?> Jeff Beck & Johnny Depp「18」 | ジェフベックの茶飲み話サイト。

Jeff Beck & Johnny Depp「18」

01. Midnight Walker / ミッドナイト・ウォーカー (デイヴィ・スピラーン・カヴァー)
02. Death And Resurrection Show / ザ・デス&リザレクション・ショウ (キリング・ジョーク・カヴァー)
03. Time / 安らぎの時 (デニス・ウィルソン・カヴァー)
04. Sad Motherfuckin’ Parade / サッド・マザーファッキン・パレード (ジョニー・デップ・オリジナル)
05. Don’t Talk (Put Your Head On My Shoulder) / ドント・トーク (ビーチ・ボーイズ・カヴァー)
06. This Is A Song For Miss Heady Lamarr / ミス・ヘディ・ラマーに捧げる歌 (ジョニー・デップ・オリジナル)
07. Caroline, No / キャロライン・ノー (ビーチ・ボーイズ・カヴァー)
08. Ooo Baby Baby / ウー・ベイビー・ベイビー (ザ・ミラクルズ・カヴァー)
09. What’s Going On / ホワッツ・ゴーイン・オン (マーヴィン・ゲイ・カヴァー)
10. Venus In Furs / 毛皮のヴィーナス (ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・カヴァー)
11. Let It Be Me / レット・イット・ビー・ミー (エヴァリー・ブラザーズ・カヴァー)
12. Stars / スターズ (ジャニス・イアン・カヴァー)
13. Isolation / 孤独 (ジョン・レノン・カヴァー)

2022年7月発売。ジェフベックももう78歳です。ジェフベックもすっかりおじいちゃんになってしまいました。そして18歳というアルバム(笑)????

Amazonで注文する際に、日本盤には特典と日本語の解説がついているからと日本盤を注文したつもりが、洋盤を注文していたという老いるショックに目眩をしながら(笑)少し遅れて手にしました。
洋盤は簡素な紙ジャケ。流行ってるんでしょうか。そういえばこのアルバムはLPレコードでも出ています。海外はCDよりLPの生産量が多いとか。面白い現象ですね。

ジャケットの絵は奥様のサンドラさんが描かれたそうです。どうよ(笑)アルバムについてジェフベックから次のような説明があります(From Official Site)。「ジョニーと私が一緒に演奏し始めたとき、それは私たちの若々しい精神と創造性に本当に火をつけました。 18歳をもう一度感じたので、それがアルバムのタイトルにもなりました。」
ということで、「Flash」以来の駄作かという評価もあるようですが(笑)、そもそもそういう趣向のアルバムではないんだと思います。記念アルバムに近い感じでしょうかね。このアルバムは好みが分かれるのではないのでしょうか。
そういえば、2000年頃に昔憧れたロカビリーの完コピのアルバムを出して大ひんしゅくを買ったこともありました(笑)

ジョニーデップとは2016年に日本でジェフベックの楽屋にジョニーが訪ねていったのが出会いだとか。ジョニーは俳優になる前にロックバンドをしていたそうなので、彼にとってのジェフベックはあこがれだったでしょうね。楽屋で話すと音楽と車の趣味があい、それで親しくなったら彼の音楽の才能にほれ込んだ的な説明がありますが、ホントかなぁ?(笑)

友だちになったのは本当でしょうが、マネージャーから「デップと何かやれ、お金になる」とか言われたのではないでしょうか(笑)。いやいや完全に憶測ですが。でも実際、お金にはなるでしょう。偶然なのか、先行して開始したツアーに合わせるかのようにデップの元奥様との裁判の話題が駆け巡りました。
話題性も人気も抜群、コンサートに人は集まりますよね。デップだから。そりゃまあ、ジェフベックだけでもそこそこ集まるでしょうが。でも、デップのファンが、ジェフベックとのコンサートをどう感じたかは不明です(笑)ましてや、このアルバムを気に入るかも不明です(笑)

そんなこんなで、でもまあ、デップに会ってなんらか新鮮な気持ちになって18の頃の気持ちに戻ってみたくなったというのは分かる気がします。散々いろいろなことに取り組んできたから、より原点に近いものにもう一度戻りたくなると言うのは誰しもある。
以前85歳の日本人画家がTVで話していましたが、その方は、ずっとプロとして前衛的な絵を描いて来られたのですが、最近はスパーリアルばかり描いていると。その理由について「子供の頃に絵を描くのが楽しくて仕方なかった頃、とにかくものを忠実に絵で再現するのが楽しかった。いま、この歳になってまたそれが楽しくて仕方がない。人間は、物心ついたときに楽しかったことが、歳を重ねてもやっぱり楽しいのだ」と話していました。

