JEFF
1.So What
2.Plan B
3.Pork-U-Pine
4.Seasons
5.Trouble Man
6.Grease Monkey
7.Hot Rod Honeymoon
8.Line Dancing With Monkeys
9.JB's Blues
10.Pay Me No Mind (Jeff Beck Remix)
11.My Thing
12.Bulgaria
13.Why Lord Oh Why?
14.Take A Ride (On My Bottleneck Slide)
15.My Thing (David Torn Remix)

指弾きジェフベックのバリエーションが出そろった集大成的アルバムか。
 前作から3年ぶりのアルバムです。3月に出るとか5月だとかさんざんのびて8月6日にやっと発売です。ジェフベックにしては早いタイミングだとか言われていますが、ワイヤードの頃まではジェフベックだって毎年1枚はアルバムを発売していたんです。「There And Back」1980年の頃からですね、間が空きだしたのは。「Guitar Shop」の後10年というのが異常なんで、今はもうそういうことになっています。

 このアルバム発売にひっかけて8月4日現在B.B.KingとのUSツアー中です(見に行った人の話)。6月22日にアメリカのTVで放送されたB.B.Kingのショー(Request Liveかとかいう番組)にゲストで出てブルースを2曲ほど演奏していましたが、いい感じでした(私は録画したビデオを送ってもらったのですが、日本のケーブルとかで流れたのでしょうか?)。
 特にリハーサルをした感じでもなく、「Rodk me baby」とかBBが歌うバックや合間で、取って付けたようなエモーショナルなアクション(^_^;)もまじえ、相変わらずの癖のあるギターをならしていました。
 すごくリラックスした感じでしたね。個人的には、オーソドックスな曲でこそ、ジェフベックの変態的な演奏が際だって面白いと思う口なんで、こういうプレイを見るのはうれしいですね。その番組では、自分の曲は演奏しませんでしたがニューアルバム「JEFF」とB.B.KingとのUSツアーの宣伝をしていました。
 しかし、B.B.Kingのショーを普通にTVでやるなんて、(政治的なことを横に置いておけば)いいなあアメリカは。日本だと五木ひろしショーみたいな感覚かも知れません。

 アルバム自体は、前作や前々作に比べサウンドのバリエーションやギターフレーズのバリエーションも豊かで、ずっと楽しめる内容だと思います。特に私のようにテクノ路線(メンバーの問題もありましたが)に物足りなさを感じていたオールドファンにもうれしい感じのフレーズやサウンドが聴けるので、ホッとする部分もあります。
 かといって後退していると言うことではなく、さらに押し進めている結果としていろいろ混じっていると言う感じだと思います。今の路線になって、ジェフベック自身、始めは好き嫌いもあんまり明確になかったけど、もう大分はっきりしてきたから、いっちょ
整理してつくっか、てな感じでしょうか。

>>>JEFF BECK.ver2の完成型か。
 サウンドとしてはやはりWho Else!からの流れでとらえるのが良いのでしょうが、ギターだけに絞って考えると、指で弾き初めてからのジェフベックのある意味で完成に域に達してきたのではないかと思います。
ジェフベックの奏法=ギターサウンドは、「Flash」の頃に始めた指弾き以前と以後ではかなりフレーズやサウンドに差があります。例えばMAC OSの9以前とXくらい(WINDOWSでいうと98やMEとXPの違うでしょうか。winはあまりよく知らないので)違います。JEFF BECK.ver1とver2といってもいいくらいです。
これは、小手先の変化と言うことではなく、ジェフベックのギターサウンドへのアプローチ自体が変化しているという事だと思います。
 Ver.1の頃は、従来の音楽の枠組をとらえながら、意図的にギターではずしていくことで、独特の緊張感やギターの世界(サウンドもそうですが、弾き方自体)を切りひらいてきたところがありますが、それ以降は、そういうことはベースに持ちながら、もっとギターの音から発せられる感触、食べ物でよく「食感」という言葉が使われますが、そういうシズル感にも似た「弾感」(ダンカンといえばいいのだろうか?)のようなものを追求しているのではないかと思います。

