?> Beck Bogart & Appice | ジェフベックの茶飲み話サイト。

Beck Bogart & Appice

01 Black Cat Moan
02 Lady
03 Oh To Love You
04 Superstition
05 Sweet Sweet Surrender
06 Why Should I Care About You
07 Lose Myself With You
08 Livin’ Alone
09 I’m So Proud

1973年2月リリース

<メンバー>
Jeff Beck:ギター、コーラス(一部ボーカルも)
Tim Bogert:ベース/ボーカル、コーラス
Carmine Appice:ドラムス/ボーカル、コーラス

Don Nix:プロデューサー

第一期と第二期の両方の延長線が交錯しているから、不完全燃焼か?しかし、文句なしにカッコイイ。

結成の経緯。

第一期ジェフベックグループ解散後にバニラファッジにいた2人がコカコーラCMの仕事に以前から注目していたジェフベックを招き仲良くなったそうです。ロッドスチューアートを食えあえて4人でバンドを作るつもりでしたが、ロッドはフェイセズに加入し、ジェフベックは交通事故にあって入院してしまうと言うアクシデントに見舞われます。
バニラファッジの2人は仕方なくカクタスを結成してしまいます。
その後、1972年の5月に第二期ジェフベックグループがスティービーワンダーとN.Yでセッションを行うことになり、N.Yのエレクトリックレディスタジオ(ジミヘンが作ったスタジオ)へ行ったら、たまたまそこでレコーディングをしていたカクタスの2人と再開し、彼らとバンドを組む話が再燃します。その後、8月から第二期ジェフベックグループにカーマインとティムが加わり、2週間ほどツアーを行った後に3人組みになります(この2週間の間、メンバーがめまぐるしく変わりますが)。3人で秋のツアーを行いますが、カーマイン曰く「この時点では、我々はジェフベックグループのサポート」だったそうです。12月から3人でんヒューアルバムをレコーディングし、ここで正式にトリオのバンドになります。

このように、一時はかなわなかったグループが3年越しでやっとかなったのがBBAということです。しかし、時間の進行はもう当時のBBAという構想自体を過去のものにしていたような感じです。憧れていた女の子となかなかつき合えず、やっとつき合えた頃には、自分の女性観自体が変化していた、そんなやりようのない憤りを秘めながらも3人のパワーでの可能性を追求したバンド、そんな感じでしょうか。結構複雑なしがらみと状況で生まれた(というか成りゆきで成った)バンドだと思います。ベック自身、ちょと複雑な心境だったのではないでしょうか。それに結果的には3人になりましたが、本当は、ボーカルとキーボードを加えて、第二期をさらに押し進めた音楽をやりかったのではないかなと思います。

※このあたりの詳しい経緯はこちらもご参考に。

BBAの本質。

そんなこととは別にBBAはロックバンドとしても最高ランクのバンドじゃないでしょうか。まあこの3人の実力といったら、とんでもない技術の持ち主ばっかりです。来日コンサートへ行った人の話によると「何をどうやっているのか判らない」くらいすごかったらしいです。当時の日本のプロも見に行って何をやっているのか判らなかったという話らしいですが・・・。

このスタジオ録音を聴くともう完全にロックバンドですが、ライブインジャパンを聴いたときにアレッと思った人は私だけではないでしょう。スタジオ版では、ドライブ感を重視した音で「黒猫の叫び」や「迷信」などもヘヴィーなサウンドにしてありますが、ライブではもっとファンキーです。ライブインジャパンは特にドラムの音がカスカスなのですが、リズムの取り方自体が違うように感じて成りません。やはり、ライブでは第二期の延長線上の黒っぽいグルービーなサウンドが見えかくれします。ヘビーなファンクロック、そんなのがBBAの魅力だという気がします。やっぱりライブがいいのかも。しかし、このBBAアルバムは音もクリアだし、ノリのいい曲がたくさんあるし、ある意味でPOPな感じです。でも実際に演奏しようとすると恐ろしく難しいものが多いですけどね。昔、BBAをちゃんとやれていたバンドは少なかったような気がします。

ライナーノーツには、イギリスの新聞で「クリーム以来のスーパートリオ誕生」とか報道されたことが書いてあります。実力的にはクリームに勝るとも劣らないものだと思いますが、クリームがある程度明確な実験目的を持っていただろうことに対し、BBAは成りゆきバンドという状況からも「とにかくやってみるべさ」的なアメリカ的なおおらかさによってサウンドの可能性が試されていたのではないかと思います。その結果どんどんサウンドが拡散していき(幻の2ndアルバム等)収集つかなくなって行き詰まったのではないか。あるいは「もういいか」って感じになったのではないかと思います(想像ですが)。始めに書いたとおりベックとしては、BAの強力なリズム隊にVoやkbも入れて、ソウルロックみたいなのや、kbによる繊細なハーモニーを加えてBlow By Blowにつながるようなインストものなどをやりたかったのではないかと思いますが。
そんな複雑なバンドであり、世間的にも失敗バンドといったとらえられ方の多いBBAですが、私の中ではランキング高いです。

*追記:後のインタビューでベックは、BBAは契約上仕方なくやった的なことを話していましたが、結成当時は結構はりきっていたはずです。

このアルバム、サウンドの方は、バスドラやハイハットがきれいに左右に分かれていたりしてドラムが良く聴こえます(これは好きじゃないという人もいますが)ライブインジャパンがこのくらいの音だったらと思うと悔しくてなりませんね(現代のデジタル技術でなんとかならないものでしょうか)。

