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1978年 With Stanley Clarck

別にアルバムを発表したわけでもないのに突如来日。メンバーは、スタンリークラーク、サイモンフィリップス、トニーハイマス。言ってみれば一時のセッションバンドなのですが、このツアーは内容が盛りだくさんで、なかなか重要なツアーでした。
まず、やはり、スタンリークラークですね。あの機関銃のようなベース早弾きは、驚愕に値します。アレンビックのベースの音も独特ですし、あれでジャカジャカコード弾きするのが超カッコよかったです。そして、ベックのバッキングサポートとしても非常に達者でした。出るところは出て、引っ込むところは引っ込む。あれだけのベーシストならもっとガンガン主張しそうなところですが、バッキングの時はほんとにしっかり、ベックを引き立てていました。で、出るときはもうガンガン、これでもかというくらいで、その切り替えが見事。サイモンフィリップスとも息もぴったりで、ブレイクなどの曲のアクセントもばっちりでした。
このツアーが縁だと思いますが、翌年のLive Under The Skyでは、スタンリークラークバンドとしてサイモンフィリップスが来ていました。この時の模様は、FMで放送されましたが、もう素晴らしいのひとこと。ユニークなドラムソロも放送されていました。ギターは、ハワイ出身の凄腕ギター、カルロス・イカルス・ジョンソン。その後かにRocks Pebles And Sandのアルバムもサイモン入りで録音されています。かなり気にいったようですね。

そのサイモンフィリップスですが、その昔、イーノなども参加した801バンドでデビューだと思いますが、当時から凄腕でした。このツアーでもあの独特のタムの音と独特の間とゴムのような弾力性のあるノリは発揮されていましたが、本格的に凄かったのは、次のThere And Back Tourです。

もうひとり、トニーハイマスもこの時に来ていました。当初は、スタンリークラークバンドのマイクガースンというキーボーダーが来る予定だったみたいですが、急遽、トニーになったようです。サイモンフィリップスが連れてきたそうです。この時の演奏は、きっと時間がなかったんだと思いますが、今のトニーハイマス色(特にハーモニーや音色等)は、ほとんど感じられませんでした。これが縁でベックとのつきあいが始まったんでしょうね。

さて、ジェフベック。このツアーの話題は、まずギターシンセを弾いたことです。ローランドの805かなんかのギターですが、できたばっかで、後にベックは、「光があたると音程がくるってしまって使えない」といってました。コレで弾いたのはオープニングのDARKNESS~STAR CYCLEなんですが、特にDARKNESSが良かったです、ヘビーな音で。

また、当時でたばっかりのポールピースが太いシェクターのピックアップをマウントし、トグルスイッチを3つつけた、ベックにしては複雑な回路のオリジナルのストラトを使っていました。スイッチの切り替えでいろんな音がでるようになっていたようで、こちょこちょ切り替えていました。後にすぐ使わなくなったので、もう一つだったんでしょうね。このギターのコピーがグレコかどこかからジェフベックモデルとして出ていたんですが、それを野口五郎がTVで使っていました。野口五郎もギターフリークのひとりです。何を隠そう私もマネして自分のストラトにシェクターつけましたが、結構音が太いんですわこれが。それに使っているうちにポールピースの間から汗が入ってさびて壊れてしまうのです。ミーハーですね(笑)

*このツアーでは、珍しい曲が演奏されました。新曲、スタンリークラークの曲など、このツアーでしか演奏されなかった貴重なものもあります。

まず、STAR CYCLEが初めて演奏されました。初めて聴いたとき、とてもジェフベックな曲だなあと思いました。今でもそう思います。現在よりもっと速いスピードで演奏され、リフもトニーハイマスが手で弾いていましたから、ときどき間違ったりしていました。

そして、Hot Rock とCat Moves。この2曲は貴重です。おそらく世界的に見てこのツアー(しかもHot Rock は、倉敷、大阪だけ、Cat Movesは名古屋、大阪追加、東京だけ)でしか演奏されていません。両方ともカッコイイ曲なんです。特にCat Movesは良かったですね。ちょっとYou Never Know的な感じもします。どうしてその後のツアーで一度も演奏されないのでしょう?このツアーの後に発売された、今は亡きコージーパウエルの「TILT」に収録されています。ここでのジェフベックの演奏も最高です。

さらに、Jurny To Love、School Days、Lopsy Lu、Rock’n Roll Jellyなどスタンリークラークの曲。タイプが似ているからか、ベックがやっても全く違和感がありません。ワールドロックの時にも別の曲をやってますしね。
東京公演だけアンコールで迷信が演奏され、1975年の時と同じようにトーキングモジュレーターでメロディを歌っていました。他の公演でもやって欲しかったですね。

余談ですが、倉敷公演の会場であった倉敷市民会館の中の食事処でカツ丼を注文したら、出てきたのは、ごはんの上にカツを乗せてとんかつソースがかかっているだけのもの。え、何コレ、何かの間違いかと思いましたよ。あっけにとられてしばらく茫然としていました。気を取り直して「おばちゃん、これカツドン?」って聞いたら「そうよ」とあっさり。関西でカツ丼といえば、ちゃんとだしがかかって、卵でとじてあるんですが・・・。倉敷のカツ丼というのは、みんなああいうスタイルなんでしょうか???

話がそれましたが、このツアーではやはりまず、ベックとスタンリーのバトルが見所だったと思います。しかし、技という面ではジャズ屋さんであるスタンリーの方が圧倒していました。ベックは、感覚で応戦という感じ。それより、スタンリークラークとサイモンフリップスという組合せのバッキングでジェフベックのギターが鳴るということに非常に意義があったと思います。

スタンリーもサイモン君もとてもダイナミックな演奏をするので、1曲のなかで繰り広げられる起伏がすごいのです。ある時は、ベックのメロディーをしっかりサポートし、ある時はベックを焚付けるほどパワー全開で圧倒し、またある時は、聴こえないくらいに小さく、しかし確かなリズムできざみながら、ベックの微妙なニュアンスを引き立てている。このおふたり、さすが達人28号です。

だから、ベックのギターがここぞという時にバーンと飛び出してくる。それがもう鳥肌がたつくらいすごいです。ベックのギターというものをよく知っている大人のバッキングです。

そうですね、例えば大阪公演のブートレグがでていると思いますので、そのFreeway Jamを聴いてみてください。ソロパートに行くところ。サビ?で全開だったバックが、ウソのようにストンと落ちて、次の瞬間ベックのピーピーピーというトリッキーな音が出てきます。そのタイミングと音のダイナミズムがすごいです。カッコイイったらありませんぜ。

ツアーパンフレット
この手のパンフレットって高い割にデザインがいまいちのものが多いと思いませんか。せっかく買って保存しておいても、記録としての価値しかないっていうか・・・。