>>ボーカルのように弾くために。
 ひとつには、ボーカルのように、人間の声のように表情豊かに弾けないかということがあるでしょうね。
うまい歌手は、何気ないフレーズだけでも本当に声の表情が豊かです。それは生身の肉体から、発せられるものだけに様々な精神面や健康面が声に出るでしょうし、その背景にある人生やその日の調子なども影響するでしょう。歌の味わいといのは、それらが混じり合って熟成されて発酵してでるものです。まるでバターやワインのようですが、味というものは何でもそういうものです。
 楽器、特にエレキギターの場合、様々なメカや回路を通して弾き手の気持ちが表現されますから、どうしてもその間に細かいニュアンスがなくなってしまいます。それを克服するためには間に入っているものを取り除くということがひとつあるわけで、それがピックの放棄でもあるはずです。
 そして、トレモロアームを多用し始めたり、ブリッジのあたりをたたいて震えたような微妙なビブラートをかけたり、ハーモニクスの使い方も普通では考えられないようなところで行ったり、それにさらにエフェクトを加えて表情をつけたり。つまり、ピックを放棄するメリットは、弦と密接になるという以外に、右手を解放するということもあります。
 自由になった右手でありとあらゆる方法で弦の響きに表情をつける。弦との関わりでも、特に親指の接し方にはかなり神経を使っていると思います。親指の腹での弦のさすり方ひとつでもかなり表情をコントロールしています(この辺が顕著なのは、ポールロジャースのアルバムで演奏するブルース)。

 さらに音質のコントロール。従来からジェフベックは、演奏中でもボリュームやトーンをしょっちゅうさわっていることで有名ですが、指で弾き始めてからますます歪みや音量のコントロールに神経を使っていると思います。ピック時代でも表情が豊かでしたが、指弾きになって、さらにもっと弦の内面というと変ですが、ギターの持つ「メカニカルな手触り感」や「弾く」ということの「人間の行為としての汗くささやある種のなまめかしさ」のようなものまで音に出してしまいたいということがあるのではないかと思います。
 機械としての楽器とそれを弾く人間の一体化というと陳腐ですが、そういった一体行動による表現行為としてのギターサウンドというものが今のジェフベックの根底にあるのではないかと思います。
 ギターとの一体化と言えば、ジミヘンですが、あのまるでギターが自分の手足のような一体感に比べると、ジェフベックのはもっとクールというか、逆に対峙しているような気さえします。「おまえとともに」という感じでしょうか。特に音の源泉である弦をなんとか言うとおりにしたいという弾き方に聞こえますね、私には。
 そのため、バックグラウンドにも従来的な人間くさいものより、よりモダンでソリッドな感じのテクノっぽいものをもってくることで、ギターで表現しようとする「人間臭い」ものを際だたせようと、ちょっとイージーな解釈かも知れませんが、そういうこともあるかも知れません。
 そのスタイルが今回のアルバムである程度ひとつの段階として完成されてきたように思います。 

 最近のセッションなどでも聴かれるジェフベックの音はどこか野獣の声のようであり、つぶやきのようであり、何かの動作音のようであったり、ますます表情が豊かになっています。そして、もうギターであることを忘れてしまうような音であったりもします。
 同時にどうやって弾いているかとか、そういうことも考えることを忘れてしまうほど、超えているところがあります。でも、時にものすごくプリミティブでかっこいいギターギターした音が出てきたりします。その辺の移り身の軽さや、多彩さも含めて、JEFF BECK.ver.2が一番バリエーション豊かに詰まっているアルバムではないかと思います。ある種の集大成的アルバム。そういう意味でも「JEFF」というタイトルがついているのかも知れません。
 しかし、「JEFF」というタイトル。。。お〜い、ちょっとこっぱずかしいぞぉ〜〜〜〜ぃ!

 テクノベースといえば前作やその前からの路線ではありますが、今回はそれをさらに進めたものに加え、逆に懐かしいプリミティブな要素をミックスした曲などもあり、奏法が完成してきた故に、ジェフベックが昔から好きなもの、例えばファンクやブルースなどもうまくミックスされて、懐かしくて新しい、そんな感じでもあります。
 また、今回新しいプロデューサーが加わっており、Who Else!の時のように、ジェフベック自身が気に入った彼らや同種の音楽のバックグラウンドを引用してきているということもあるのかも知れません。

 それにしても、エレキギターとアンプだけでこれだけの表情を出せるものかと思います。特によりピュアな音を追求しているのか、倍音(ハーモニクスで出る音)を使うのが多いです。普通5、7、12フレットくらいしか使いませんが、ジェフベックの場合、自然倍音を全部使うようなところがあります。
 出にくい倍音を強引に(ここがベックらしい)上手にだしますが、倍音は弦の響きを超越したようなピュアな音がしますから、響きも非常に強いです。また、普通に弾いても特にディストーションサウンドの場合倍音が出やすいですが、それを最近多用しているワウワウで強調する周波数をコントロールすることでさらに倍音を出やすく、特定の音が共鳴しやすくしています。ワウワウペダルをコントロールしながら、倍音を微妙に倍音の出方を変えて微妙な音にしていますね。
 ワウワウはこういう奏法のためということも大きいかも知れません。ジョンリーフッカーのトリビュート盤のセッションなどは、その最たる例かも知れません。もう微妙すぎてほとんど仙人みたいな演奏です。