 ベックのギターは、相変わらず左右のスピーカーからいっぱい聴こえてきます。ひとつひとつ良く聴いているといくつも発見があります。大体ひとつの曲に3~4回くらい重ねているようです。普通こういう場合には、よくアンサンブルく計算して緻密にハモッたりするもんですが、ベックの場合はほとんど行き当たりばったりです。しかし、その自由奔放なオーバーダブ同士が絶妙なサウンドを作っているんですね。
ギターも全編レスポールだと思いますが、非常にクリアで張りのあるトーン。このアルバムのトーンは、どのアルバムにもない独特のテイストです。
BBAの初期のライブでは、第二期の延長でストラトですが、後半はレスポールばっかり。日本に来たときもそうだったようです。やっぱり、3人だと太い音の方がいいのかも。この時期にトーキングモジュレーターを使い始めているのですが、アルバムに入っていないのは残念ですね。
*追記:この時期に有名になった黒い(実はオックスブラッド)レスポールは、Jeff’s Book等複数の資料から推測するとBBAになった頃の1972年11月にメンフィスで手に入れたようです。その12月にはアルバムのレコーディングに入っているので、アルバムで使っているレスポールはそれだと思われます(Beck Bookによると塗装を剥がしたナチュラルのレスポールも持っていた)。

各曲紹介

Black cat moan
ドンニックスのナンバーパート1です。原曲はもっとカントリーでアーシーな感じです。ジョンメイオールもやっています。このギターソロはすごいですね。スライドなのに、なんか歌っているみたいで。メチャ、コントロールされた感覚プレイ。この曲のベックのボーカルは、それなりに雰囲気あります。この曲は、ジョンメイオールほか、数人の人もカバーしています。

Lady
 BBAの代表曲、かな。ドラムがかっこいいです。ギターは、何個も入っていて勝手に弾いてますが、左右のスピーカーを注意してひとつひとつ聴いていくと発見があります。

Oh to love you
 この曲は、ほとんどこのアルバムでしか聴けない。ブートレグにもないと思います。どうしてライブではやらなかったんでしょう。いい曲なのに。私は好きです。

Superstition
 スティービーワンダーとのセッション(「Talking Book」の中のLooki’n for another pure love)が縁で、スティービーがジェフベックにプレゼントしたにも関わらず、レコード会社の事情で、スティービーも録音してベックより早く発売し、ベックが怒ったという、いわくつきの曲です。スティービーバージョンのブラスのフレーズをギターとベースのユニゾンでリフとして弾いているのがかっちょいいです。ライブとは違って、とてもヘビーなサウンドがいいです。ライブだとなんか軽くなってしまってます。この曲は、とにかくドラムのパターンがかっこいい。ギターは、イントロのリフは最高ですね。しかし、ギターソロはパワフルだけど何だかようわからん。ちゃんと性根入れて弾いてないじゃないでしょうか(笑)

*追記:Jeff’s Bookによると、この曲は1972年の5月(第二期後期)に第二期のメンバーでレコーディングされています。その後、7月に入ってなぜかドラムがカーマインアピスに差し替えられ、7月の終わりには第二期のメンバーで最後のライブになり、8月からは、ボーカルがキムミルフォード、リズム隊がボガート、アピスになった、新しいメンバーでツアーされています。なお、キムミルフォードは1週間でクビになり、ボブテンチが呼び戻されています。第二期メンバーでレコーディングされたSuperstitionはお蔵入りになったようで、どこにも発表されていません。第二期後期では、スティービーに近いアレンジで演奏されています。

Sweet sweet surrender
 これもドンニックスのナンバー。アコースティックギターも入って、原曲に近いアレンジです。短いリピートエコーがいい雰囲気。

Why should I care
 BBA初期のライブを聴くと、普通のロックンロールのリフでやっていたりします。これもドラムが変なタイミングでたたいています。いちいち凝ってます。珍しくギターソロがハモっていたりして、ヤードバーズの「ストロールオン」を思い出したりします。

Lose myself with you
 未だにこの曲の拍子の取り方が良く分かりません。こんなロックンロールみたいな曲で変拍子するか~(いや実は、タイミングの取り方が難しいだけ?)。機関銃のようなダブルバスやたたみかけるようなベース、微妙なコントロールのワウワウなどかっこいいプレイが目白押し。ライブなどではこれを歌いながらやってますからすごい。大昔、初来日の時、見に行った人が何をやっているのか分からなかったのはこの曲ではないだろうかなんて想像します。

Livi’n alone
 このイントロは、すでに第一期時代のライブでYou shook meのイントロとして登場しています。これから考えても、BBAの構想は第一期の頃のものなんですね。ライブごとに様々にアレンジして演奏されていますが、中間のギターソロにはいるところは、このベンチャーズみたいなのが一番かっこいい。ソロもメロディーなのか擬音なのか分からないところがベックらしい。

I’m so proud
 この曲の聴きどころはやっぱりギターソロでしょう。こんなにメローでエモーショナルで美しいソロはちょっと弾けません。また、タイムの長いリピートエコーが抜群の効果です。このあたり、使い方うまいです。全編いいですが、特に後半の歌につながるまでのところが何とも言えないひずみ具合とフレーズですわ。


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