Rough And Ready

ブルースロックから、うって変わってファンキーになった。
黒くてロックで、メロー、こんなバンド、今だって新鮮。

 
第一期の後、ベックの交通事故が原因でBBA結成が没になり、療養生活の後、アメリカを回ったりしながら約1年間メンバー探しをして結成されたのがこの第二期JBG。
 BBA結成を断念し、このバンドを経てやっとBBA(ベックの音楽的タイミングとしては遅かったかも知れない)を結成した経緯からか、この第二期JBGは過渡期の腰掛け的に語られることが多いのですが、私はベックのキャリアの中で一番好きなバンドです。R&Bやモータウンの黒っぽさにロックスピリットが注入された感じで、非常にグルービーな(程良いスリルと程良いメロー)サウンドだと思いませんか? ただこのバンドもやはりベックのクセのあるギターがあるからこそ、成り立っているところがあります。このバンドが解散(というか消滅)した後にバックメンバーが中心となってハミングバードというバンドを結成しています。このバンドはマックスミドルトンのキーボードもあるしボブテンチのボーカルもある、後半にはなんと今をときめくバーナードパディがドラムで参加したりしており、非常にグッドなサウンドで楽曲もバラエティに富んでいるのですが、悲しいかな今一つグイグイ引っ張っていくものがないのです。それは、BBAが没になってベック以外のBとAが結成したカクタスも同じです。

 まあそんな風に私としては非常に評価の高い第二期JBGのファーストアルバム(結局2枚しか出していませんが)です。確かライナーノーツを福田一郎氏がかかれており、Rough And Readyは「粗製乱造」というような意味で、「できあいのものですみませんが・・・」といったようなメッセージだというようなことが書かれてあったと思います。これを読んで、ベックのギターはまさに「粗製乱造」の美学のようなものだ思い、結構気に入った憶えがあります。

 とにかく、ギターもベックオラから引き続いてストラトオンリーになり、ファンキー色の強いサウンド。音質も透明度が高く乾いたアメリカ的な音で前の第一期とはがらっと雰囲気の違うアルバムです (実は、第一期からリズムなどはライブではかなりファンキーでした。しかし曲調はあくまでブルースっぽいもの主体でした)。
  ベックのギタープレイも、より感覚的になり、ベックらしさが強まってきています。ローズネックの白いストラトキャスターを弾くのがメチャかっこいいダニ(トップページの写 真)。アンプは確かサンだったと思います。

 以後の音楽的な変遷を考えあわすとこの時期にいろいろなアイデアが出てきたのではないかと思います。マックスミドルトンとの出会いもベックにとっては非常に重要なことであり、ベックのギターをよりカッコ良く響かせるサウンド作りは、マックスミドルトンのキーボードなしにはできなかったと思います。このサウンド作り(コージーパウエルのツインバスドラムもあわせて)によって、ベックは自分のギターがカッコ良く響く法則のようなものを見つけたのではないでしょうか。
  このバンドのジャジーでファンキーなサウンドのアプローチは、BBAやブローバイブローにつながるものであり、ベックサウンドのベースが固まっっていった時期なのではないかと思います。ワイヤード以降は、最初にサウンドの志向があるのではなく、どちらかというと一緒にやるミュージシャンからのインスパイアによってサウンドが形成されているようなところがあり、よりセッション的だといえます。BBAにもそういった面 があるので、第二期は「ベック自身が志向するのサウンドによる一番バンドらしいバンド」といえるのかも知れません。だから、いい感じがするのかも知れませんね。
 一番バンドらしいと言えば、最後には入れ替わりが激しかったものの、ベックの中では同一メンバーで一番長く(と言っても2年弱くらい)活動したバンドではないでしょうか。