このアルバムは、まさにそう言うものなのかななんて思ったりします。デップに出会って、音楽的にどうのこうのと言うより、その新鮮な刺激を与えてくれたことでアルバムにしてみようと思ったのではないでしょうか。
だから、このアルバムの音楽性について云々するのはきっと的外れなのでしょう。収録曲の中には、ジェフベック自身が下手なドラム(笑)を叩いているのがありますが、そういうお遊びも含めて18歳ということなのだと思います。

ジェフベックの18歳というとトリデンツに加入する前くらいかな。アートスクールをやめて自動車工場で働いていた頃かな(不正確)。音楽をやり始めて楽しかった頃の空気を取り戻したい。そんな思いなのかも知れません。そういえば、イチロー選手も引退後に話していました。今が一番楽しく野球をやっているって。昔、草野球をしていた時の楽しさだって。

なので、ざっと聴くと特別面白い試みもなく、うまくまとめた感がありますが、先のような背景を思いながら聴くともっと楽しめるかも知れませんね。オールディズ的なナンバーが多いのも頷けます。日本版についているジェフベックの説明もそういう感じの内容が多いです。

ただ、私のような昔からのファンが、自分が求めるジェフベックの魅力がどれだけ出ているのかと言えば、半分も出ていないのではないかという気はします。しかし、自分が思う魅力とは過去も含めてなので、ジェフベックの今、というのはこれだという事で良いのだと思います。

昔からのファンは、どうしても過去の脂がのっていた時期のジェフベックのスリリングなギターが忘れられないのです。「この世にこのようなギターの弾き方があるのか!」と感動したことをいつまでも引きずってしまいます。そこは捨てなければならない(笑)根本的に音楽スタイルも違いますしね。

ギタープレイに関しては、いつものパターンだねえと言うのは多々あるにしても、こういうサウンドはやはり独特だと思います。バックグランドは他にあってもそこにベックの独特のギターが載っかると独特の世界になります。そこはやはりすごいものです。そういうベックのギターのマインドやタッチは昔から変わっていません。

とはいえやはり、独特のフレージングやバッキング、絶妙の瞬間芸などをもっと盛り込んで欲しかったとも思います。これって、いつもそうなのかも知れませんが、1テイクか2テイクくらいで録ってしまったのではないのでしょうか。もう少し、アレンジや楽曲を練って、考えてから弾いてくれれば良かったのに〜なんて思ってしまいますが、なんせ18だしね。
その適当さもジェフベックの良さだし、78歳のおじいちゃんにそこまで望むのは酷でしょうと納得してしまいます。それに18というコンセプトだから素朴に作りたかったというのもあるかも知れません。なお、日本盤には、ジェフベックによる各曲の説明がついています。それには、録音の様子なども楽しそうに書かれています。なんで洋盤にはついてないのだろう?

これくらいでいいやん、いつものように適当に重ねられたギターが何本か入っているし(この適当さが良いのですが)、独特のヘビメタ的質量感(音が歪んでいるという意味ではない)のリフもあるし、ギターなのか何なのか分からない音色だし、合っているのか合っていないのか分からないメロディ弾くし、それだけで充分ジェフベックを堪能できるのだから。と、自らを説得(笑) こう思っていても、だんだん好きになることもあるんですよね。ないこともありますが(笑)

ただ5年後にこの中から何曲やっているかと言えばほとんどやっていないんじゃないかという気はします。そもそも5年後(83歳)にコンサートをやっているかどうかという問題もありますが。これ、デップとの出会い記念アルバムのようなものだと思いますしね。ひととき、これをやればそれでいいんです。

なんせ、ハリウッドの大スター、ジョニーデップとのコラボなので話題性もあるし、コンサートの集客も良いでしょう(デップのファンはあれ?って感じかも知れませんが)。ジョニーデップの歌は好き嫌いが分かれるでしょうね。個人的には、なんとも感じない歌(まあまあ嫌い 笑)ですが。

アルバムタイトルが「Jeff Beck & Johnny Depp 」ということは、Johnny Deppのアルバムでもあるということですね。そうかそうか、そういうことか。ならば、仕方がないですね(苦笑)。このアルバムは、つまみ聴きするより頭から順に聴く方がより良さが分かるのかも知れません。

デップファンの人が、このアルバムで初めてジェフベックを知ったとしたら、それは良い事なのかどうか分かりません(笑)が、多彩な楽曲によって某か興味を持ち、過去のアルバムを聴いて、あれ?おっ!などとジェフベックの本来の魅力に触れることがあればそれは良い事ですね〜。
ぜひジェフベックが20代〜30代の脂ののっていた時代のアルバムを聴いて欲しいですね。第二期ジェフベックグループなんて、プリンスがやっていたことを先んじてやっていたようなところもありますしね。


