?> 2000年 JAPAN TOUR | ジェフベックの茶飲み話サイト。

2000年 JAPAN TOUR

前回とほぼ同じメンバーで、CDと同じような無難な演奏。
ひとつもヘンなところがない。もっと、危ない橋渡ってくれ~!

CD発売直後に前回とほぼ同じメンバーでやってきました。こんなにすぐに来るとは誰が予想していたでしょう。いやいや、予想していた人は、私を含め意外と多かったかも知れません。おまけに全国11箇所。結構やりました。
内容は、やはりニューアルバムの曲をメインに前回のアルバムからは意外と少なく、その分昔の曲が多かったかな。そうでもないか?中でもライスプディング(さわりだけでしたが)にはちょっと感激しました。スターサイクル、バンプなど、懐かしくおなじみのナンバー。そして、アンコールはブルーウインド。好きだね~この曲。1970年代からずっとやってます。よっぽど気に入っているんでしょうね。レッドブーツや哀しみの~はやりませんでした。待っていた人は残念でしたね。でも、あのメンバーではレッドブーツ面 白くないでしょうね。前回もどうってことなかったから。ドラムが、いい人が来ないとああいった曲は無理でしょうね。You never knowは結構よかったかな。前回の大阪公演ではベース君が風邪のため絶不調でイマイチだったけど、今回は良かった。そういえば、ドラムソロはなかったですね。全般 的にライブとしては、きっちり演奏していたし、別に悪いってことはないのかも知れませんが、私は釈然としませんでした。
ジェフベック自身は妙にはしゃいでいたし、バックメンバーとも仲良さそうに見えましたが、全般 的に無難にこなしたという感が否めません。前回もそうだったけど、ジェフベックどうしちゃったんでしょうかね。TVにも出演して(TV朝日ニュースステーション)盛り上がっていたのに、なんか、大したすごいこともなく、ただ律儀に高度なギター演奏をくりひろげただけ。ある程度予想していたとは言え、ちょっと、がっかりの来日公演でした。ま、本人を見れるというだけで嬉しいのは嬉しいんだけど、それも前回だけでいい。こんな公演するんだったら、来なくていいぜ。いや、やっぱりちょっと来て欲しいかも。

  私は、2回の大阪公演(12月10日、11日)に行ったのですが、演奏する曲も同じ演奏の内容もほぼ同じ。新しい曲等のアレンジもCDと同じ。ほんとに、ただ本人がそこで実際に弾いているという価値だけのライブだと言っても華厳の滝ではありません。
な~んかね~、おじいちゃんが前で一生懸命弾きまくっていて、まわりで孫たちが「おじいちゃん、がんばりやー」といって見守っている。そんな感じでした、最低~。えっ、なんと申しましょうか、鳳啓介でございます、ポテチン!!面 白くもなんともないじゃないっすか。なんか、驚かせて、感動させてよ。
そりゃ、ジェフベックのやっていること自体は、とんでもなく高度で、ギターの音色は本当に美しい。あんなにクリヤで伸びやかな音を出せるギタリストはいません。Where ware youなんかは、その良さが最大限に出ていましたね。これだけは良かった。それに、さらにギターがうまくなっていて、ミストーンが本当に少なくなった。でも、裏を返せば、それだけ実験的な危ない橋を渡っていないということも言える。だから、つまらんのですね。もう歳だからそうなのか???と思うけど、NEW CD「You Had It Coming」を聴けばまだまだ、とんがっております。やはり、これは、やはり来日メンバーが良くないということに尽きる気がします。
あのメンバーじゃ、バトルはできないですね。あんなにおとなしくちゃ。なんか、もうちょっと工夫して叩けないのでしょうか、あのドラマーは。リハーサル不足なのかも知れないけど。いや、それは関係ないなやっぱり。フラッシュツアーの時はリハーサル不足で、演奏はガタガタだったのに、驚きと感動がいっぱいありました。とにかく、ジェフベックの音楽は、ジェフベック一人が頑張っても面 白くない。みんなで危ない橋を渡ろう。危ない橋を渡る緊張感が、とんでもなく素晴らしいフレーズの数々を生み出すのです。安全パイとるのなら、ブルースにしてくれ!(って「Rollin’ and Tumblin’」も、ライブはもうひとつだったぞ!)