 メンバーですが、マックスミドルトンは、元はイギリスのジャズ畑のミュージシャンだということで、サウンド的にも人間関係的にもベックにとって重要な人です。ジョージマーティン(ビートルズのレコーディングプロデューサーで、Blow By Blowのプロデューサー)の本で、「マックスは、ジェフとの重要な通訳の役目を果たした」というようなことが書いてありました。
 惜しくも事故死してしまったコージーパウエルは、このバンド以後レインボーやなんかで有名になりました。しかし、それらは結構大味のドラミングなに比べこのベックグループでは、きっちりしたドラムをたたいており、パワーと緻密度合いがちょうどいい、非常にいいドラミングだと思います。私は、この頃のコージーパウエルが一番好きですね。
 
ボブテンチを第一期のロッドスチュアートと比べるのはかわいそうです。ボブにはボブの味があるし、第二期のトーンにボブの果 たした役割も大きいと思います。 私なんか、第二期のイメージの中にボブテンチのボーカルのトーンがしっかりと刻み込まれていますから、万一再結成したとしても他人だとちょっと違うと思うかも知れません。
 
クライヴチェイマン(ベース)は、ゴンザレスのメンバーの一人なのですが、ゴンザレスというバンド(というか集団)自体が分かりにくく、この人のことをよく知らないのですが、前後のロンウッド、ティムボガートに挟まれて不利な立場です。これといって特長がないと言えばないですが、ロンウッドにしたって後からフェイセズやストーンズで有名になったから有名なだけでしょう。



Got The Feeling
 いきなりダブルバスのかっこいいイントロにノックアウトされます。16分音符のダブルバスにワウワウを使ったチャカポコギターというのは、普遍的なパターンのようですが、以後こんなサウンドのバンドはないのではないでしょうか。リフも7thとルートと短3度を言ったり来たりするプリミティブなリフですが、このムダのないシンプルなサウンドがかっこよさの秘密です。
 
それにこの曲はサビにいく部分が変わっていますよね。で、サビはメジャー7を使った爽やか系の進行からちょっとメローになり転調しながら最後で雄大に広がって、またストイックなリフに戻るという実にダイナミックでドラマチックな展開です。
 
このトラックの聴き所は、まず左側(右かな)でチャカポコ鳴っているリズムギターで、ワウワウとストロークのコンビネーションが実に微妙で、ギターがしゃべっているような感じです。これだけでも価値があるのですが、2番の歌のバックで右に左に入るギターのフィルイン。そして、爽やか系のコード進行でのギターソロは、普通 ならソフトに弾いてしまいそうなところをスライドでちょっとソリッドにちょっとラギッド?に弾いているのが、私はたまらん。他のギタリストでは味わえないテイストです。
  テーマリフに戻ってからは、よりソリッドにハードにこれもベック独特のフレージングで、今のCDではカットされていますが、昔のレコードにはあと10数秒くらいアームを使ったかっこいいフレーズが入っていたんですねどね。惜しい。とにかく、天気のいい夏の日曜日の午前中のような爽やかさとエネルギーのあるこの曲は、私の中でもかなりポイントの高い曲です。
 
ブローバイブローの頃もライブではまた違った感じでやっていました。それはそれでいいですが、私は歌も入ってダブルバスのこっちの方が好きですね。

Situation
 ダウンタウンブギウギバンドの初期の「山谷ブルース」を聴いたときにはかっこいいイントロだけど歌になって急にかわるなぁと思ったのですが、後で聴いたらこの曲のイントロのパクリ?なのでした。本当に完コピに近かったのではないでしょうか、細かいところは忘れたけど。でも和田静夫さんは好きなギタリストの一人です。オーソドックスかも知れませんが味のあるギターですよね。
 
ただ、当時私はこういっったマイナー系のサウンド(他ではZEPのI've been loving youみたいな)があまり好きではなく、それほど好きにはなりませんでした。今は、割と好きですけど。特にゲイリームーアのマイナーというか「鳴き」はメチャクチャ好きなのです。「パリの散歩道」のようなね。う〜んあれによって私のマイナーアレルギーは、なくなったようにも思います。でも私の周りにはマイナーアレルギーの人、結構いますね。ブルースから入る人は、ペンタトニックやブルーノートのエキゾチックでバタ臭い響きに惚れてはいるので、ちょっと日本チックで四畳半フォーク的貧乏くささが漂うマイナー系はいやなのかもしれません。
 
