Jeff Beck With

Jan Hammer Group Live

初めての公式なライブ。どちらかといえば、ゲストで入っている状態にもかかわらず、非常にエモーショナルで、スリリングなギタープレイ満載で、
聴きごたえは充分。しかし、食い足りない面も。
 ブローバイブローからワイヤードへとベックにしては珍しく連続技でアルバムづくりとツアーを行いました。ワイアード発売後は、ワイヤードで初共演したヤンハマーのグループをバックバンドに従えて全米ツアー。これがかなり好評だったらしく、ツアーを延長しています。で、そのメンバーで日本にもやってくるという話だったんですが、ヤンハマーがメンバーの彼女に手を出した(メンバー間の雰囲気が悪くなった/出される方も出される方だと思うが)というしょうもない理由で没ってしまいました。本当に残念でした。
 このアルバムはその好評だった全米ツアーからのセレクトです。しかし、確かすべてを録ったのではなく、録音したのは何日間かだけで、この頃のブートの中にはこのアルバム以上に素晴らしいパフォーマンスだと言われているものもあります。
 このツアーの演奏形態は、始めはヤンハマーグループが演奏し、途中からジェフベックが入って後半はベックの曲を中心にやるといった感じで行われたようです。ここには入っていませんが、ブートなんかで聴けるヤンハマーグループの演奏もカッコイイです。
 ここではもちろんジェフベックが加わった後半の中のもので、タイトルもJEFF BECK WITH〜になっていますが、どちらかと言えばやっぱりヤンハマーグループにベックがゲストで入ったと言う感じです。しかし、ベックのギターは全く遠慮のかけらも見られない素晴らしい演奏です。だいたいジェフベックという人は、セッションで人のアルバムでゲスト演奏しても遠慮のない人です。完全に自分のペースで弾いてしまいます。そこがいいんですが。

 ここでの演奏は、スタジオではなかなか聴けなかったライブ独特の感覚的な演奏がいい音で聴ける貴重なものです。ベックの演奏の醍醐味は、「間」なんですが、このライブはまさにこの「間」がよく分かります。フレーズの「間」ももちろんですが、ギターが鳴っていないときも次に何が起こるのかという期待感がゾクゾクするくらいあるんですね。何が起こるかは何度も聴けば分かるんですが、毎回同じ緊張感を味わえる。ある意味で昔ながらの吉本新喜劇(注:関西で昔からやっている吉本新喜劇は、関東で以前やっていた吉本劇場とは似て非なるものです)と通じるものがあります。
 聴いた当時はこのライブでやっていることがすごく新しいことをやっているように聴こえたのですが、ブートレグを聴いていくうちにそれが昔からやっていることを知りさらに驚愕と感動を覚えたものでした。ずっと同じ事をやっているともいえますが・・・。
 ギターはもちろん全部ストラトキャスター。ただね、先に書いたとおりやっぱりゲストという感じは免れないんです。で、何がそう思わせるかというとリズムセクションなんですね。ヤンハマーグループのドラムはもうひとつ粒のはっきりしないドラムで、ある意味でやっぱりジャズ的なんですね。スイング的に流れていってしまう。ロックしていていない。ベックにはやっぱりロックドラマーが似合います。というわけで、ギターの演奏はかっこいいんですが、ベックの公式ライブという意味ではちょっとひっかるところもある、ベックのキャリアとしては中途半端な位置づけになってしまうアルバムです。

<SIDE A>
Freeway Jam
 のっけから車のクラクションをギターとシンセでやるってのは、ちょっとクサイ気もしますが、なんかカッコよく聴こえてしまうのはあばたもえくぼでしょうか。しかし、本編に入るとギターはもう炸裂しそうなエネルギーをある時はぶちまけて、ある時はおさえながら豪快に弾きまくります。ちょっとロングノートを弾くと、すぐにフィーッドバックしそうになるところなんかしびれますね。

