Truth

天才が集まれば最悪の人間関係からでも、最高の音楽は生まれる?

 ジェフベックとして本格的に活動し始めたアルバムで、この頃の主流であったブリティッシュブルースをベースにしたロックアルバム。アルバム名義としてはJEFF BECKのソロアルバムというスタンスらしく、すべてが第一期ジェフベックグループのメンバーによる演奏ではありません。
  しかし、ボーカルのロッド・スチュアートは、このアルバムで世にでました。現ストーンズのロン・ウッドもベースを弾いてたんですね。雑誌によく書いてあったのは、この頃ベックの性格は最悪で、ギャラを独り占めし、気まぐれでわがまま・・・だったらしいです。それでメンバーは嫌気がさして最後の方は険悪なムードだったそうです。
  解散後、ロッド・スチュアートとロン・ウッドは、フェイセズを結成しています。フェイセズは、ベース奏者が山内テツだったりして(当時、ロックの世界で日本人が海外に出ていくのは大変なことで、ましてや世界的なバンドに加入するなど信じられないことだった)日本人には嬉しいバンドでした。山内テツ氏が、フェイセズ解散後しばらくして帰国し、活動していたグッドタイムスロールバンドは、ボーカルがロッドスチュアート風でノリのいいロックンロールバンドでした。

 話がそれましたが、第一期JBGは、人間関係としては最悪のバンドだったようです。そうそうドラマーもころころ変わったのですが、このアルバムではミックウォーラーが叩いているようです。

ジェフベックにしては、なぜかあまりとんがっていないギター。
 サウンド的には、当時のベックグループのウリ(レッドツェッペリンがまねたと言われている)であったボーカルとギターのかけあいの典型が聴けるという面で、Let me love youやRock My Prim soulが一応目玉の曲だと思いますが、先のジェフベックの個人名義だと言うこともあり、結構いろんなタイプの曲が入っていて、そういう意味では濃い内容になっています。
 ギターは、全編レスポール。この頃は、まだストラトは使っていないです(この後にジミヘンを見てストラトを使い始めたと言っていました)。
  アンプの歪みなのか歪み系エフェクターなのか(雑誌にはよくトーンベンダーを使っていると書いてある)、重量感のある独特のディストーションサウンドで、Beck Ola以降とは違った感じです。BBAアルバムでもレスポールを使っていますが、もっとクリアなトーンです。まあ、音の録りかた自体が違いますが。

 ベックというと一般的にはレスポールのイメージも強いようですが、レスポールをメイン使っていた時期というのはこの頃とBBA後期くらいで後は全部ストラトです。私は、ベックにはストラトが合っていると思います。
  ベック自身は「クラプトンがレスポールでヘビーな音を出しているのを見て使おうと思った。ストラトはがっちり握ってひかなければいけないが、レスポールは力を入れなくても何でもできるような気がする」というようなことも語っていましたが、気まぐれでしょうか。
  ストラトに傾倒しているのは、そのトーンとともにトレモロアームも大きな理由なのではないでしょうか。でも1975年ワールドロックフェスティバルに来日したとき、ストラトと共に黒いレスポール(レスポール初期のゴールドトップのブリッジを交換して黒く塗ったらしい。Blow By Blowの裏ジャケットの写真)を使っていましたが、ホントにいい音だし(ブートレグでしか聴いていませんが)持っている姿もかっこいいです。

 てなわけで、Truthは数少ないレスポールメインの時期なのです。

 ただこの頃は、まだフレーズのスタイルが確立していないようで、何かもたもたしているようなところがあったり、表情の起伏がそれほど激しくありません。次のBeck Olaくらいからだんだんとんがって行くんですけどね。

 また、これはベックのアルバムに共通して言えることですが、ライブでのベック独特の革新的な演奏が、スタジオ録音ではいまひとつ感じられないのです。というより、ライブではもっと革新的といった方が良いのかも知れませんが、このアルバムも、当時のブートレグで聴かれる壮絶なフレーズの嵐と比較すると、おとなしい感じです。
 ただ、革新的な演奏は、どうしてもミストーンや不安定性と背中合わせで、平均点を高くとらなければならないスタジオ録音では難しいのでしょうね。だから、私はオフィシャルアルバムで表現されているのは、ジェフベックの魅力の半分にも満たないと思います。ライナーノーツなどには、意表をつくフレーズ、大胆なフレージング、あふれる緊張感などとよく書いてありますが、私に言わせれば(偉そうですみません)まだまだ序の口です。
  ま、昔は当時のベックバンドのライブを聴けるチャンスなどほとんどなかったでしょうから、ムリもないですね。その意味で、この時期のベックの魅力を最も感じられるのは、BBC録音の速いバージョンのRock my prim soul(Becologyに収録)だと思っています(本当はブートレグで聴けるこれの別テイクの方が革新的)。とんがったベックらしい演奏は、この後のBeck Olaで存分に味わえます。

Shapes Of Things
 ヤードバーズでもやっていた曲ですが、趣は別の曲と言ってもいいほど違います。本当なら、ゲイリームーアがやっているようにブァーッと豪快にやる方がかっこいい曲ですが、当時のスタイルや録音技術などでこんななんか八畳の和室でやっている感じになったのかなと思います。ドラムなんかも時代を感じさせます。いや、でもベックのスライドはかっこいいし、ロッドスチュアートも当時としてはインパクトあったのではないでしょうか。ギターソロの時に左側でスライドで幽霊みたいな変な(横山ホットブラザーズの”おまえはアホか”みたいな)音、出しています。