話は大きくそれましたが、シチュエイションのギターの音はちょっと違う音です。これだけライン録りしたようなつぶれかたをしていますが、これはファズの音色なのでしょうか。エンディングで終わりがずれているのはご愛敬です。日本だったら、録りなおしでしょうね。

Short Business
 ギターの音は、こりゃレスリースピーカを通 した音ですね。クラプトンなども使っており、当時はやっていました。独特のざらつき感が良いです。フランジャーやフェイズシフターでは、なかなかこの音は得られません。短い曲ですが私は結構好きです。ギターソロもベック独特のフィンガーリングではじまりスライドをかっこよく使っています。このフィンガーリングは、カントリー仕込みという気がします。聞き落としがちですが、ドラムのパターン、特にバスドラもカッコイイですぜ。

Max's Tune
 マックスミドルトンの世界なのでしょうね。でももっとギターとかも入れたら良かったのに。こういった幻想的な曲(本人の趣味なのでしょうが)より、ライブでよくやっていたブギウギピアノ(ブローバイブローツアーでも聴けます)みたいなものを弾いて欲しかった。私は、この曲あまり思いが入りません。

I've Been Used
 この曲は、ギターが同じようなレスリー音をしているせいか、 Short Businessとイメージがだぶってしまいますが(私だけか)全く違う曲です。 これは確か誰かのカバーだったと思いますが、すみません忘れました。
この曲、ブートでも聞くことができず、あまり話題にもあがらない曲ですが、私は結構好きです。ドラムもかっこいいし、ギターソロもベック独特のオクターブ奏法が聴けるし、 終わり方も珍しく(^_^;)工夫してあります。 スタンダードな奏法を使っても使い方のセンスの違いなのかジェフベック独特の音になります。このあたりはさすが世界の超一流。

New Ways/Train Train
 独特のポップさのある個性的な曲です。真ん中のドラムとギターのかけあいが、ライブではハイライトになっています。これはメチャカッコイイですよ。ブートレグ「Got the feeling」などが一番良く聴けるのではないでしょうか。ベックの演奏は、一般 的にスタジオとライブではかなり違うのですが、この曲はあまり差がない方です。それでもリフがもっと強調されていたりするので、悪く言うともっとぎくしゃくした演奏です。しかし、そこに挟まってくる微妙なフィルインやオブリガードなどがスタジオ盤では味わえないものです。

Jody
 この曲は第二期の中でも好きな曲のひとつです。ちょっとへんかもしれませんが、私が一番好きなところは一番最後のキーボードソロなのです。とくに出だしは、ひととおりの演奏が終わった後の整理体操のような感じで始まるのですが、全編リラックスしていていい感じです。バックのコージーパウエルのハイハット&バスドラ、タムを回すフィルインなどどれをとっても味のある演奏です。ここんところ、スタジオ盤では聴けませんがライブでは独特のリズムギターを弾いています。
 この曲も昔の国内版LPと海外版、最近のCDではミックスがかなり違っていて、ベックのスライドギターの聞こえ方が随分ちがうものがあります。 アメリカ盤は、異常なほどリピートエコーがかかっています。
 イントロのピアノの音量はちょっと小さすぎないかなどと、細かいことを思ったりするのですが、逆にその後にジャーンと他が入ってきた時のインパクトはあります。テーマ的に演奏されるスライドギターはちょっとリピートエコーがきつすぎないかなどとも思うのですが、アバタもエクボ。全体的なバランスの悪さがまたベックっぽくて良かったりするんです、マニアには。

 この辺の音と比べるとやはりブローバイブローのあたりは、すごくバランスがいいですわ。

 

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