昔話をしても仕方がないけど、昔は、もうドラムがなり始めるだけで、鳥肌がたったぞ。 そこにまたベックのギターが変な所から来て、ぶっ飛ばされっぱなしだったぞ。今回のは本当にヘンなところがない。なんかヘンなところが病みつきになるジェフベックのツボなのに、そのツボがないから、指圧の先生は困ってしまってるぞ。

来日直前にドラマーが前回とは違うらしいという情報を聴いて結構期待していたんですが、見事に裏切られました。ドラマーが交代したのは、昨年の君が病気で来れなくなり、代わりにおんなじような君が来ただけでした。 ロイズトイなんか、サイモンフリップスだったらメチャメチャかっこいいと思いますね。 どうして、こんなにも不毛なメンバーを連れてくるのでしょう。やっぱり、雇うお金がないのかな。
サイモンフィリップス(彼は今TOTOの正式メンバーだから仕方がないけど)やテリーボジオなんて国際超A級ミュージシャンだから、さぞかしお高いんだろうね。それに、ボジオには、さんざん録音してだまって没にしたという経緯があるので、嫌われているんだろうね。しかし、来日メンバー、ちょっとひどすぎないか、ベックにしては。ジェニファーサンも前回期待値は大きかったんですが、あまり変わり映えしませんね。特に色気のあるギターを弾くってワケでもないし。あのMIDIギターですごいことやらかしてくれたら、また楽しみ増えたんですけどね。

それにジェフベックのおっちゃん、ちょっと従来的ではないことにこだわりすぎていないでしょうか。ジェフベックのギターは弾き方(表現のアプローチというか)自体が、特異なので、スタイルは従来的でも、どこかにあるようには絶対にならないとおもうべな。あの変態フレーズ、変態音、それらが妙にカラダのどこかをくすぐってくれるあの快感は、今の演奏にはないですね。むしろ、セッションで入っている他人のCDの方にあったりするから情けない。
他人のだと無責任に好きなようにやれる(一般的には逆にやれないと思うけど)からかも知れません。ヤンハマーのアルバムでのギターなんか、弾き方自体は今のスタイルなのにリラックスして、得意のフレーズや擬音か分からない音と微妙な音程のコントロールで実に心地よい緊張感を与えてくれます。

もう楽器同志でバトルをやる時代じゃないよという気持ちなのかも知れないけど、新しい音楽を追究しながら、ジャズみたいにバトルライブをやってもいいんじゃないかと思います。ジェフベックのギターの本質は、「ジャズ的な偶発性の妙」だと思いますね、昔から。むしろ、昔は歌バンドでそういったことをやっていたことが、新しかった。 だから、その部分は古いとか新しいとかではなく普遍的な魅力だと思います。ジャズのインプロビゼーションが古くて面 白くないかと言えば、すごいメンバーでのセッションは、やはり鳥肌モノなわけですね。だから、音楽のスタイルとは別 のところで、そういった本質的な部分は続けていって欲しいですね。

