Crazy Legs

ファンの不満を買ったフルコピーアルバム。
確かにこりゃないぜというところはありますが、その心は?

 かなりマニアックなファンであることを自認する私でさえ、内容を聴いたとき目眩(めまい)がしましたね。ジェフベックのジさえも感じられない演奏。本当に完コピー。冗談?にしてもほどがある。なぜこんなアルバムを制作したんでしょうか。

 2000年春に出た「天才ギタリストジェフベック」の本の中のインタビューで少し何となく話していますが、要はギター少年だった頃から今に至るまでのジェフベックのアイドル、クリフギャラップを敬愛してのこと。クリフギャラップを世間に再認識してもらいたいというような意向だったように思います。その背景にはどんな思いがあったのでしょうか。

 これは私の推測ですが、ひとつは自分自身のアイデンティティの確認があったように思います。このアルバムが制作されたのは、「Guitar shop」の後。この「Who else!」までに10年もかかる空白の時間は、ジェフベックにとっては、ある種の迷走時期にあると思います(それは今でもあまり変わっていないと私は思っていますが)。Wiredの時期、ヤンハマーとの交流である域まで自分のやりたかったことのひとつの頂点を極め、その集大成としてのThere and backへ。そこで一つの壁にぶちあたり、Flashなどの時期が第一次迷走期。
 その後、テリーボジオとの出会いによる刺激などからGuitar shopで持ち直しましたが、その後、もうWiredの頃のテンションや情熱を傾けられる方向がみつからないままセッション活動などしかしなくなりました。その時期のCrazy legs。ひとつには、自分がギターを始めた頃にアイドルとしていた人の完コピーをすることで、当時のワクワクする感動を取り戻そうと試みたのではなかったと言うことです。初心にもどって考えてみよう。そんな気持ちがあったのではないでしょうか。だから、自分流ではなく、あえて完コピー。

 もう一つには、スーパーテクニックを誇る新世代ギタリストに熱狂するギターキッズへの警告。「テクニックだけがギターじゃないぜ。こいつを聴け!ハートだよハート!」と言いたかったんじゃないでしょうか。

 内容は、本当にクリフギャラップの完全コピーらしく(細かく聴き比べたことがないのですみません)、ジェフベックを感じるところはほとんどありません。律儀なまでにコピーへのこだわりが感じられます。ジェフベックを初めて聴いてみようとする方は、間違っても買わないように。ところどころジェフベックがBBAの頃までよく使っていた小技の源泉が聞けますが、同じ完コピーするなら、レスポールでやればもっと随所にジェフベックのルーツが聴けるような気がしますけどね。
 しかし、ヤードバーズと聴き比べると面白いことが分かります。演奏のアレンジに似たようなところがいっぱいあります。イントロや、エンディング、ソロの始まりかたなど、ヤードバーズのロカビリーチックなところは、このあたりから来ているのだなという感じです。セミプロバンドから初めてのプロバンドへの参加ではりきっていたジェフベックは、自分の好きなパターンをヤードバーズに取り入れていたのだと思います。そう聴いてみると、最初に襲われた目眩から、いくらか立ち直ることが出来ます。

2000.9.3

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