 また、基本的には歪ました音なのに歪みということを忘れてしまうほどクリアでシャープなトーンです。ギターや弦の持つ生音を大事にしているところがあります。
 昔からエフェクターを結構使いますがいずれも一時的なアクセントとしてしか使いませんね。あくまでベースは、ギターとアンプの歪み。ですから、基本的にはかなり歪ましていると思います。歪みが大きいと言うことは増幅率が大きいと言うことですがら、ちょっとしたことでも拡大表現されます。その上で、ギターや指で歪みをコントロールし、指で弾くトーンをうまく増幅させて音にしている感じがします。本当に微妙な弾き方をしている、イングヴェイなどとは全く違った意味で(比べるのも変ですが)非常に高度な演奏だと思います。ですから、ライブなどでミストーンを出すとその影響も大きいです。(昔からそうですが)

>>バトルを卒業し、内なるバトルへ。
 指弾きのジェフベックになってからのもうひとつの特徴は、バトルの違いにあるんじゃないかとも思います。ワイヤードの頃に頂点を極めるジェフベックのバトル、その後もThere And Backの頃までは、まだ他の楽器とのバトルが重要な演奏形態であり、バトルによる刺激から発せられる瞬間芸こそがジェフベックというところがありましたが、Flash、Guitar Shopとそのバトル要素は少なくなっています。Who else!からは、メンバーのせいもありますが、完全に他の楽器とのバトルは見られなくなりました。バトルできるメンバーとやっていないと言うこともあるでしょうが、ジェフベック自身がそういうことに重きを置いていないということもあると思います。
 そのあたりが、ジェフベックの奏法が変化したことと密接な関係があり、私のいうところの「弾感」を追求するにしたがって、バトルの相手が他の楽器から、内なるものに変わってきたのではないでしょうか。内なるもの、それはジェフベック自身かも知れないし、ギターというもの自体かも知れません。そういう視点で見ると、Who Else!以降テクノ的なアプローチが進み、今回のアルバムで内なるものの研究発表がされているようにも思えます。


>>>ピックのおまけって???
これ初回分はサインいりピックがついているんでしょ? ピック??? あえて指弾きをするジェフベックのCDにピックとは。まさかそれが粋だと思っているんじゃぁないとは思うけど。ジェフベックに何の因みもないものがついていても、ポカーンとしちゃいますね。タダだから文句は言えないけど。これは日本だけなのか、外国でもついているのか??? どうせなら名入りのトレモロアームでもつけて欲しいところですね。トレモロアーム型携帯ストラップとか。トレモロアーム型耳かきとか。肩たたきとか。トレモロアーム型ボールペンなんてのもどうか。スプーンなんてのも、中間で曲がってていいんじゃないでしょうか。ユリゲラー作なんて入っていて。究極はトレモロアーム型トレモロアーム。。。

2003.8.4

続く


エピックおまけのピック。。。?って、ジェフベックはピック使いませんって。
←ディスクユニオンで買ったらこんなおまけが付いてきました。過去のシングル盤のジャケット写真コレクションで結構良いです。
   
ということで、続きを書いていこうと思っていたのですが、どうもあまりしっくり来なくて一生懸命聴く意欲が起こらなかったのですが、アルバム発表後のインタビューで「こういう録音方式(Pro Toolsなどのデジタルをい駆使した方法)は、もうこれで終わりにしたい。次回からは昔の録音方式に戻してアルバムをつくりたい」という意味のことを言っておりましたが、まあ、この言葉にこのアルバムがジェフベックにとってどういうものかということが現れているような気がします。チャーと一緒にやっているジムコープリー(元UPPで、ジェフベックと親しい)の話では、「もう演りたくない」と言っているそうですから、常に前進はしていたいけど、これといってやりたいことはないと言う中で、最新のフォーマットとしてこのような音楽スタイルを使ってみたということではないでしょうか。
私的には、ジェフベックのギターの真髄は発揮できていないと思います。新しい個性をプラスしたと言うことはあるかも知れませんが。そのアルバム後には、トニーハイマス、テリーボジオというメンバーとB.B.Kingとともに全米ツアーを行っていますが、そのセットリストを見てもこのアルバムの曲に対する意欲のなさが伺えますね。おおかた昔の曲で、お愛想程度にJEFFからの曲が組み込まれ、しかも演奏は昔の曲の方がずっと白熱しています。
Live at BB King Blues Club

といって、JEFFがくだらないアルバムかというとそんなことはない。音の内容は結構濃いです。でも、これがジェフベックでないとできないかというとそんなことはないと思います。こういうのうまいイマドキのギタリストはいっぱいいると思います。私としては、やっぱりジェフベックでないとできないアルバムや演奏をして欲しいな〜〜という思いです。そういう点からも
Live at BB King Blues Clubは、ジェフベックにしかできない演奏でありオフィシャルブートという、よう分からんアルバムですが、JEFFよりテンションが高く、よりジェフベックらしいアルバムだと言えるのではないでしょうか。

2004.5.2

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