各曲紹介

01. Midnight Walker / ミッドナイト・ウォーカー (デイヴィ・スピラーン・カヴァー)
いつものパターンのインストで、特別カッコイイとは思わないけど、オー来た来たという感じはあります。こういうのを聞くと、意外にと言えるのかどうか分かりませんが、ベックのギターの音はチェロの音色と相性が良いのだ(寄せているのはあるだろうけど)と思います。

02. Death And Resurrection Show / ザ・デス&リザレクション・ショウ (キリング・ジョーク・カヴァー)
この曲がアルバムの中で一番ジェフベックっぽいかなぁと感じます。終わり頃におおっと思わせるギターソロがありますが、すぐに消えてしまいます。もうちょっと弾いてくれないと。

03. Time / 安らぎの時 (デニス・ウィルソン・カヴァー)
ジョニーデップの歌は個人的にあまり好きになれそうもない。ソロはいかにもって感じだけど、まあそつなくこなした感。

04. Sad Motherfuckin’ Parade / サッド・マザーファッキン・パレード (ジョニー・デップ・オリジナル)
久しぶりに合いの手的なギターが聴けるのは新鮮です。ある面、「Guitar Shop」的な手法のサウンドコラージュのように弾くギターはジェフベックの特徴が出やすいと思います。でも、もうちょっと瞬発力のある瞬間芸を見せて欲しかったけど、いやいや78歳なのだから。森光子さんが舞台ででんぐり返しをした歳より3つも上なのだから。

05. Don’t Talk (Put Your Head On My Shoulder) / ドント・トーク (ビーチ・ボーイズ・カヴァー)
こういうの好きです。ジェフベックも好きなのでしょうね。オールディズというかロカビリーというか、そういうトロンと甘く懐かしい空気感がベックには似合っていると思います。以前のイメルダメイ(イメルダメイは髪型を変えて別人のようになっている)がロカビリーを歌い出しそうなムード。ジェフベックもこういうのをやると若き日を思い出して、ときめきを取り戻すのかも知れません。

06. This Is A Song For Miss Heady Lamarr / ミス・ヘディ・ラマーに捧げる歌 (ジョニー・デップ・オリジナル)
だめだ、個人的にはどうでも良い歌(笑)ジェフベックはそれなりにそつなくまとめていますが。

07. Caroline, No / キャロライン・ノー (ビーチ・ボーイズ・カヴァー)
こういうギターの載り方というか音色は好きなのです。心地よい。例のパターンと言えばそれまでですが、心地良いパターンです。なかなかこういう音色出せません。

08. Ooo Baby Baby / ウー・ベイビー・ベイビー (ザ・ミラクルズ・カヴァー)
これもソウルの名曲ですね。こういうのをインストでやるのがジェフベックは好きだねえ。でもやはり歌があった方がよいのではないのかと思ってしまうのは、なにかもうひと工夫欲しいやんって。でも、何度も聞くと味が分かって好きになるパターンのようにも思います。まったりと流れている感じは良いですね〜。ドラムはジェフベックが叩いているそうです。道理でイマイチと思った(笑)打ち込みでやった方が良かったんじゃないか?歌はデップだそう。へぇ〜

09. What’s Going On / ホワッツ・ゴーイン・オン (マーヴィン・ゲイ・カヴァー)
もうセッションで何度やったでしょうという巷のソウル系セッションの定番中の定番曲で、ジェフベックがどういう風にやるのかと興味が湧きましたが意外とあっさり。もうちょっと工夫してよって(笑)この曲自体が、なんかジェフベックと合わない気がするけど、なんで入れたんでしょう?って疑問がふつふつ。

10. Venus In Furs / 毛皮のヴィーナス (ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・カヴァー)
この手の少しおどろおどろしい感じがジェフベックは好きなんだろう。古くはGuitar shopのBig Blockのさびの所もそんな感じですしね。ほかにもそういうのがしばしば出てきます。ジェフベックのギターとは合っている感じがします。

11. Let It Be Me / レット・イット・ビー・ミー (エヴァリー・ブラザーズ・カヴァー)
好みによるのでしょうが、こういうのは全然入ってきません(笑)デップの歌が私の好みでないからでしょう。

12. Stars / スターズ (ジャニス・イアン・カヴァー)
ジャニスイアンと言えば、名曲Will You Dance?の作者です。日本でも大ヒットしました。「岸辺のアルバム」というドラマのテーマ曲にもなり、当時の時代背景から非常に話題になりました。ジェフベックと全然関係ない情報でした(笑)
そのジャニスイアンとやはり聞き比べてしまいますが、オリジナルの方が遙かに良いと思ってしまうのは、やはりデップの歌でしょう。これ、イメルダメイとかジョスストーンとかそういう人が歌っていたら、良かったに違いないと個人的には思ってしまいます。

13. Isolation / 孤独 (ジョン・レノン・カヴァー)
やはり個人的に好きになれない。デップの歌っている曲は全部好きになれない(笑)曲の展開自体はカッコイイと思うのですが。