やはり迷っているのか?
ロックという音楽の中で、ギターの占める役割は極めて重要でした。元々ロックというものの本質は、若い世代が固有する未知故の破壊衝動がエネルギーの源だと思いますが、ギターという、いい加減な分だけ自由度が高く未知の可能性の大きい楽器が、それを体現するのにはピッタリだったのですね。特にディストーションのかかった、要するに歪んだ音は、まさに破壊そのもの。ロック=歪んだギターの音。これは今でもそうなんじゃないでしょうか。
で、ロックギターは歪んだギターを中心に据えたハードロックというものを中心に、今まで考えもできなかったような音楽が生まれたロック黎明期を経て、ジャズとの歩み寄りによるフュージョンの時代に移ります。 しかし、そこでもまだ、ギターは縦横無尽に音楽をクリエイトするポジションにいました。音楽がまだまだ、聴く、鑑賞するものだったからだと思います。
jeff beckを取り巻く状況があやしくなるのは80年代中盤ぐらいからじゃないでしょうか。 ダンスミュージックの台頭です。80年代初頭、NYに起こったヒップホップカルチャーをモチーフとする映画フラッシュダンスのヒット共に、ラップ、スクラッチなど、従来になかった衝撃的なダンスミュージックが紹介されました。特にトーストがら発展したと言われるスクラッチは、衝撃的。これは新しい演奏といっても過言ではない。従来、ギターやその他の「楽器」で行っていた偶発性の面 白さを、なんとレコード盤でやってしまうという、私はもう本当に感動しまくりまして、NYのDJたちが来日したときに見に行きましたね。その後少し間をおいて85年頃にRUN DMC(walk this way格好良かった。スティブンタイラーも)が出てきてヒップホップが本格的に浸透し出しました。これ以降、クラブだなんだとダンスミュージックがメインストリートで活躍します。音楽がリズム的グルーブ重視に移ってきました。
そこでは、もうギターは「リズムとしてのグルーブ」の1構成要素でしかなく、どんなに素晴らしいギターソロをしたところで、誰もそんなものは聴いてはいません。それよりも、ビートとファッションによる覚醒願望を満足させたい。テクノなどもその極地かもしれませんね。 最も従来的ロックだって、昔からビートやファッションとは密接なのですが、ダンスミュージックの時代になると、スタイルやテイストといった微妙な差によって聞き分けられていくように成ったような気がします。ある意味で、非常にファッション的と言えるかも知れません。 ロック全体もある種の飽和状態だったのでしょう。ロックは、60年代~70年代で生まれ、その方法論が完成されてしまったと私は思っているのですが、それ以降は、もう全く新しいアイデアなんて出てこない。すべて、前人の亜流でしかやりようがなくなった、ロックの成熟時期に入ったのだと思います。
ZEP、CREAM、ピンクフロイド、ELP、ドゥービー、オールマン・・・黎明期の人は、方法論がそれぞれ決定的に違っていました。成熟期では、ベースとしてはすでに登場しているスタイルを踏襲しながら新しいものを付加していくという方法しかないわけですね。バンヘイレンなどは、そういった時期にも衝撃的な方法を見せてくれましたが、音楽としてはハ-ドロックというすでにあるスタイルです。そういった状況が進行する中で、JEFF BECKはギターだけで黎明期から決定的に違う方法論を提示してきただけに、自分自身のしかしロックというものの普遍的でしかたがない行き詰まり(リンゴはどう料理してもリンゴでしかないみたいな)をうち破る決定的な方法論が見つからないことで、ある部分もうギターを弾くのがイヤになってきていたのではないかと思います。

~余談:方法論の確立という面でJEFF BECKがすごいと思うのは、クラプトン、ジミヘンほかのギタリストはその後継者、平たくいえば「モドキ」がいろいろ出てきましたが、JEFF BECKだけはそういう人がいない。これはJEFF BECKのギターの方法論が、他と全く異なるものだということでしょうね。そういう意味では未だに、「新しい」のだと思います。~

「FLASH」の中途半端さは、それらのある意味で時代の流れを作ってきたジェフベックが、迷いの中で今度は時代の流れに迎合してしまったことによるものでしょうね。 その後の「GUITAR SHOP」は、そのタイトルに思いが込められているのかどうかは分かりませんが、そういった時代に流れのなかでもギターがギターとして存在することに挑戦した1枚なのかも知れません。そこでは、フュージョンとは異なる楽曲やダンス的バックグランドの中で、まだ自由度の高い楽器としてのギターによる偶発性の魅力が輝いています。しかし、そういったものは、セールスとしては成功しなかったみたいで、それもあってか、その後JEFF BECKは10年もアルバムをだすことをやめてしまい、「90年代の音楽にはギターミュージックは必要ない」というような開き直りにも思えるようなことを言いながら、アイデンティティに影響の少ないセッション活動等でお茶を濁すようになりました。
こういった流れを考えるとジェフベックは、やはり自分がストリートのメインで居続けなければイヤなのかも知れませんね。しかし、今は昔と違って、今はどんな分野でも多様化し、選択肢がたくさんあるので、何かが長期に渡って圧倒的な存在になるということは起こりにくいのですね、構造的に。ポップスでメガヒットが出たとしてもよく持って3カ月くらいでしょう。
社会全体がそういう成熟期に入っている(世界的な不況傾向もそういったものの一環)なのだから、ジェフベックがずっとメインでい続けるなんて目指す必要もないと思うんですけどね。 重要な選択肢のひとつであればいいんだと思います。 そのためには新しい事へ挑戦しながら、完成された自分のスタイルでの「ジャズ的な」ギターミュージックも続けていくことでいいんじゃないの。スティーブルカサーのプロデュースで録音し、リカサーにも無断で没にしたアルバムなんて、そういうものだったんだろうと思います。

など と、あれこれ考えはしますが、いいミュージシャンと一緒なら、一発解決ってことでしょう。シンプル!
やっぱり、雇う金がなかったのかな・・・。

2000.12.24

※大阪公演のセットリスト、パンフレット写真、追って載せます