 ソロの頭でピコピコ変な音をだしているのは、スライド用のスティールバーをピックのようにしてメロディを弾いているんですね。これ当時は新しい技だと思ったのですが、ブートレグを聴くと第一期ジェフベックグループ時代からやってるんですね。まいりました。フレーズの「間」にリピートエコーが、かっこよくはまっています。
 で、ヤンハマーのソロになった時の後半がちょっとマニアックな聴きどころです。バッキングと言うにはあまりにうるさいギターがギャーギャー鳴り、あげくのはてにはピックでギューン、ギュ、ギュ、ギュ、・・・うるさいったらありゃしない。もうバッキングに回っているのか勝手に弾いているのか分からない状態です。こういうところが、もうホントに好きですね。
 この曲は、ベック魅力がよくでていると思います。こんなに緊張感のあるギターを弾く人はほかにいません。
 ただ個人的には、この曲はもっとドライブしてほしい。ドラムがなんか2拍3連を強調したリズムで、まっすぐ跳ねておらず、今ひとつ乗り切れないところがあります。この曲は、やっぱりサイモンフィリップスのドラムが最高です。

Earth(Still Our Only Home)
 この曲は、私の中ではこのアルバムの中で上位ランクです。トーンを絞ってちょっとつまったような音のイントロ(オクターバーがちょっとかかってるかも)からソロ、バッキングにいたるまでファンキーファンキージェフベックです。こういうリズムでは本当にノリのいい、「間」のあるギターを弾きます。
 最初にヤンハマーのソロがありますが、そのバックでシャープなカッティングをしています。ソロでは後半フリケンシーモジュレーターが目茶目茶かっこいいです。絶妙のタイミングでエフェクターをオンオフします。こういうエフェクターの使い方もただいつものフレーズにかけるというのではなく、そのエフェクターの効果が冴えるフレーズや弾きかたをします。ライブ、しかもベックの場合は特に即興性が強い中で、これだけ表情のある内容の濃いソロをするギタリストを私は聴いたことがありません。

She's A Woman
 これもハイライトのひとつでしょうね。まず、アレンジがスタジオ版とあまりにも違うのでびっくりします。同じレゲェですが、もっと跳ねさせていますね。ここでのベックのギターの特色はまさに「間」です。バックのギターの刻みやドラムと効果的に絡みながら非常に感覚的に弾いていきます。 

 トーキングモジュレーターもお得意のごちゃごちゃ言う弾きかた。その後もフレーズといっていいのか分からない音が、脳髄に気持ちの良い刺激を与え続けます。このライブのギターは特に倍音がたくさん出ている感じで実に心地よい音です。

Full Moon Boogie
 次も面白いトーキングモジュレーターから入る曲。トーンをカットしたような詰まった音がコロコロした感じで独特の耳触り?があります。確か、昔、パイオニアのコンポのCMに使われたことがあります。

<SIDE B>
Darkness/Earth In Search Of A Sun
 ヤンハマー独特の音階によるかっこいい曲です。考えてみればスターサイクルはこいつを速くしたようなものです。最後のほうもベックのバッキングギターも聴きものです。

Scatterbrain
 この曲は、まさに今メンバーでやるにぴったりの曲。ほとんどマハビシュヌ状態です。相当速いテンポですが、きっちり弾いています。元来ベックはこの手の律儀な早引きが苦手であると思っていたのですが、どうしてどうして、他のライブでも相当速いテンポで弾いています。やはり基礎技術がしっかりしているんですね。
 こういったコード進行の曲の場合、ジャズの人はその場にあったスケールを使ってソロを弾くのですが、ベックの場合はコードは移動すれどすべてペンタトニックで強引に弾いてしまいます。だからちょっと取ってつけたようなフレージングになるのですが、その無骨と言うか幼稚というかそこがまたロックっぽくていいんです。これをジャズ屋さんのように流麗に弾かれるとありゃりゃその辺のギタリストってなってしまいますからね。

Blue Wind
 これアンコールなんでしょうか。ベックは本当にこの曲が好きですね。1999年現在、いまだにトリにやったりしています。ここではトレインケプトアローリンが挟まっていますが、これもよくご愛敬でやる曲です。イントロのところでちょっとだけフランジャーがかかっていますが、この当時このフランジャーが出始めで、みんな気持ちいいもんだからガンガンかけてしまう例が多かったのですが、このようにちょっと差し味的に使うのが正しいし、かっこいいんです。さすがですね。

 

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