります。ソロは、ん~、もうちょっとメロディアスな方が良かったという気がします。BBAの後期にモータウンぽい曲をやっていますが、そちらの方では実に美しいソロが聴けます。

Highways
この曲は結構地味な曲なのですが、私はこの演奏が超ベリー好きです。はっきり言ってリードギターは、どうってことありません。特にサイドギターを聴いてください。コードワークや刻みをこちょこちょやっているのが、実に味わいがあるのです。ベックならではの「本人も二度とできない」抜群のタイミングとコードワーク。楽曲も独特のコード進行をし、独特のノスタルジーのある曲で、ボブテンチのボーカルもいい感じです。

しかし、発売当時、イギリスの評論家からは酷評されていたそうです。ソロが特に秀逸ではないからでしょうか。それが理由かどうか分かりませんが、この曲はライブでは演奏されたことがないようです。どの海賊盤を聞いてもありません。残念です。

Definitely Maybe
スライドのハーモニーが非常に美しい、この曲も代表曲です。ブローバイブローツアーの頃まで演奏されていたので、ベックスタンダードと言えます。本当はこの曲、もっと前奏があったそうですが、複雑なためにベック自身がうまくできなくて、この長さに切ったという話を聞いたことがあります(LP盤に入らないから切られたという説もあり)。オンマイクでとっているからか、ワウワウのノイズが聴こえて、ちょっとライブな感じです。


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