Let Me Love You
 
初めて聴くとイントロから期待させてくれる曲です。この録音もなんか左右が分かれてしまって左の方はなんか窮屈そうですよね。右は、コピーするにはとても便利ですが。この曲は、なんだかベックは椅子に座って弾いているような気がしてなりません。そんなことはないと思いますけどね。でも、ちょっとリズムがもたっているし、妙にピッキングがせこい感じがするのは私だけなんでしょうか。それに、ロッドとギターもあまり熱くかみ合っている気もしませんねぇ。だから、私はこの演奏、そんなに好きではありません。
 掲示板で投稿されて気がついたのですが、2コーラス目の歌はロッドじゃないんですね。ロッドは合いの手に回っています。じゃ誰だというと、おそらくベック自身だという感じです。ベックの割には音程がいいじゃないかと思いますが、後半の裏声っぽいところなどの節回しが、ヤードバーズ時代のナッズアーブルーなどに共通するし、ギターのフレーズとユニゾンで歌うというのが当時のギタリストの常套手段としてあったと思います。

Morning Dew
 
第二期やBBAで聴かれるのとは、随分雰囲気の違う演奏です。これはこれで好きですけどね。この曲は、結構ボーカルとギターがいい具合に絡み合って盛り上がっていきます。何気なく聴いていると聞き流してしまいますが、よく聴くとワウワウで結構いろんな音を出しています。

You Shook Me
 
この曲もいきなりワウワウを途中で止めたままの独特の音で始まります。この時期、ワウワウに凝っていますね。ロッドも歌っていて、うるさいと思っていたんじゃないですか。オルガンが時代を感じさせる音で、今、かえって格好良かったりします。で最後もワウワウの音でエンディング。

Ol'man River
 
私はこの演奏結構好きです。曲もいいんですが、右の方でキャッ、キャッと刻んでいるベックのバッキングや、サビが終わって静かになって、ボーカルが歌いだしたときに突然ギャーと入るスライドの音。この一発だけでこの曲はイケてる、そう思います。その後エンディングにかけてベックらしいフレージングで楽しませてくれます。ベックがよく使うスライドのフレーズが出てきます。でもこのオブリガード、ボーカルにとってはうるさいかも知れませんが。

Greensleaves
 
どうしたんでしょう、突然。なんか気まぐれに録音したって感じで、ベックに生ギターはなんかイメージちがうなぁと思いましたが、この演奏、意外といいんです。フラットピックとフィンガーリングで弾いていると思いますが、しっとりとしてさすがですね。Guitar Shopの次はアコースティックでアルバムをつくりたいという話があったようですが、レコード会社に却下されたそうです。

Rock My Prim soul
 ブルースのスタンダードRock Me Babyに似ていますが、このアルバムの中ではとても好きです、この曲。当時のベックグループの雰囲気が一番出ているのではないでしょうか。しかし、先にも書いたようにBBC録音のテンポの速いやつのほうが緊張感はあるんです。とはいえ、この曲は、ベースの2拍3連のフレーズが独特のノリをだしているし、ベックのソロもこの人でなければ弾けないソロです。ボーカルとの絶妙のコンビネーションや熱いギターで最後までどんどん行ってブレイク。昔よくあった終わり方です。うへぇ〜っ、ださくてカッコイーッ。

Beck's Bolero
 これも個性的な曲ですわ。基本パターンはジミーペイジがつくったそうですが、キイボードがジョンポールジョーンズだったり、ドラムがザフーの故キースムーンだったり、当時の売れっ子がワイワイ言いながら録音したんでしょうか。ここのスライドギターはベックのお得意パターンのフレーズです。途中からロックンロールになったり、変化のある演奏で結構いいですよね。

Blues Deluxe
 オーソドックスすぎるほどのスローブルース。こういう時代だったんですね。ライブ感を出すためか、観客のSEが入っており、わざとらしくロッドが笑ったりしています。この曲は、BBAの時代、ライブではギターソロでトーキングモジュレーターを使い、You Shook Meを歌って?!(口をその形にするとギターの音で歌える)いました。最近のシングルでWild Thingを同じようにギターで歌っています。ここでのベックのギターは、細かいフレーズをあれこれ弾いています。でも、これぞ!というものは聴かれませんが、最初ちょっと調子っぱずれに聞こえるんですよね。えっ、合ってんのか???というところがジェフベックなんで、これがやがて病みつきになるんです。

I Ain't Superstitious
 この曲は凄い。まず、何といってもワウワウのギターがメチャメチャかっこいいですわ。1回だけリピートエコーをかけて左右に分けてあるのもみそです。このパターンは、レッドブーツでも使っています。しかし、スライドバーとワウワウだけでこんなに多彩なフレーズを弾けるギタリストがいるでしょうか。それにこのじゃべっているようなフレージング、ちょっとひょうきんでお茶目でかわいいキャラが入っているでしょう。このテイストが、ベックの大きな魅力のひとつです。そうJeff's Boogieでじゃじゃ馬億万長者をやる、センスです。この曲、ライブではもっとお茶目なことやっており、ピックアップのところをさわって出るブーというノイズを使ってフレーズ?を弾いたりしています。この曲は、この時期の特筆すべき演奏です。


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